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人類学的地域/6.アメリカ⭐️人類学・言語学では、アメリンディアン人種(アメリンド人種)と呼ぶこともある。ただしこの語は厳密には、アメリカ先住民のうち、起源が異なるという説がある。ナ・デネ語族やエスキモー人種(イヌイット)を除いたグループに対する呼称であり、北太平洋インディアン人はその内の一部ナ・デネ語族が該当する。


 ⚪︎エスキモー人種(グリーンランド・アラスカを主な居住地とし少数がアジアの東北隅に住んでいる黄色人種との類似性から赤色人種ではなく黄色人種(北蒙古人種)として扱われた。エスキモー(彼らは〔人間の意〕と自称する)は、アジア北東部からグリーンランドにかけての北極海岸に棲息し、彼らをとりまく人々ときわめて相異なった集団を作って、その身性の型も、極地の生活に適応した文化も、等しく特徴的である。ここでは、人種と民族が厳密に一致している。エスキモーの身長は東から西へと増大する。1.57m〜1.65mにわたって変動するから、人類平均よりも小さいわけであるが、ピグミーということはできないし、昔の著述家たちの記したような一寸法師というのはさらに理由のないことである。身体はずんぐりして、しっかりした作り、腕と脚は比較的短く、手と足は小さい。皮膚は黄色っぽい褐色で、蒙古斑は小児でほとんど常に存在する。頭の形は特徴がある。長くて非常に高く、頭蓋は正中面に沿って、竜骨のような高まりがある。頭示数は、長頭を基本とするが(75〜76)、東から西へと値が高くなり、アラスカのエスキモーは中頭であり、短頭のことすらある。顔は大きく、前からみると、顎が非常に張っているのと、頬骨が発達しているために、五角形をしている。頬骨は蒙古人種と同じように前に飛びだしているのである。鼻は幅広で、どちらかといえば突出しているほうである。蒙古皺襞は頻度が高い。毛髪は黒色でこわく、眼は褐色である。エスキモーの現在の棲息地はきわめて広い。北アメリカの北岸、北極海の島々や、グリーンランドの他、西はシベリアの先端まで行っている。)

極地エスキモー
グリーンランド北部

 ⚪︎古シベリア人種/ケット族(シベリア)
  ⚪︎変種ナ・デネ(古シベリア人種に属するケット族と近縁にて新しいカテゴリーとして追加した)

インディアンの悲惨な現状 ナバホ族

『⚪︎アメリンディアン人種(アメリカ大陸の原住民でエスキモー人種以外を呼ぶ典型的な赤色人種である。共通した特徴は身長は、ごく低いことはめったにないが変異に、富む。しかし身体は常にずんぐり、がっしりしている。頸が頑丈で、胸が厚い。肩も腰と同様に広く、胴体はくびれず、女でも一様な太さをしている。皮膚は濃黄褐色から、ほとんど白といってよいほどのきわめて淡い黄色まで変化する。前に述べたが、赤いということはけっしてない。新生児では、蒙古斑がきわめて頻繁に見られる。黄色諸人種のように、毛髪は黒く濃くて、断面が丸い。ひげがうすく、頬ひげはほとんどない。体毛も少ない。頭形は頭蓋変形の習慣が非常に普及しているので。正確に評価することがしばしば困難であるが、いずれにしても、真の長頭はまれである。顔は幅が広く、表情に乏しい。頬骨は常に突出し、顎は四角で頑丈である。鼻はよく、発達していて、真の蒙古人種のように平らではない。だがヨーロッパ人よりは肉が厚い。眼は暗色で、少しく斜である。特に子供では、軽度の蒙古皺襞を呈する。特殊な形質として、上の切歯の背面が、シャベル形に凹んでいることがあげられると思う。以下六群を亜種的に区別する事ができる)

 「⚪︎《北太平洋インディアン/短頭》[アラスカや、ロッキー山脈と太平洋の間の高原山岳地帯に住む。南はカリフォルニアあたりで止まる。非常な短頭で、身長は変動大きく(北米の太平洋岸北西部に分布するセイリッシュ語族の内陸語派に属するシュスワップ族は1.67m、示数84.9)である。]

クワキュートル族 カナダ・ブリチシュコロンビア州


  ⚪︎《北大西洋インディアン/中頭》(平原インディアン)[赤色インディアンの大部分に相当する。狩猟、漁撈に従事する好戦的な種族でロッキー山脈東方の大西洋まで広がる広大な森林草原地帯に住む。モヒカン・デラウェア・ヒューロン・イロクォイ・スー・シャイエンなどで、これらのインディアンは、すべて高身長(1.68〜1.75m)、強力な、筋肉質の体軀を持つ。皮膚はかすかに黄色を帯びた淡褐色で、毛髪は黒い直状毛である。頭は中頭で(示数78〜79)、幅は東から西へと増大し、顔は大きく、唇は薄く引き締まっている。鼻は大きく、高まって、しばしば鷲鼻である。]

スー族 合衆国・サウスダコタ州

《南太平洋インディアン/短頭》南太平洋亜人種(新アメリンディアン)[メキシコに行くと、中央アメリカおよびアンディスをよぎって、パタゴニアまで広がる新たな短頭型要素が現れる。身長が低く、華奢な体裁や、繊細な顔立、皮膚は、いっそう濃色で、褐色に傾く。短頭の度は強いが、頬骨はそれほど突出せず、唇はさらに大きく、鼻も中位の幅で鉤鼻となることはない。このインディアンの占めている地域は縦に延びている。そこに多数の民族がある。コロンブス以前のアメリカの大文明は、実に彼らの下において発達したのである。
  ⚪︎中部メキシコのアステカはきわめて完成された社会を創った。

ウイチョル族 メキシコ


  ⚪︎ユカタンのマヤ(身長1.55m、示数85)は象形文字を持っていたが、それは今日でも解読されていない。

グアテマラの神秘 マヤ系のキチェ族


ラカンドン族 メキシコ



  ⚪︎ゴルディのアイマラ(身長1.57m、示数82)やケチュアはインカ帝国の基幹であった。

アイマラ族 ペルー、ボリビア
ケチャ ペルー、ボリビア


  ⚪︎アンデス山脈南部のアラウカーノ(マプチェ族)も、この人種に属する。

  ⚪︎《南大西洋インディアン/中頭》[主としてブラジルの大森林を占めている。身長は平均以下で(1.55〜1.6m)、皮膚は濃い黄褐色あるいは肉桂色である。髪は常に直毛であるが、中に波状毛が指摘されたことがあるが、これはインディアンでは例外的な事実である。頭蓋は中頭型(示数80〜81)、顔は卵形で、鼻は真直ぐ、頬骨が突出する。目が皺襞を有することはまれである。つまり、蒙古人的様相が非常に希薄なのである。このインディアンは多数の種族を作り、大部分がヨーロッパ人の影響を完全にまぬかれてきた。とくに未開な種族の中には、今日でもほとんど知られていないものがある。最も孤立した種族の一つは、エクアドルのアマゾン斜面に住む、ヒバロという首狩族である。フランス領ギアナのガリーとルクイアンは、カリブ語群に属し、エメリヨン(テコ族)は、トゥピ・ガラニ語群に属する。これらの小種族は、白人との混血を依然まぬかれている。


ヒバロ族



  ⚪︎《パンパ・インディアン/非常に短頭》[南アメリカの南部では、短頭型が、コルディエラ山脈を囲んで、チャコ、パンパ(平原)、パタゴニアを作る大草原、ステップ地方に広がっている地域に狩猟種族がいる。強い短頭を特徴とし(示数85)、身長高く(1.68〜1.8m)、皮膚は黄褐色で、髪は長く濃い。身体は頑丈である。鼻は、幅が非常に広いが、顕著な隆起を作る。このインディアンで最も有名なのは、架空のパタゴン族とパタゴンに間違えられた実在するチョン語族に属するテウェルチェ族である。昔の航海者は、彼らに2.70〜3mという巨大な身長を与えたが、この伝説を訂正するには、200年以上を要した

  ⚪︎《古層インディアン/古アメリンディアン 中頭さらには長頭》ラゴア・サンタ人種[非常に原始的なタイプで、長頭への傾向によって、区別される。その最も純粋な代表者は、ティエラ・デル・フエゴ(フエゴ諸島)ならびに隣接島嶼に住む小集団である。すなわち、孤立した言語のヤーガン語を話すヤーガン族と孤立した言語のアラカルフ語を話すアラカルフ族で、低身長(1.57m)、長い頭(示数76〜77)、低く後傾した額、非常に広い鼻、ある程度の突顎を示す。皮膚はブラジル森林のインディアンのように黄褐色であり、毛髪が時として波状である点も彼らと似ている。この二つの民族は、今日ではほとんど絶滅してしまい、1953年にヤーガン27名、アラカルフ61名を数えたにすぎない。多くの理由によって、古アメリンディアンは、かつてもっと広大な分布を持っていたと考えられる。多少弱められてはいるが、彼らの特徴が、中央ブラジル(ボトクド族)や、ボリヴィア(トゥピ・グアラニー語族に属するシリオノ族)の現今の諸族の中に認められる]

最後のヤーガン族 チリ、アルゼンチン

※参考文献 
人種とは何か 著者寺田和夫 岩波新書 1967年
人種 (著者アンリ=ヴィクトル・ヴァロワ 訳者寺田和夫) 白水社 1971年
モンゴロイドの道 朝日新聞社 1995年
「民族」で読み解く世界史 著者宇山卓栄 日本実業出版社 2018年
世界民族辞典 弘文堂 平成12年
世界民族言語地図 東洋書林 2000年
世界の民族全20巻 平凡社 1979年
中国少数民族辞典 東京堂出版 平成13年

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