戸定梨香さん事件、子どもたちへ悪影響を与えるのは全国フェミニスト議員連盟である件

戸定梨香さんの問題について、私国フェミニスト議員連盟の抗議は、女性差別を再生産し性暴力を誘発する危険な言説であると批判しました。

この記事は、有り難いことにたくさんの反応をいただきました。多くは私の問題提起に賛同してくださる方で、逆に反論らしい反論は現在のところほとんど存在しません。

ところで、前回の記事においては、書きたいと想いながら十分に盛り込めなかった論点があります。それは、子どもへの悪影響という問題です。

この点について、新たに議連の方から問題提起があったので、あらためて批判したいと思います。子どもの教育に悪影響を及ぼしているのは、戸定梨香さんではなく、全国フェミニスト議員連盟の方であるということを、明確に説明しておきたいのです。

記者会見については、東京新聞が記事にしていました。

増田薫・松戸市議は次のように会見で述べたそうです。

警察は性加害、虐待を取り締まっているのですから今回の動画についても慎重になって当然です。特に影響が受けやすく判断力が十分に発達しているとは言えない段階にある男の子たち、女の子たちがこの動画を見たときにどう映るかを私たち大人はもっと注意を払うべきではないでしょうか

増田氏の言い方が曖昧で意図が図りかねるところがあります。「男の子たち、女の子たち」が「この動画を見たときにどう映るか」をぜひ具体的に説明いただきたいところです。

もし子どもが見たら「胸が揺れている、いやらしい」「男の人を誘ってる」などと受け取ると、増田氏らが本気で考えているのだとしたら、相当に想像力が偏っていると思うのです。

大人でさえ、動画を見て性的であると認知するのはごく一部です。性的な文脈がわからない子どもなら、なおさらでしょう。ごく普通に戸定梨香さんを見て「かわいい」と思う子が多いでしょう。場合によっては、憧れる子どももいるかもしれません。

もしかすると逆に、増田氏は、戸定梨香さんに憧れて、同じような格好をする子が増えると困るということが言いたいのでしょうか。

全国フェミニスト議員連盟の共同代表である、せの喜代さんがブログで書いていることを見ると、どうもそちらが本音ではないかとも読めます。

日本は、女の子は小さい時から、可愛いく、幼く、意見なんか言わないでと育てられている国なのだ。だから、東大を希望したり、社長になろうとか、議員になろうとか思う女性が増えないのだ。
警察も報道機関も男社会だから、そういう視点がないらしい・・・
それにへそ出しは冷えは万病の元、激痩せも、健康教育上良くないのである。

議連が子どもたちにもたらす悪影響について

議連が懸念する「子どもへの影響」がどのような意味なのか、私にはこれ以上のことはわかりません。

むしろ私がいま問題にしたいのは、「議連の子どもへの影響」の方です。

「ヘソ出し」「大きい胸」「胸揺れ」「ミニスカート」自体に対して、「性的対象」「性暴力を誘発」というネガティブなレッテルを貼り、広く流布している議連の一連の言動は、子どもたちへの深刻な悪影響が懸念されるのです。

たとえば、会見で増田氏は次のように言いました。

肌を露出し、大きな胸が揺れます。極端なミニスカート。子どものための交通安全の動画にこのようなキャラクターが本当に必要なのか。

「このようなキャラクター」の「このような」とはどのような意味でしょうか?少なくとも、否定的なニュアンスは確実にあります。性的対象は汚らわしい猥褻物であり、犯罪を誘発する悪であるという認知が表れていると言っても過言ではないでしょう。

しかし、女児がミニスカートを履くことも、ヘソ出しの服を着ることも、ごくありふれたことです。小学校高学年になって、体育の授業で走ると、胸が揺れるようになる子もいるでしょう。それもまたごく当たり前の日常です。

戸定梨香さんの身体的特徴や服装やモーションが、そうした日常を生きている子どもたちに、何かしら不快な感情を抱かせるものであるとは、私には到底思えません。むしろ、そうした自然な身体のあり方に、性的嫌悪感を押しつけているのが、全国フェミニスト議連とその賛同者たちです。

もし仮に、子どもたちが議連の抗議文を読んだり、議連の見解に賛同する親から、議連による性的認知をインストールすればどうなるのでしょうか。つまり、ミニスカートや胸の揺れは公共の場にふさわしくない猥褻物であり、性犯罪を誘発するものだと見るようになれば、何が起こるのでしょうか?

私には、2つの懸念があります。イジメと、自身体への否定的イメージです。

性嫌悪をインストールすることでイジメが起きる懸念

イジメについては、想像は容易だと思います。ミニスカートやへそだし・胸揺れは猥褻物であるとすり込まれれば、同級生が同じような格好をしていても同じように見るようになるでしょう。「うわあ、あの子、胸を揺らして走っている、恥ずかしくないのかな」「ああやってヘソ出しミニスカートを履く子がいるから、痴漢とかヘンタイが出てくるんだ」と。

「私たちは表現を批判しているのであって、現実の女性を攻撃している訳ではない」という使い古された言い訳は、ここでは全く役に立つとは思えません。実際、以前の記事でも触れたように、女性の権利を守ることを建前にしている大人たちでさえ、二次元表現批判から現実の女性に対する攻撃へとスライドさせているという現実があります。

子どもたちに、「表現の中での胸の揺れは批判するべきだけど、体育の授業のときに胸が揺れている友達を悪く言ってはダメ」と説明して、理解してもらえるでしょうか?

いずれにせよ、議連のような論点が広く受容されれば、子どもたちのコミュニケーションの中に、性的特徴を嫌悪する視点が導入されることになるでしょう。それは、性的イジメさえ誘発しかねません。

自身体への否定的イメージは、生涯の重荷になる

次に、身体イメージの問題について話します。

思春期の子どもは、性別差や個人差はあれど、自分の身体の変化に戸惑いがちです。そうした時期に、周囲の人間の心ない言葉によって、自分の身体へのネガティブなイメージを植え付けられることがあります。

たとえば、母親に「大きな胸は恥ずかしいから目立たないようにしなさい」と言われることで、自分の身体に対する嫌悪感を募らせて非常なコンプレックスになったという話はよく耳にします。

私自身の経験は語りませんが、自分のありのままの身体を受け入れられないということは、本当に苦しいことです。それは、健全な成長やコミュニケーションの妨げになったり、摂食障害の原因になるだけではありません。場合によっては死に至らしめるほどの深刻な問題なのです。

他人の身体的特徴について、揶揄したり安易に言及したりすることは、厳に慎むべきことだと思います。それは、本当にアイデンティティの最も深いところに傷を刻み込む振る舞いですです。男性が女性の身体に対して言うこと「だけ」がセクハラではないのです。

ボディイメージといえば、アイドルやモデルやアニメが、女性に対して「こうあるべき」という身体イメージを一方的に押しつけているという批判があります。その批判は、個人的にはまったく理解できない訳ではありません。

しかしそれが言いたいなら、「胸の揺れ」や「大きな胸」に対して、「性的対象」「性犯罪を誘発する」という否定的なレッテルを流布させるべきではないでしょう。

大きな胸は悪いことですか?

胸が揺れることは悪いことでしょうかか?

全国フェミニスト議員連盟の方たちが子どもへの影響力について建前にするなら、せめて自分たちが発した言葉が、どれほどの子どもたちを傷つけうものなのか、真剣に考えてもらいたいのです。

性嫌悪を次世代に伝えるのは、いいかげんやめませんか?

全抗議文や記者会見を見る限り、この中心にいる人たちは、性に対する嫌悪感を抱いていることは容易に読み取れます。その抗議文に賛同するひとの多くもそうでしょう。

しかし、時代は変わりつつあります。戸定梨香さんや運営会社社長が女性であることは、この社会が性的抑圧から解放されつつある証左です。

女性が、性的特徴も含めて、バーチャルの世界で自分の身体を望むように創造する。それを子どもたちが好み、憧れる。ここにどのような差別や人権侵害があるというのでしょうか。

フェミニズムの名の下で議連がやろうとしているのは、ただ自分たちが逃れられなかった性嫌悪を次世代に再生産しようとすることです。

もういいかげん、女性の身体に対してとやかく言うのはやめませんか?

価値観と人権感覚をアップデートしてください。議連の方々は、時代の歩みを逆行させようとしているのが自分たちの方であることに、そろそろ気がついてください。




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