暮れの為のうた

沙羅曼蛇色瞳から発して近付いて来る孔雀の精から五穀豊穣を願って自害を図る振袖姿の娘まで誰の事かも何の事かも分からないまま呑み込み続けた群青色の空の雲をもう誰も見る事は無い

我らの作った恐ろしい街 恐ろしい暮らし 恐ろしい愛 恐ろしい渦

草食動物の夢の中で捥がき続けて死んでしまった私の友人の結婚式は金襴緞子の帯締めたグッピーの群れに襲撃されてウェディングケーキから木苺の血空から金剛石の雨光

去年に紅も身を潜め丑三つ時雨音鋭く地面に穴を開けようと砕け散り乍も又1mmの深さにも満たないとは言え地に穴は空いている事を教え飛び去っていった旅の鳥が今年も黒き湖に浮かんで居るのを見た

風またビルの間で
鳥を吸い込む
無を作る
切り裂く
雲運ぶ
吹き荒ぶ
渦を巻く
校庭の砂と
台所の砂糖 塩 小麦粉
ドラァグクイーンのラメ
赤ちゃんの天花粉
全部を一緒くたに渦を巻く
老人の笑顔
子供の悲しみ
嘘吐きの声
旅人の叫び

運ばれても消えない強い香りを纏って
千切れた真珠の首飾り一粒一粒に還り
丁寧に塵匣の中へ捨てられゆく
淡く濁る光塵匣の底蠢く
つめたい

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