『ショート・ターム』 original title: SHORT TERM 12

 11月公開の映画でイチオシはこれです。「ショート・ターム」、すなわち何が短期なのかというと、子どもたちの「一時預かり」。なんらかの家庭問題によって心に傷を持つティーン・エージャーたちのシェルターなのですが、実際は「ショート・ターム」で出られる子はわずか。年齢制限でいたしかたなく「卒業」を迫られ、社会に適応できるかどうか悩む子も出る始末。

 かといえば、ちょっとしたことでふさぎ込み、奇声をあげ、「脱走」を試みる子も。実際、映画は、そんな子供の脱走を、若いケアテイカーたちが全力疾走で追いかけるシーンから始まる。

 施設にはもちろん経験を積んだ監督者がいる。しかし、現場で子どもたちと接するのは、学校を出たて、経験も少なく、子どもたちの対応にいちいち頭を悩ませ、しかし年配者よりは持っている体力を使って子どもたちと相対することが求められる若手のテイカーたち(彼らの待遇に触れてはいないが、給料が高そうには見えない)。しかも、そのテイカーたち自身がこれらの施設の経験者であったりもする。まだ完全に癒やしきれていない心が、ティーンたちが起こす事件によっていちいち疼く。

 すごくすごく地味だが、リアル。とくにひとりひとりの子どもが。世の中に拗ねているのに絵の才能を発揮する少女に、テイカーが声をかける。「私も子供の頃、お母さんの大勢いるボーイフレンドの絵を描いたわ」。卒業前に散髪した頭を鏡に映して、昔母親に殴られた傷が見えないか? 気にする子ども。ちょっとしたセリフ、ちょっとした行動に「ふつうの(そうじゃない子はいっぱいいるのだが)子ども」時代を送れなかったことが一瞬でわかってしまう、そんないちいち刺さるセリフ、刺さる行動をやってくれるのだ。

公式サイト http://shortterm12.jp/

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