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[読書ログ]「ひみつのさくせん」
作: ニコロ・カロッツィ
訳: 橋本 あゆみ
出版社: 化学同人
あらすじ
「ね、あそぼう?」
水槽の金魚に声をかけたのは、ねずみ。
「うん!」
とびはねたり、泳いだり、ぶくぶく泡をたてたり。毎日遊ぶ二人はすっかり仲良し。ところが、そこにしのびよる怪しい影がみっつ。大切なともだちの金魚をねらっている。なんとかしなければ。
ねずみは考え、知恵をしぼり、実行する。無茶なことだって、勇気を出してつきすすむ。そうすればきっと。
ねずみが思いついた「ひみつのさくせん」とは? その作戦で本当に友達を守れるの?
建築家でありイラストレーターでもあるイタリア出身の作家ニコロ・カロッツィがしっかりと描く家の中の様子を背景にして、しのびよる怪しい影を相手に奮闘する小さなねずみたちが大活躍。
シンプルなストーリーながら、次々に展開していく場面はどれも印象的な構図ばかり。緊張感を漂わせる静かな場面から、次の瞬間にはねずみが一気に駆け抜け、予想外の展開へ。さらに彼らは家の中を飛び出していき……。
感想 ※ネタバレあります
表紙絵の美しさに魅かれて図書館で借りた。
とにかくイラストが美しい。
線の感じといい、品がある色合いといい、眺めているだけで「いいね!」をたくさん押したくなる。
物語はシンプル。
金魚とねずみは友達で、毎日遊んでいるが、あるとき、家にいる黒猫三匹が忍び寄ってきた。黒猫たちは、金魚をじっと見つめる。
ねずみは金魚を守ろうと、おとりになって猫から逃げる。逃げた先にキャットフードがあり、いったん難を逃れる。
そのあと、ねずみはティーカップに金魚を移して、ねずみの仲間を連れて、家を脱出し、金魚を川に逃がす、という物語。
むちゃだって
ゆうきをだして
つきすすむ
この言葉が二度出てくる。
リズム感があり、ありきたりの言葉なように見えて、作中だと陳腐な感じがまったくしない。
ねずみが金魚のために勇気を出して、あれこれ頑張り、猫に狙われないように逃がしてあげるお話。
タイトルはもっといいタイトルがあると思う。
ちょっともったいない感じがした。
ストーリーとしても、少し気になるところはある。
金魚って川に逃がしていいんだっけ?とか。
飼い主は金魚が急にいなくなってびっくりするのでは?とか。
金魚と友だちだったのにもう会えなくなるけど悲しくないのかな?とか。
そもそも、猫って金魚を狙ってたのかな?実は、ねずみ自身をねらってたってことはないのかな?とか。
けれど、イラストの美しさと、1ページに一言ほどしかない文章と、それで十分伝わる技量、言葉のリズム感が秀逸すぎて、これはこれで完成しているのだ、と思わされる。
そういった読み手の気持を凌駕してくる、圧倒的なセンス。
ねずみの気持を考えて、金魚の気持を考えて、猫の気持を考えて、飼い主の気持を考えて。
そうやって読後にあれこれ考えを巡らせられるのが、いい物語だと思うが、そういう意味でも惹きつけられる。
どうしてねずみはここまで勇気をだして頑張れたのか。
金魚は本当に水槽を出られてうれしいのか。
自分なりの答えを見つけたくなる、何度も思い出し続けたくなる。
そういう魅力がつまった絵本だった。
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