20221122-京都リモートワークにて雑感

店の雰囲気やその日の店内の状況にもよるのだが、だいたい僕は一人で黙々淡々と静かにおいしいビールを飲んでいる。飲みながら気付かず寝言を言っているのかもしれないが、少なくとも本人は知らない。

いろいろな街でぶらぶらと飲み歩いていると、様々な年齢層・国籍の人たちと思いがけぬ出会いもある。特にここ2カ月ほど、カウンターで隣に座る若い方たちを中心に「話したい」という雰囲気が感じられる。そのようなときには喜んで付き合わせてもらっている。

9月、鎌倉駅近くに民主的なスナック「まちのスナック」がオープンし、数回訪れた。ここは地元のIT企業「面白法人カヤック」が運営している場所で、従来ランチ営業だけだったところにスナックを追加して二毛作営業に切り替えたのだ。

カヤックの事業コンセプトは、「地域資本主義」「『何をやるか』より『誰とやるか』の方が大切」など、ユニークで面白い。真実の一面を良くとらえていると思う。
そういうカヤックが作ったスナック、面白くないわけはない。最近はウィスキーなどすっかり飲まなくなったのだが、スナックの趣旨に賛同し、飲みきらず余ってもいいつもりでイチローズ・モルトをキープしてみた。ママ・マスターは2名の日替わり制(だいたい、曜日ごと)。ある日は鎌倉市長の松尾さんが1日マスターをやったりした。マスターもママも素人でいろいろな方々が「見よう見まねで」始めているというのもおもしろい(・・・失礼、Iさん!)。鎌倉は東京・横浜から日帰り圏なので観光客は6時頃にはさっさと帰ってしまう。従ってスナックは地元の老若男女が大部分、僕は平均年齢を少々引き上げている。若者たちも閉じこもり生活にいい加減飽き飽きして大いに羽を伸ばして世代の異なる人たちと知り合いながら楽しそうにしている。今のところ、ここは海外観光客が来るような場所にはなっていないようだ。

11月に入ってからは、1か月ほど京都の Share Office 付きホステルに滞在してリモートワークしている。たぶん京都は overtourism の影響を最も多く受け、そして翻弄された都市だろうと思う。2年前の夏、タクシー運転手に地上げ屋と間違えられながら約10年ぶりに訪れた際には碁盤の目の中の変わり様に驚いた記憶がある。大小、様々なホテルの乱立。コンビニや海外ブランドショップ旗艦店の増加、そしてそれらに伴う再開発。日本経済・地域経済にとって観光収入は良いこととは言え、街並みの変わり様に寂しさを感じたものだった。コロナ初年度、観光客激減時の街中にはややこわごわと観光する若者と日本在住の外国人家族がいる程度で、観光客相手の宿泊業者や飲食業者は大きな痛手を受けた。

街並みが変わりゆく中でも、伝統的な町家を残す動きがあるのはうれしい。改築して設備や内装を整備し、宿泊施設や飲食店としてうまく残している例をいくつも見た。そういう場所は飲み屋でなくても訪れてみたくなる。これは今回、琵琶湖ビエンナーレもあって京都から日帰りで近江八幡を訪れた理由の一つでもある。
また前回今回と滞在しているホステルもそのような古い建築再生例の一つであり、ちょうど3年前にクラウド・ファンディングで実現された。
リモートワークしている人々を見ていると、IT関係の方、海外と会議する方の割合が圧倒的に多い。TeslaもIT企業のようなものだが、イーロン・マスクのように「全員出社せよ」などというIT企業経営者は例外的なのだと思う。今もShare Office の近くの席でSIerらしき女性マネジャーが社内ヘルプセンターの日本語の怪しい中国人スタッフたちとミーティングを始めたようだ。

今回は海外観光客受け入れ再開から1か月経ち、京都中に国内外からずいぶん観光客が戻って来て活気にあふれている。紅葉の季節でもあり、修学旅行や遠足の学生・子どもたちもマスクしながらも嬉々としている。2年前にはピタッと止まっていた建設も再始動したようで、街中のいたるところでクレーン車やダンプカーを目にする。観光地や街中では、歩く人の3割程度が海外からの人々のように見受けられる。観光客が急激に増えたので、住民たちからは「市バスが100号系統を減便したままなので満員で乗れやしない」などと不平も出てきている。海外客は欧米からが多く、アジアでも中国からの観光客はレンタルの着物でポーズをとっている若い女性たちに多く混じっているようだが、海外客の中では以前よりだいぶ少ないようだ。これは国の政策の違いを反映しているのかもしれない。いずれにせよ、コロナ前のような大混雑にならぬことだけを願っているが、円安で急激に加速している「日本の安さ」による海外客流入だけはどうにもならないのが残念だ。円安に乗じて海外客目当てに間に合わせの日本風で暴利を貪ろうとする薄っぺらな店もとても悲しい(結構、外国人が経営している店に多いようだが)。

以下9月以降、飲み歩きながら、話したり考えたりしたことをとりとめなく記録する。

【問題と課題の違い(鎌倉で30代?の若者と)】
問題はトラブルであり、解決して「本来あるべき姿」にやっと戻ることができる。
一方、課題は自ら積極的に見出して設定すべきもの。良い課題設定のためには上位のビジョンが必要であり、課題を解決できたときには、問題を解決できたときとは異なり、従来より一段二段良い世界に到達できる。まずは優れた課題を設定できるようにしたい。

【言語の重要性(鎌倉で30代?の若者と)】
言語はまず第一に、そして圧倒的に考える手段であり、次に伝える手段だ。言語なしには進むことはできない。もしかすると、言語を持たぬ動物がひそかに非常に高度に思考しているのかもしれないが、少なくとも僕を含め、人間は普通それを知覚し得ない。したがって人間は言語をもっともっと大切にし、研ぎ澄まし、コミュニケーションすべきだ。
たまたま以前から気になっていた国立民族学博物館でいい企画展をやっていることを耳にしたので、明日の最終日ギリギリ、大阪万博記念公園に行ってみようと思っている。
「Homō loquēns 「しゃべるヒト」~ことばの不思議を科学する~」

【謎解き(京都で27才の若者と)】
リアルで行う「謎解き」がブームになっているそうだ。京都でも各所で行われていてゲーム感覚で参加するそうなのだが、先日会った若者はガールフレンドを誘って2回目の参加(なぁに、単なるデートだが)をして別れた直後にビールを飲みながら幸福感の余韻に浸っていて、僕もそのおこぼれに預かった(・・・スコットランドのビールを解説しながら彼のノロケ話に付き合った)。ローケン(「老犬」ならぬ「老健」)の仕事をしている若者で、老人と話すことが多く昔のことをいろいろ教えてもらえて勉強になるそうだ。老健の退所にも「3ヶ月」という一つの節目があるそうなので、入院の一区切りと同じだな、と思ったものだった。そして20分1コマを毎日18コマ、次々といろいろな老人の介護をしていて思うのは、同じ年齢でも「結婚していたりその経験がある人」の方が「結婚歴のない人」に比べて思いやりがあることだそうだ。思いやりのあるグループに属する僕が(えへん!)まだ独身の彼に、「そう、一度ぐらい早めに結婚してみるのもいいと思う」と偉そうにアドバイスしたことは言うまでもない。また「認知症になると思ったことがすぐに口に出るので人間の本性がわかる」そうなので、そのうち出てしまっても恥ずかしくないよう、本性を鍛え、更に脳内を多少きれいにしておこうと改めて自らに言い聞かせた。

【世界旅行(京都で60代のScotlandからのSenior Hockey メンバー】
やっとご夫婦でHockeyがらみの世界一周旅行、日本にも来られたといって喜んでいた。
日本は東京と京都、その前には南アとシンガポール。さらにこれからハワイと西海岸に寄ってから帰るそうだ。全体の行程は1か月以上とのこと。店の人から、僕もいつも圧倒される三十三間堂訪問を勧められていたが、翌日京都を去ったこの老夫婦が行けたかどうかは知らない。

その他、祇園の料亭のランチで隣りに座った地元の常連から滋賀の日本酒を教えていただいて久々に燗で飲んでみたり、うまいビールのTAPがあると聞いた河原町の新しいホステルのBARで京都醸造のGINの新銘柄を教えてもらったり、Yukon, Canada から来たドイツ人(ちゃんとしたビアバーで飲んでいたがくたびれていた)にYukonが人口が足りず準州であることを教えられたりと、気ままに飲み歩いているとなかなか有意義な経験ができるのでやめられない。

第8波が懸念されてはいるが、ワクチンを活用しながら人類はうまく共存して経済活動を続けていかねばならない。そしてそれを身をもって個人的な活動領域(多少の酒場等を含む)で実践することは、自分の大きな課題であり、責任でもある。どこかに、大量飲酒は脳萎縮したり認知症になりやすいというけしからん疫学調査もあるらしいが、子供でも知っている「百薬の長」を信じている。

【その他行動記録(仕事の合間の紅葉狩り)など】
●京都現代美術館何必館(kahitsukan)
 エリオット・アーウィット
 http://www.kahitsukan.or.jp/frame.html

●琵琶湖ビエンナーレ近江八幡会場→日本と海外のアーティストが古い町家や蔵を活用して様々な現代アート(インスタレーション)の展示を行っていた。また、近江商人の精神に触れたり、江戸時代の「朝鮮通信史」を知ったことなども副産物だった。しかし京都から近江八幡まで乗ったJR湖西線の窓から町家の近くや休耕地などに立ち並ぶ無機質にギラギラ光る太陽光パネルを見て、「温暖化防止に寄与する太陽光発電の重要性はわかるが、この無様な景観はなんとかならないものか・・・」と感じてしまった。あのような構築物を許すことも含めて「経済」「価値観」「文化」であり、それらが歴史として積み上がっていくのだとは思うが、生理的には受け入れがたいものだった。・・・これはこの地域だけのものではないのだが。
●高雄(三尾)紅葉 →JRのキャンぺーン「そうだ 京都、行こう」に乗せられ、神護寺・西明寺・高台寺。高台寺では「鳥獣戯画」も見られた。また、仏足石でお釈迦様の足跡に土踏まずがないのを確認し、自分の秘密を誇らしく感じた。
●比叡山紅葉 →琵琶湖側の比叡山坂本からケーブルカー(日本最長)で登り、山頂でシャトルバスに乗り降りしてロープウェイとケーブルカー(高低差日本最大)で降りてきた。2種類のケーブルカーとロープウェイ、バス、電車と、1日で色々な乗り物に乗れて、子どもでなくても紅葉も忘れるほど楽しかった(首都圏から箱根日帰りするようなものか?)。
●大原三千院・寂光寺→「恋〜に疲れた女(古い京都のご当地ソングより。リリースは1965年だそうだ!)」を含む(しかしシェアは不明)内外観光客で賑わっていた。
●禅居庵・建仁寺・高台寺・京都植物園 →京都植物園は祇園の料亭のランチの後の腹ごなしに散歩。
●伊勢神宮(内宮)に日帰りバス旅行 →自分に信仰心が十分備わっていないことは自覚しているが、日本人である以上、一度くらいは訪れておかないといけないと思っていたのでこの機会に行ってみた。以前、石元泰博が撮った圧倒的なモノクロ写真を見ているので、とても自分で写真を撮る気持ちなどになれない。いずれにせよ、当日は光線の具合も悪く、ほとんど撮影せず、単なる観光(&一応、お参り)をしただけであった。伊勢角屋の直営店で Pale Ale のチェックを忘れなかったことはいうまでもない。
●東山ぶらぶら北上→知恩院・青蓮院門跡・南禅寺・永観堂(禅林寺)・哲学の道
●天龍寺・京都御所(せっかくの蹴鞠の実演を見逃してしまったのは残念)・無鄰菴
●京都で観た映画(雨の日の行動オプションは重要)
 Ticket to Paradise
 Don't worry my darling
 ある男


超長文にお付き合いくださり、誠にありがとうございました。
せっかくだから少しはお前の紅葉の写真などを見てやろうか、って・・・?

首都圏に戻ってから整理しますのでしばしお待ちをm(_ _)m
(旅行用PC、Windows10をChromeOS-flexに入れ替えて一応サクサクなのですが画面も小さく、写真整理しにくいのです。)

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