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メンタルコーチングとメンタルトレーニングの違い

車いすテニスの国枝慎吾さんが「俺は最強だ」という言葉をラケットに刻んでプレーしていたというエピソードがあるように、アスリートのメンタルについて関心が高まっています。

他方で、インターネットで検索すると、メンタルトレーナーやメンタルコーチと名乗る方が出てきて、資格に関する情報も錯綜しています。
今回は、名称だけでは何をやっているのかわかりにくい、コーチ・トレーナー・コンサルタント・メンターについて、それぞれの役割を整理していきます。わかりやすさ優先で書いたため、若干不正確な部分もありますがご容赦ください。
なお、一般的には、コーチングやトレーニングを受ける人のことを「クライアント」と呼びますが、ここではスポーツの現場でイメージしやすいようにクライアントのことを「選手」と呼びます。

役割からみた整理

メンタルコーチ(伴走者)

コーチは、「答えは選手の中にある」という前提に立ち、選手と一緒に答えを創り出す(見つける)サポートをする役割を担います。
そのため、コーチは、原則として選手に答えを与えることはありません。
コーチから選手に選択肢を提供したり、選手が持っていない視点から問いかけることはありますが、コーチが提供した選択肢や問いかけに乗るか無視するかは、選手に決定権があります。
コーチは、選手に寄り添う伴走者と言えます。

メンタルトレーナー(先導者)

トレーナーの役割は、選手に対して目標達成に必要な最善の方法を提供することです。
選手が目標を達成するために必要なメンタル面の課題を分析し、適切なトレーニングメニューを提供するのがメンタルトレーナーの役割になります。
このように、メンタルトレーナーは、選手よりも先を走って、選手がより速く目標を達成できるように道案内をする先導者と言えます。

コンサルタント(情報提供者)

コンサルタントは、専門的な知識や経験から、選手が目標を達成するために必要な選択肢を出し、それぞれのメリット・デメリットやリスクの有無などを先回りして教える役割を担います。
コンサルタントが示した選択肢のうち、どれを選ぶかは、選手に決定権があります。

メンター・講師(経験者)

メンターや講師は、その人自身の経験を踏まえて、選手にアドバイスをする役割を担います。選手が目標を達成するためには、その講師と同じ方法を選ぶこともできるし、別の方法を選ぶこともできます。

アプローチの具体例(道に迷ったとき)

例えば、選手が分かれ道にぶつかった場面を想定してみます。

分かれ道

分かれ道は、右に進む道と、左に進む道の2本あり、それ以外は平原が広がっています。
このとき、コーチ、トレーナー、コンサルタント、メンターは、それぞれどうやって選手をサポートするでしょうか?

コーチのアプローチ(質問を通して選手と答えを探す)

・まず、どこに行きたいですか?(目標設定)
・右の道には、何がありそうですか?
・左の道は、どうですか?
・引き返して、別の道を行きますか?
・いっそのこと、真ん中を突っ切っていくのはどうですか?(選手がもっていない視点を提供する)
・さて、どうやって行きましょうか?(答えは選手の中にある)

トレーナーのアプローチ(答えを与えて先導する)

・目的地が決まっていることが前提
・目的地に速く到着するのは、右の道です(トレーナーが答えを持っている)
・右に行きましょう。(選手に答えを与える)

コンサルタントのアプローチ(情報を与える)

・目的地が決まっていることが前提
・右の道は、近道ですが、危険で、工事中かもしれません。
・左の道は、遠回りですが、確実に到着できます。
・最近は、左の道を進むのがトレンドですが、右の道を選んで成功した人もいます。(専門家として情報提供する)
・さて、どちらを選びますか?

メンター・講師(経験談を語る)

・私は、右の道を選びました。
・右の道の前半は険しく、休まず前進するのは大変でした。
・半分くらい進んだところに休憩する場所がありましたが、私は休まず進みました。
・後半は、平坦な道で、あまり苦労しませんでした。
・こうして私は目的地に着きました。
・ちなみに、左の道は、選ばなかったので何があるかわかりません。

「何が優れているか」ではなく、全て大切

こうして、それぞれを比べて書くと、「結局何が一番いいと言いたいんだ」という気持ちを抱く方もいると思います。
私は、どれも大切で、必要に応じて使い分ければいいと考えています。

メンタルコーチは、メンタルトレーニングの方法を知らなければ、「選手がもっていない視点から提案する」ことはできませんし、メンタルトレーナーが目標設定の段階から選手をサポートすることもあると思います。
大切なのは、それぞれのベースになっている役割や知識を知ったうえで、足りない部分を補い合うことです。

良いコーチ、良いトレーナーを見極めるコツ

心理学に関する資格は、公認心理師を除いて全て民間資格です。
また、キャリアコンサルタントのように、その名称を使うための試験や資格もありません。
そのため、極端なことを言えば、誰でも「メンタルコーチ」や「メンタルトレーナー」を名乗れるのが、現状です。
信頼できるメンタルコーチ・メンタルトレーナーを探すには、
・その人が、どこで何を学んできたか
・今まで、どれくらいの選手やチームをサポートしているか
・その人がサポートしている選手やチームが、どんな結果を出しているか
といったあたりを調べるのが良いと思います。




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