にんじん

経済活動に光明を見いださずにする確定申告の気の重さよ。
嫌いじゃない作業だったんだけどなあ。
せめてもの救いは「商業漫画家やめます」と公言する前に作業の峠は越していたこと。
手付かずでなにもかも放り出していたら最悪だった。
いやなにも放り出したわけではないが。
大人として、社会人として、作家として、
主語が大きいと考えなくてはならないことがどんどん積もっていく。
「無責任」に毛が生えたくらいの小規模がいい。大人としてのつとめなんてほんのちょびっとしか果たしたくないぜ!

にんじんのぬか漬けがやけにおいしくできた。
うちのぬか漬けがおいしくできるときの勝因は野菜自体のそもそもの旨さによるところが大きい。ゆえにきゅうりは無論夏がうまい。
今日びのにんじんに、通年そんなに味の差はない気がするがそれでも旬は秋から冬だという。
うまいにんじんをスーパーにて引いたのだろう。
食が細くなってから料理がめっきり面倒になってしまい、食事をゼリー飲料に頼ることが増えてきた。
食いしん坊を自負してきた自分にとってまさかの事態である。
10秒チャージ?しゃらくせえ。
いやいやありがたいですよ、ありがたい。肉体疲労時の栄養補給、無気力無目的の味方。
きのうは胃腸がだるくて1日ゼリーやらジュースやらで過ごした。
昼前に起きてきて冷蔵庫からつまんだにんじんは甘くて固くてやや青臭くて、土に根を張っていた経歴がどしんと伝わってくる。頼もしいが少々気持ちが負ける。
にんじん入りのジップロックコンテナーをにぎってこたつへゆき、座椅子によりかかり体育ずわりをしていると猫が乗ってくる。
ひざの山の頂上に、脱ぎ散らかした服がひっかかっているみたいに脱力してあっというまに眠り込んだ。
いたずらに背中にパクッと噛みついてみる。それ以上力を籠められることがないことを知っている猫はかまわず寝ている。
毛が入らなかったか唇をこすって確かめてからコンテナーのふたを開けにんじんをつまんでまたかじる。

ああ確定申告。
散歩でもしてこようかしら。

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