R.18官能小説おぱんつは無添加で
第12話「すれ違いは無添加で」#エロなし
「ありがとうございます、ありがとうございます、本当に、ありがとうございます。」
「あ、ははは、ど、どうも。」
体を乗り出し目に涙を浮かべて狂ったようにありがとうとトウヤさんにお礼を言うのは私のお母さんだ。母のあまりの鬼気迫る形相に押されて彼はタジタジになっている。
彼に妹の莫大な治療費を払ってもらう代わりに私は性のはけ口として3週間なんでも言うことを聞く性奴隷になるという約束を交わした。
だがなんの心変わりがあったのか分からないが期限より1週間も早い昨日にお金を払うと言い出したのだ。
そして今、私とトウヤさん、私の両親で私の家のテーブルの上でお金の話をしている所なのだ。
高校生が億単位の資産を持っていると正直に言うと話が滞りそうなのでトウヤさんの素性については嘘をついている。
私がネットのクラウドファンディングのサイトで募金を募った所お金を全額支援してあげると言ってきた嘘のような人という設定だ。
色々注意深く荒さ探しすればボロが出てくると思うがそんな余裕が私の両親にあるはずはなかった。
最初こそ半信半疑であったものの彼が一般庶民には一生手に取れないであろう億万長者御用達の特別製預金通帳の残高を見せるとすっかり信じ込んでしまった。
彼は落ち着きがあり良い意味で老け顔なので高校生にはあまり見えないのも都合が良かった。
両親には色々嘘をついてしまっているがお金を持っていることは本当なので問題はないだろう。
大事なことは妹の治療費を全額揃えることなのだ。それさえ叶えば他のことは重要ではない。
「あ、じゃあ指定の金額を3日以内には口座に振り込んでおきますね。」
「あぁぁ、ありがとうございます。なんとお礼を言ったらいいか、、、」
「い、いえ、、大丈夫です。」
お母さんはティッシュを目に当て水分の多いガラガラの声でトウヤさんに感謝の気持ちを伝える。
「本当にありがとうございます。いや、もう、本当にどうしようもなくて、、これで何とか、、」
「はは、い、いえ。」
今度はお父さんがガシッとトウヤさんの手を握って文章になっていない言葉を投げかける。
お母さんは化粧をしているのでそこまで目立たないがだがお父さんの方は随分とやつれてしまったのが分かる。目はシワが出来て落ち込んでいるし前はしっかり剃っていた無精髭がまばらに生えている。
それに家族三人がこうやって揃うのも凄く久しぶりだ。両親の喜びようやトウヤさんへの必死の謝恩の様子を見ていると今までの日々がどれだけ辛いものだったかを如実に表していて私も涙が出てくる。
私たちの苦労がやっと報われ多幸感で心が一杯になる。熱望していたが一向に姿を見せてくれなかった希望が私たちのもとに訪れた瞬間だった。
「いやぁ〜、凄かったなぁ。お前の親。」
「そりゃそうですよ。それだけ今まで大変だったですから。」
長居すると私の両親もトウヤさんも限界を迎えそうだったので私が話し合いを切り上げた。
両親には彼を駅まで送ると言って家を出て今、彼と一緒に歩いている。
「これからどうする?今日はモッツァレラのトマトパスタだけど、、」
「あっ、良いですね。せっかくなので寄って行きたいと思います。親も疲れてると思うので。」
「そうか、、」
もうお金を払う契約を済ませたので彼の家に行く必要は無いと言えば無い。ただそれでも彼と一緒にいたいと思うのはと思うのはそれだけ彼のご飯が美味しいのとその時間が私をあの希望も目標もやりがいのない辛い日々から救ってくれたからだ。
「でも、、本当にありがとうございます。トウヤさんのおかげで妹も家族も救われました。、、、、本当にありがとうございます。」
「はは、そうか。まぁ、、良いよ。その分の対価は払って貰ったからさ。」
「えぇ、、そうですかぁ?」
「あぁ、そうだよ。」
「ふふっ、、ホント面白い人ですよね。トウヤさん。」
「あぁ、そうだろ?、、あとこれはお前の親が落ち着いたら伝えて欲しいんだけど振り込む金額上乗せしとくよ。」
「えっ、、どういうことですか?」
「だってお前の家、結構借金あるんだろ?それにお前の学費とか、、、妹も病気が治ったら学校通うんだろ。一億じゃ足りないだろ。」
「そ、そんな、、だ、、ぁぁ、、本当に何から何まですいません。ありがとうございます。」
そんなの申し訳なくてダメです。と喉まで出掛かったが彼の言う通りだ。妹の治療費と今までの借金を合わせて一億円なのだ。それからも考えたらそれでは足りないのは明白。
だからごちゃごちゃ言うのではなく彼の厚意を素直に受け取ろうと思った。
「ははっ、お前も成長したな。前だったら慌てふためいてたのに。」
「ふふっ、そうですね。これでアメリカに安心して行けます。」
「ん?、、アメリカ?」
「あれ?言ってませんでしたっけ。妹のドナーの方がアメリカにいるんですよ。だから手術はアメリカでするんです。そのせいでお金が沢山かかってしまったんです。」
「え、き、聞いてないぞ。、、、て事はお前もアメリカ行くのか?」
「ふふっ、何でそんな驚いてるんですか?まぁ、まだ詳しい事は分かりませんけど家族は行くと思うので私も行くことになるんじゃないでしょうか。」
「え、えぇ。」
確かに重大な情報だったとは思うが口をぽかんと開けて一点を見つめ愕然とする彼。そんなに驚くとは思わなかった。
「い、いつから?」
「えっと、妹の容体はあまり良くないので準備が出来次第出発ということになると思います。」
「いつまで?」
「分かりません。妹の容体にもよると思います。」
「えぇ。」
彼の体から力が抜けトボトボと歩く。そこから彼は彼の家に着くまで一言も喋らなかった。
私はトウヤさんの家にお邪魔しいつも通り彼がご飯を作ってくれている間テレビを見て出来上がりを待つ。今日はパスタらしいので楽しみだ。
「出来たぞ、、」
いつもなら元気に料理を運んでくるのに今日は元気が無いと言うよりかはふてくされた子供のように無愛想だ。
「あ、ありがとうございます。美味しそうですね。」
「、、、、。」
私を無視して彼は椅子に座り自分の取皿にパスタを取ってぱくぱくと食べ始めてしまった。
「早く食えよ。」
「は、はい。」
明かに不機嫌な彼にどうして良いか分からず固まっていると低い声で催促される。
そこから会話もなくリビングには食器の音とパスタを咀嚼する音だけが響く。
その沈黙に耐えられず私から口を開く。
「あ、あの、、、どうしたんですか?そんな不機嫌で。らしくないですよ?」
「別に不機嫌じゃない。」
「だったら無視ししないでください。いつもみたいに話してくださいよ。」
「別に、、いや、、」
彼は厭世的に人を小馬鹿にしたように笑う。その態度に私も腹が立つ。
「お前もさ、、中々策士だよな。アメリカに行くなんて一言も言わないで。」
「た、確かに黙ってたのは悪かったですけど別に隠してたわけじゃないです。それに言う必要だって無いじゃないですか。」
「んっ、、だけどお前それは少し薄情じゃないか?金さえ貰って用が済んだら後はもうアメリカ行ってバイバイなんて。そんな事する奴だとは思わなかった。」
「なっ、何言ってるんですか。そのために体を要求したのは誰ですか⁈自分の欲求を満たすために困ってる人を利用するような人に言われたくなんて無いです!」
ものすごく見当違いな事を言われつい怒鳴ってしまった。だがいつもは論理的に話す彼が今日の発言に至ってはそれのかけらもない。
「、、、、でもお前陸上部に入りたいんじゃないのか?それは良いのかよ。」
「そ、それは妹の命がかかってるんです。しょうがないです。」
「そうやってお前、やりたい事全部妹のせいにして諦めるのかよ。もう充分だろ。お前はもう充分妹の為に頑張っただろ、尽くしてきただろ。そろそろ自分の為に生きたっていいじゃないか。」
初めて見る彼の懇願するような弱い目が私を見つめてくる。口調こそ強いが声には力は無かった。
「そ、そんなつもり、、だって妹には私がいないとダメなんです。」
「私がいないとダメって妹がそう言ったのか?お前が妹に出来る事はもうそんなに無いんじゃないか?妹を現実逃避の道具に使うなよ。」
「ふざけないでください!あなたに何が分かるんですか?ただお金を持ってただけの人が私の人生を分かったように言うのはやめてください!」
確かに私は妹の命を救うだけの力、お金を集めるだけの能力を持ってない。妹の心の支えにもどれだけなっていたか分からない。
ただそれを妹の為に無意味だと無駄だと分かっていたけれどそれでも頑張って募金を集めたり勉強した日々を一言で分かったように言われるのは我慢できなかった。言ってはいけない事だと分かっていたが抑えられなかった。
「それにあなたは私のなんなんですか?そんな偉そうに私の人生についてとやかく言えるような人なんですか?教えて下さい、あなたは私の何になりたいんですか?」
ついに言ってしまった。私とトウヤさんはこの関係と先の事について今まで一切口に出さなかった。それについて話してしまうとダラダラとこのかけがえなくはないけど失いたくもない曖昧な関係が終わってしまうとなんとなく分かっていたから。
私の今放った一言はこの曖昧な関係を終わらせるのに充分なものだった。
「、、、そうだよな。、、お前が正しいよ。オレみたいな奴がお前みたいに真っ直ぐ生きてる奴にとやかく言えるわけないよな。、、、悪かった。」
私から目を背き俯いて地面に向かってポツリとつぶやく。
「金は3日以内に振り込んでおくから気にしないでくれていい。その、、今まで悪かった。もう明日から来なくていい、、、本当に悪かった。」
「そんな、、こ、こんな終わり方でいいんですか?全然あなたらしくないです。本当にどうしちゃったんですか?」
私の目から自然と涙が溢れる。私が呼び掛けても彼は俯いて反応しない。
私はいつも堂々としていて、躍動感溢れる彼が好きだった。いつも周りばかり気にしている私には無いものを彼は持っていて羨ましかった。
自分の生き方をしっかり持っている彼を尊敬していた。
けどここには私の好きな彼はどこにもいない。そんな弱々しく女々しい彼を私は見てられ無かった。見ていたくなかった。
「今までありがとうございました、、、、」
食べかけのパスタを残して上着を取り立ち上がる。
私は腕で目を覆い鼻を啜って振り返った。玄関の扉を開けて外に出る。
外は体の芯に刺さるように寒い。
何もかもが終わってやっと彼が私に抱いてる気持ちが分かった。そして素直に気持ちを相手に伝えられないあいつに、それを分かって受け止められない私に腹が立った。
歩きながら彼の顔を思い出す。私に会いたく無いならあんな悲しい顔しないで欲しかった。
何か無性に腹が立ち、無性に悔しくて、無性に悲しくて怖かった。
何故だか涙が止まらなかった。
あとがき:
こんにちは、ソムリエです。なんちゃってで始めたえろ小説がなんかシリアスな展開になっちゃいましたね。
次回は抜けるし少し感動するようなお話にしたいです。来週は忙しいのと次の話が少し長いので投稿少し遅れるかもです。次回最終回です。
次回予告:
最終回「素直な気持ちは無添加で」
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