実在した女相撲興行とギロチン社
『菊とギロチン』(2018年)
監督/瀬々敬久 脚本/瀬々敬久・相澤虎之助
出演/木竜麻生、東出昌大、寛 一郎、韓 英恵
富山のアトリエセーベーでこの映画を初めて見たとき「どえらい映画を見てしまった...!!」となんとも言えない高揚感でドキドキした。脚本の相澤虎之助さんと、同じく空族の監督の富田克也さん、アナキズム研究家の栗原康さんのトークもあって、思い返せばなんて贅沢な日だったんだ!そのあとシネモンドにも見に行ってさらにこの映画の強烈さにひっくり返ってファンになった。
舞台は関東大震災直後の日本。実在した女相撲一座の女たちと、これもまた実在したアナキストグループ「ギロチン社」の男たちが出会う、この出会うところがフィクション、ってどうやって思いつく!?こんなこと....。想像力と創造力が凄すぎ!
ギロチン社中心メンバーの中濱鐵(なかはまてつ)役の東出さんがかっこええ...というのは一旦置いといて、女相撲一座「玉岩興行」のシーンどれもが胸を打って(特に相撲甚句っていうのかな、歌?のシーン)いちいちジーンとします。人生の脱出をかけた女たちのドスコイ根性、ごっつぁんすぎてがぶり寄り。
映画終盤でいきなりタイトルが出たり、浜辺でみんなで踊るシーンはジャンベのリズムにアフリカンダンスだったりと不意打ちを食らう箇所も多々あるのだけどそれも自由な感じですごく良い。公式サイトにある瀬々監督のコメントが印象深い。
十代の頃、自主映画や当時登場したばかりの若い監督たちが世界を新しく変えていくのだと思い、映画を志した。僕自身が「ギロチン社」的だった。数十年経ち、そうはならなかった現実を前にもう一度「自主自立」「自由」という、お題目を立てて映画を作りたかった。今作らなければ、そう思った。映画は多くの支援があったからこそ完成できた。何かを変えたいと映画を志した若い頃、自分はこういう映画を作りたかったのだと初めて思えた。あとはいざ、世界の風穴へ。そうなれれば本望だ
関東大震災直後、排外主義に覆われた閉塞的な社会がどんどん軍国主義にむかっていく時代背景も描かれています。と、ここで宣伝ですが....石引パブリックのリソグラフで発行した徳田秋声の『ファイア・ガン』は、ちょうどその時代、震災で混乱し排外的になっていく世相を冷静に見つめた名短編。オンラインショップからも購入できます!
フェイクニュースはこわいです。
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