能登半島地震での所有者不明土地の弊害から登記義務化を考える

登記義務化が義務化されます。

この登記義務化が法制化されたのは所有者不明土地が日本全国にあるということが分かったからだと言われています。

その端緒は東日本大震災の際だといわれています。

東日本大震災の際に、仮設住宅を建設したり、がれきを撤去して一時保管する土地が少なく、あったとしてもそこの土地を利用するには所有者全員にアプローチしなければならず、その土地が相続登記が未了であれば、推定相続人全員に権利があることになりません。

民法の共有の規定では、

第二百四十九条
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

となっています。

令和3年の改正で多少の条文追加や制度が加えられたのも事実ですが、この条文はそのまま残されています。

法定相続人は土地を事実上「共有」していることとなり、その一人ひとりは全員がその持ち分に応じた使用をすることができることになります。

勘違いの例として、その土地の面積を持分で割った面積を使えるに過ぎないと考えていらっしゃる方もいますが、そうではありません。

その土地の全体を「持ち分に応じて」利用することができるのです。

追加されたのは、対価を得た場合には他の共有者に償金を支払わなければならない、という2項の規定です。

ただ、その対価がどの範囲であるかは明確ではなく、解釈で明らかにしていかなければなりません。例えば、対価を受けていた人が固定資産税を長年支払っていたり、業者に委託して管理をしていた場合、その管理料をも考慮に入れなければなりません。

少し話はそれましたが、本年(令和6年)の能登半島地震でも所有者不明地が復興の大きな妨げになっていることも様々な方が発信しています。

単に仮設住宅やがれきの問題だけではなく、幹線道路が周辺の土地のがけ崩れ等により寸断されていたり、その沿道での危険家屋の公費による取り壊しができなかったり、すでに行政が直面している問題です。

石川県の発信では、法定相続人が100人を超える例も多数生じているといわれています。

行政だからといって、私有財産を勝手に利用することは法律上できない、というのが現行法の建付けです。その大原則がある以上、何らかの手続きは必要で、そこに人手が割かれることは行政にとって負担になってきます。

だから相続登記を義務化したのですが、周知は今一歩足りていないようです。

とある調査では、この制度を知っている人は半数に満たないという結果も出ています。

土地を相続するという制度は鎌倉時代から始まって、その当時分割相続だったものが、徐々に長子相続(家督相続)となり、これは戦後すぐまで続きます。

そして戦後の民法改正で、遺言等がなければ法定相続、つまり分割相続が基本となっています。

周知がされない理由は、自分のこととして考えられないことにあるのでしょう。自分も親も不動産を持っていないから関係ない、そして興味が向かない。

でも、日本中の誰でも、どこかの土地の法定相続人にすでになっている可能性があることを認識すべきだと思います。

親は所有していなくても、その前までの代、つまり祖父、曾祖父が土地を所有していて、その代の名義になっていれば、たどっていくと持分は少なくてもその一人になっている可能性は高いと思われます。

そのこと自体を知らなければ手を挙げて手続きに着手しようがありません。

ただ、制度とその趣旨を知っておくことは絶対に必要でしょう。

今回の能登地震での問題だけではなく、大地震は全国で起きる可能性があります。また台風などの大雨被害や自然災害でも同じことが起きます。是非、自分ごととして考えておいて欲しいと思っています。

そして権利だけを主張するのではなく、趣旨を理解して円滑な手続きに協力できるよう心構えを持ってほしいと思っています。

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