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【高校数学】あの積分を置換積分を使わずに計算する方法

明けましておめでとうございます。
さて、いきなりですが、みなさんは
(1) $${\int \frac{1}{\sqrt{1+x^2}}dx}$$、
(2) $${\int \sqrt{1+x^2}dx}$$
をどうやって計算しますか?

これらの積分は$${x+\sqrt{1+x^2}=t}$$と置いて、置換積分を使えば両方とも計算できます。これが正統派の方法です。

しかし、私はその計算が面倒くさいと感じてしまい、別の方法はないだろうか考えてみた、というのがこのnote記事です。

最初に答えを書いておきます。

一応、微分積分学の教科書に定番の不定積分の表が掲載されており、そこには上記の積分の結果も以下のように記されています。

(1) $${\int \frac{1}{\sqrt{1+x^2}}dx=\log(x+\sqrt{1+x^2})+C(積分定数)}$$

(2) $${\int \sqrt{1+x^2}dx=\frac{1}{2}x\sqrt{1+x^2}+\frac{1}{2}\log(x+\sqrt{1+x^2})+C(積分定数)}$$

ぶっちゃけ私はこの積分をちゃんと計算したことがありませんでした。いつも微分積分の教科書に載っている表を見て、せいぜい微分してみて本当に正しいか確認するくらいでした。

ということで、上記の正統派の置換積分を生まれて初めてやってみました。普通に計算はできるので、その計算過程をここに書くのは省略します。

やってみると計算自体はちょっと面倒くさいです。というより、
$${x+\sqrt{1+x^2}=t}$$
と置くことを初見では思いつきません。

そこで正統派の置換積分を使わない方法はないだろうかと考えた結果、一つ方法を見つけたので、それを次節以降に記します。

置換積分を使わずに(1)を計算する方法

先にこちらの積分を実行します。被積分関数が分数$${\frac{1}{\sqrt{1+x^2}}}$$になっているので、こっちの方が難しいのではないかと思ってしまうのですが、実はこちらの方が(2)より簡単です。

まずは
$${(\sqrt{1+x^2})'=\frac{x}{\sqrt{1+x^2}}}$$ ①
となることに注目します。
右辺が$${\frac{1}{\sqrt{1+x^2}}}$$に近い形になっているので、なんとかして
$${\frac{1}{\sqrt{1+x^2}}=(何かの関数)'}$$となるように式変形できれば、その「何かの関数」こそが求めるべき積分結果です。

ということで、その式変形は以下です。

$${(\sqrt{1+x^2})'+1=\frac{x}{\sqrt{1+x^2}}+1}$$ (①の両辺に1を足した
$${(\sqrt{1+x^2}+x)'=\frac{x+\sqrt{1+x^2}}{\sqrt{1+x^2}}}$$ (1を微分の中、分数の分子に入れた
$${\frac{(\sqrt{1+x^2}+x)'}{x+\sqrt{1+x^2}}=\frac{1}{\sqrt{1+x^2}}}$$ (右辺の分子を左辺の分母に移した)
$${\frac{1}{\sqrt{1+x^2}}=\frac{(x+\sqrt{1+x^2})'}{x+\sqrt{1+x^2}}}$$ (左辺と右辺を入れ替えて、整えた)
$${\frac{1}{\sqrt{1+x^2}}=\{\log(x+\sqrt{1+x^2})\}'}$$ 

ということで目的は達せられ、
$${\int\frac{1}{\sqrt{1+x^2}}=\log(x+\sqrt{1+x^2})+C(積分定数)}$$
となることが分かりました。

上記の計算過程でトリッキーだけど重要だったのは、「1を微分の中、分数の分子に入れる」だと思います。それらは操作としては異なりますが、結果として$${x+\sqrt{1+x^2}}$$という同じ関数形が出てくるおかげで積分が実行できました。

置換積分を使わずに(2)を計算する方法

置換積分は使いませんが、部分積分は使います。

$${\int \sqrt{1+x^2}dx}$$
$${=\int x'\sqrt{1+x^2}dx}$$
$${=x\sqrt{1+x^2}-\int \frac{x^2}{\sqrt{1+x^2}}dx}$$(←この2項目の積分をトリッキーに変形します)
$${=x\sqrt{1+x^2}-\int \frac{1+x^2-1}{\sqrt{1+x^2}}dx}$$
$${=x\sqrt{1+x^2}-\int \frac{1+x^2}{\sqrt{1+x^2}}dx+\int \frac{1}{\sqrt{1+x^2}}dx}$$
$${=x\sqrt{1+x^2}-\int \sqrt{1+x^2}dx+\int \frac{1}{\sqrt{1+x^2}}dx}$$(←2項目に元の積分が出てきた!)

上記のように若干トリッキーな変形を行うと、元の積分がマイナス符号で出てくるので、以下のように計算できます。

$${2\int \sqrt{1+x^2}dx}$$
$${=x\sqrt{1+x^2}+\int \frac{1}{\sqrt{1+x^2}}dx}$$(2項目は(1)で計算済み)
$${=x\sqrt{1+x^2}+\log(x+\sqrt{1+x^2})+C(積分定数)}$$

よって、
$${\int \sqrt{1+x^2}dx=\frac{1}{2}x\sqrt{1+x^2}+\frac{1}{2}\log(x+\sqrt{1+x^2})+C(積分定数)}$$
です。

おわりに

置換積分を使わずに計算ができました。結構トリッキーで計算が大変じゃないかと言われそうです。しかし多分私が置換積分が苦手なので、式変形だけで乗り切ってしまう今回の方法は気に入っています。

なお、正統派な解法である置換積分は、双曲線のパラメータ表示による置換であり、その点を考察することも重要であるということは付言しておきます。

(おしまい)




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