山田くん
30代のとき、六本木の階段の途中にあったバーのママから「私、もうすぐ50歳なの」と聞いて、その「老い」のニュアンスがブレンドされた年齢にこの人がなってしまうことに、何か軽いショックを受けた。
自分がその年齢を通り越して「おじいちゃん」のニュアンスがブレンドされた60歳という年齢に差しかかった今、小学校・中学校の同窓会があった。
いわゆる「還暦同窓会」だ。
そこで、私はこう呼ばれた。
山田くん?
長年、そんな呼び方をされていなかったので、ちょっとドキリとする。
そうか。男子は私を「山田」と呼び捨てにするが、女子は「山田くん」と呼んでいたのだ。
私は1月生まれなので、まだ59だが、その同級生女子は「私は、もう60になったよ」と言った。
60になる勇気が出た。
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