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#029 私の唯一無二の場所 | 古性のちの頭の中

今、私は岡山県の瀬戸内海の側で暮らしている。と話すとよく初対面の人に「なんで岡山県を選んだの?」と聞かれる。

引っ越してきたのは約1年半前。この土地には、縁もゆかりもない。
こうして書きながら「あーこんなにも経ってしまったのか」と自分でも驚いている。

私の街は何もない。
「何もない」と言ってしまえば語弊があるかもしれないけれど、観光客は少ないし人口も少ない。
”消滅可能性都市” とさえ言われてしまっている。すこし話がそれるけれど、私はこの言葉にそこまでネガティブを感じない。
それは例えば都市が消えてしまったとしても、本当に大切なものと言うのは形ではなく、きちんと記憶として引き継がれていくものだし、消えてしまうものことでそれが鮮やかになったりもする。
それはなんだかもう二度と戻ることもできない、遠い遠い学生時代の青春のような一瞬の光のような思い出すだけでもくすぐったくなるようなそんな宝物のような瞬間と似ているのかもしれない。

「この街の良いところは?」と聞かれたら必ず答えるのが、一人ぼっちにしてくれる所、と私は答える。
それは人口が少ないからではなくて、この街の性質だと思う。港町だからだろうか。外から来るもの拒まず去るもの追わない。
良い意味で群れず、良い意味で自立し、わが道を行く人がここには集まる。

きっとそんな私たちがみんなで何かを作り上げると、とんでもない力になるのではないか、と街の仲良しのカフェのオーナーとぽつりぽつり話したりもする。それが現実になるかどうか置いておいて、私は結構この放っといてくれる雰囲気が気に入ってこの町に住み着いている。


一人ぼっちになると言うのは実は難しい。例えば1人でカフェに行ったとしても、周りにどう思われてるのかなとつい周囲が気になってしまって、目の前の飲み物にも、自分の頭の中にも集中できなかったりする。
そうすると、結局一人ぼっちになった気がするのは気のせいで。境界線が曖昧なままになる。
そしてまた、日々に忙しい日々に飲まれてしまって。
あやふやになってしまって。

この話は1本前のエッセイでも書いたけれど、1人の時間をきちんと自分のために愛せる人は強い。
私のなりたいのはそんな大人だ。

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