10月19日にcakesで公開された記事と、その後の対応等について私が今考えていること

私は今現在自分の体調の問題で連載を一時お休みさせていただいている身なので、表題の件について言及するのは控えた方がいいかもしれないと感じていました。
しかし、cakesという媒体にクリエイターとして参加して、小さな影響力かもしれませんが4年間連載している漫画家として、これからどういう風にcakesやnoteと向き合っていくか、ほぼ自己満足な内容ですがこのnoteを記そうと思いました。

cakesが「ヤバイ媒体」となってしまうことに無力感を感じる

2016年からcakesで「ヲタ夫婦」というエッセイを連載をさせて頂いて、初めてのエッセイ連載だったので拙い部分があるとは思うけれど、自分の実生活を必要以上に誇張させたりバズりやすく露悪的にしないよう、自己満足ではあるけれど100話以上の連載を通して誠実にエッセイを描いてきたつもりでした。そのことを、cakesの編集さんも理解して、私がその趣旨からずれてしまうようなネームを提出した時は、丁寧に取り下げを提案してくださったこともありました。
私はそういうcakesの編集姿勢を信頼していたので、今回のような記事が出てしまったことはとても衝撃がありました。

cakesの編集部は悪い人ばかりじゃない、という趣旨のことが言いたいのではありません。今回炎上の原因となった記事に対しては、当たり前のことではありますが私も一女性として、似たような経験をしたことがあったので疑問を感じました。
その疑問を編集部内の誰かが感じることなく、多くの人を傷つけてしまった記事が世の中に発信されてしまったことは悲しく、許しがたく思います。

同じように許しがたく感じ、cakesに失望する読者の方をSNSで見かけ、その気持ちに共感する一方で、今まで自分が媒体を信じて注いできた作品への誠実さが一瞬で無意味なものになってしまったかのような無力感を感じました。

そんな折、同じcakesで連載している牧村朝子さんの記事を読んで、そのように感じている作家は私だけではなかったんだなと感じ、私自身もcakesという媒体に対して心に何かを抱えたまま作品だけで発信するのではなく、これから良くなっていくよう声を上げたいと思い、この記事を書いています。









人生相談でバズりたい欲望 | ハッピーエンドに殺されない | 牧村朝子 | cakes(ケイクス)
先日、cakes編集部の認識不足や当事者への配慮の不足によって、たくさんの方々を傷つけてしまいました。このことについて、牧
cakes.mu



noteに対する疑問

cakesで今回の記事が炎上してしまった背景には、間接的な要因ではありますが、noteの運営に関して疑問に感じる人が増えてきていることが背景としてあるのではと感じています。

ここのところ、私の観測範囲ではありますが、cakesと同じnote株式会社の運営するnoteの利用を辞める方が増えてきたように感じます。

私がnoteに対して感じている疑問点は、以下の通りです。

今まで何年間も限定的な有料記事で性描写のある漫画を掲載していた漫画家さんが、今年になって唐突にアダルトコンテンツとして停止勧告を受け、作品を公開できなくなったこと。その作家さんが登録して定期的に公開を始めたのは何年も前なのに、なぜそのタイミングでの勧告なのか不明であり、参加した作家さんに負担をかけていること。また、アダルトコンテンツの基準が不明なこと。
IPアドレスがnote上で確認できてしまう不具合について、CXOの深津さんの発言やnote社からの発表が「IPアドレスだけで個人を特定できるわけではない」という趣旨の発信をしたこと
スマートフォンアプリの「おすすめ」欄に表示されるおすすめ記事に、「お金を持ったビジネスマン受けの良さそうな記事」「尖ったコンセプト・テーマを扱ったバズりやすい漫画」「ライフハック系記事やポエム」が多く表示されるようになり、「だれもが創作を楽しんで続けられ、安心できる雰囲気や、多様性を大切にしている」コンセプトを感じにくくなった
個人クリエイターが公式サイトとして公式noteを使える機能が実質なくなり、企業・法人向けのnote proにサービス変更し、個人クリエイターに対する対応・レスポンスも非常に悪かったこと

私の個人的な所感ではありますが、多くの人が指摘しているように、IPアドレス漏洩に対するリスクコミュニケーションはそれで良かったのか?と大きく疑問に感じましたし、法人利用を推進することで個人クリエイターに間口を広げていた姿勢やリソースは大きく削って、よりビジネス向け・バズりやすいコンテンツ向けに最適化したように感じます。

アダルトコンテンツに関してはおそらく内規があると思いますので、表に出せない基準があるのでしょうが、それならなぜ登録時に勧告できないのか。ゾーニング機能を使って公開できる記事とそうでない記事の基準が明確でないこともクリエイターファーストではないと感じます。

「だれもが創作を楽しんで続けられ、安心できる雰囲気や、多様性を大切にしている」というコンセプトに期待してnoteを使い始めたので、そのコンセプトが形骸化しつつあることに疑問を感じています。

今後私がcakesとnoteとどのように向き合っていくか

cakesで炎上の原因となった記事と、その対応について、私は疑問に感じることも多くありました。noteに対する疑問もあります。

ただ、note株式会社のサービスを即刻キャンセルするほど、私はただの利用者という立場ではなくて、note株式会社の媒体に対して、小さな存在ではありますが、媒体のカラーを作る作家として関わってきたという時間と作品の積み重ねがあります。そのことに責任を持ちたいと思いました。

note株式会社が今後も私を作家として掲載させ続けられるのであれば、私は今回のことを受けて、noteやcakesで自分なりに発信を続けていって、少しでも何かを変えていきたいと考えています。

そして何より、自分自身も間違って人を傷つける可能性のある一人の人間だということに目をそらさずにいたいです。

今回の記事のように人を傷つけてしまう内容を書いていたのは私かもしれない、という自戒と学びを忘れずにいたいです。

cakes編集部は、再発防止策を発表しており、編集長の大熊さんも、CEOの加藤さんも会社として再発防止に取り組み、学んでいきたいと発信しています。

私も今回のことで多くを学んでいきたいと一作家として感じる出来事でした。note株式会社の学んでいきたいという姿勢が私と共有できるものであれば、まだここで作品の発表をしていきたいと思います。

その歩みや考えの方向が、編集部と大きくずれてしまった時は、また一人でどこかで作品を作っていきたいと思います。

最後に軽い近況報告ですが、最近は生活リズムを整えるために、医療機関を利用したり、通院しながら色々工夫をして日々を過ごしています。
また、今の自分の健康状態や、コロナ禍における我が家の生活の変化を考えて、ライフスタイルを大きく変えようと思っています。
できるだけ早く復帰したいと考えていますが、今は生活を整えることに専念したく、また作画環境も変えている最中なので、本格的なお仕事復帰はもう少し時間を頂けると幸いです。

いただいたサポートはすべて原稿製作・設備保守・資材投資・スタッフへの外注費として作品をつくるために使用させて頂きます。