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詩集 動詞 Ⅱ

7
主に身体に関わる動詞をテーマにした散文詩集の2集目です。
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#ポエム

踊る

踊る、踊る、独りで 星が見ている、静かな夜に 足跡は風に消され、 月の光だけが僕のパートナー 回る、回る、影と共に 悲しみはリズムを刻む 笑顔の記憶、遠く霞んで 踊り続ける、止まらないメロディー でも、心は静かに泣いている 失ったものの重さに 踊る、踊る、独りで 星も月も、見守るだけ 終わらない夜に願いを込めて 踊り続ける、一人きりで 踊ることで、忘れようとしても 心の奥、いつも悲しい音楽が流れる 踊る、踊る、独りで 星が見ている、静かな夜に 足跡は風に消され、 月の

洗う

空を見上げる、雲は流れる 手には泥だらけの昨日、握りしめ 水は冷たく、時間は流れる 洗う、洗い流す、過ぎた日々を 泡になって消える思い出たち でも、どうして、消えないの? この手の中の、焦りの色 石鹸の香り、純粋な白 きれいになれると信じていた でも、ほら、まだ汚れが 指の隙間に、隠れている 水滴は落ちる、時計は進む でも、この心は、まだ汚れたまま 「もう時間だよ」と、誰かが言う でも、まだ洗い足りないのに 洗い続ける、止まらない水 でも、洗い流せないのは、なぜ? 昨

座る

椅子に身をまかせ、ただ佇む 静かな部屋の、一隅で 光は窓からそっと差し込み、 影が踊る 思考は流れる川のように、 止まることを知らず、 私はただ見つめる 過ぎ去る時の、静かな流れを 壁に掛かる時計の針が、 静かに時を刻む 私の心は、重い石のように 地に根を下ろす どこか遠くを思い描きながら、 ここにいる自分を感じる 動かない体、穏やかな息吹 世界は回り続けるが、 私はただ、ここにいる #詩的散文 #詩文 #思索 #思考 #日記 #エッセイ #詩 #創作 #ポエム #詞

走る

走る、息が切れるまで。 街の灯りは遠ざかり、 星も見えない夜に。 足音だけが響く、 空虚な道。 走る、どこへ? 追いかけるものは、もう見えない。 失くした夢、消えた希望。 風が冷たく、 心も凍りつく。 走る、止まれない。 止まれば、思い出すから。 喪失の重さ、孤独の深さ。 でも、いつかは、 息を整えなければ。 走る、逃げるように。 けれど、追いつけない何かを求めて。 #詩的散文 #詩文 #思索 #思考 #日記 #エッセイ #詩 #創作 #ポエム #詞 #随想 #

抱く

深夜の街、灯りが震えて、 月は遠く、星も揺れる。 アスファルトに映る影、 一つ、また一つ、静かに寄り添う。 言葉はいらない、声もない、 ただ、この温もりを感じて。 心の奥、何かが震える、 見えない糸で結ばれた想い。 忘れられない夢のように、 淡く、切なく、ひっそりと。 時は流れる、人は過ぎ去る、 でも、この感触だけは消えない。 折れた翼、震える指先、 ひとつひとつが物語を紡ぐ。 ああ、夜が明ける前に、 もう一度、君を感じたい。 #詩的散文 #詩文 #思索 #思

噛む

歯と歯の間で、 世界は小さくなる。 一つのりんご、 ひとかけらの時間。 言葉を失い、 ただ感覚だけが 口の中で踊る。 思い出は、硬いアメ玉。 噛みしめる度、甘さが溢れ、 時には、苦い核に出くわす。 噛むごとに、愛が深まる。 優しく、強く、終わりなき物語を紡ぐ。 君を思い、りんごを噛む。 静かな午後、風が吹き抜ける窓辺で、 ひとつの物語が、また始まる。 #詩的散文 #詩文 #思索 #思考 #日記 #エッセイ #詩 #創作 #ポエム #詞 #随想 #身体

読む

読む。 静かな海に沈むように 言葉の波間を漂う。 紙の上で、 僕は小さな船。 風は言葉、 波は感情、 その一つ一つが導く 無限の世界へ。 読む。 見え隠れする鏡。 文字に隠された、 僕の影を追う旅。 喜びも悲しみも、 怒りも静けさも、 全てが混じり合って 心の中で響く。 言葉の中で、 僕は旅人。 知らない土地を歩き、 未知に触れ、 触れた鏡を割る。 読む。 世界への扉。 開けば開くだけ 無限の物語が広がっている。 静かな海に沈むように、 僕は読む。 波間をただ、ひた