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詩集 動詞 Ⅰ

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主に身体に関わる動詞をテーマにした散文詩集です。
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#日記

指す

遠くに伸びる影、 指先から始まる物語。 静かな朝、一筋の光に向かって、 優しく、しかし確かに。 小さな草原で、 子どもたちが遊ぶ方へ、 希望を込めた一振り。 未来への道しるべ、そっと。 夜空に輝く星、 遥か彼方を示す。 一点の明かりに心を寄せ、 静かなる旅の指針。 言葉にならない想い、 目に見えぬ絆。 この手で示す、一つの世界、 繋がる心、繋がる時。 指は語る、黙っていても、 心の声、静かに。 #詩的散文 #詩文 #思索 #思考 #日記 #エッセイ #詩 #創作 #

折る

折る。皮膚の皺をたどる。 膝を折り、思索の重みに沈む。 指を折り、時の流れを数える。 背を折り、重圧に頭を垂れる。 首を折り、夢見た未来を見上げる。 肘を折り、過ぎ去りし日々を抱きしめる。 腕を折り、起きようと身を起こす。 体を折る。涙の重さに腹を見る。 折る。対岸に鏡を見る。 膝を折り、時の河を渡る。 指の折り、約束を交わす。 背中を折り、影に寄り添う。 腕を折り、重さを受ける。 肘を折り、目線を合わせる。 首を折り、口づけに委ねる。 折る。涙の重さ、笑顔の輝き。

磨く

磨く、絶え間なく、 星のように小さな光を隠し持つ、 手のひらに映るは、無言の物語。 静かに、ただ静かに、 光を求める旅は、 磨くこと自体が旅路となり、 輝きは遠のく幻。 水の滴は石を滑る、 時間と共に形を変え、 けれど石は、ただ石のままで、 輝く夢、遥か彼方。 風はささやく、 「磨け、磨け、さらに磨け」、 だが、手はもはや光を求めず、 磨く行為に満ちた、沈黙の世界。 磨くことの意味を忘れ、 ただ磨くことに没頭し、 失われた目的のかけらを、 磨き抜くことで探し続ける。

見る

窓の外、雲が流れ 灰色の世界が、静かに息をしている 街の灯りがぼんやりと霞んで、 私の心に重くのしかかる 雨が降り、滴がガラスを伝う それぞれの雫が、砕け散る夢のよう 言葉を失くした影が、壁に映り 沈黙が、空間を支配する 深い夜の中で、孤独がささやく 忘れられた記憶、色あせた笑顔 目を閉じれば、遠くの歌声 けれど、触れることはできない 時間はゆっくりと流れ、夜が明ける 新しい朝が来るけれど、心は変わらず 視界の隅に残る、ぼやけた光 それでも、歩き続けるしかない #詩的

泣く

小さな雨滴が、 窓ガラスをトントンと叩く。 それは、空の涙、 地球の小さなため息。 子猫が鳴く、 まるで小さな波のよう。 それは、世界の優しさ、 心の中の小さな歌。 公園のベンチに座り、 見上げる空には、 雲が泣いている、 その後にかかる虹。 泣くこと。 喜びの前奏曲、 悲しみの終章、 人生の小さな一節。 泣こう。 心のままに。 それぞれの涙には、 かならず明日が 隠れている。 #詩的散文 #詩文 #思索 #思考 #日記 #エッセイ #詩 #創作 #ポエム #詞 #

運ぶ

運ぶ、空の青に。 重さを知らぬ風のように、 そっと、ひそやかに。 影は日差しを運び、 時は思い出を運ぶ。 すべては流れる川のよう。 言葉は心を運び、 瞳は秘密を運ぶ。 静かなる夜の帳の下で。 運ぶ、この手に見えない明日を。 そっと、ひそやかに。 遠くへ行く鳥たちのように、 運ぶ。 ひたすらに、 静かに。 #詩的散文 #詩文 #思索 #思考 #日記 #エッセイ #詩 #創作 #ポエム #詞 #随想 #身体

拭く

小さな手、 汚れた窓に触れる。 拭く、ゆっくりと 透明な夢を見るように。 泥だらけのひざ、 雨上がりの道。 拭く、そっと 過去の涙を乾かすように。 夕焼けの光、 疲れた顔に落ちる。 拭く、静かに 明日への希望を描くように。 私を映す鏡、 水滴の跡が細かい。 拭く、毎日 自分の心を磨くように。 #詩的散文 #詩文 #思索 #思考 #日記 #エッセイ #詩 #創作 #ポエム #詞 #随想 #身体

握る

空を掴むように、 影を追うように、 見えないものを手繰り寄せる。 風の中、ひそやかに、 指先に秘めた温もり、 消えゆく前の、静かな叫び。 密やかなるこの絆、 強くすればするほど、 遠ざかる感触。 透明な糸に繋がれた、 心と心、 触れれば触れるほど、 霞んでゆく輪郭。 そして、やがて、 何も感じなくなるその時、 手の中に残るのは、 ただの影。 #詩的散文 #詩文 #思索 #思考 #日記 #エッセイ #詩 #創作 #ポエム #詞 #随想 #身体

立つ

ただ立つことに意味を見出す、 空に向かい、地に根を張るように。 風が吹けば揺れる、それでもなお、 立ち続ける姿は、静かな抵抗。 小さな草花も、高い山々も、 みな同じ姿勢で世界を見つめる。 存在を宣言すること、 自分の場所を、 この世界に示すこと。 時には強く、時には優しく、 立つことで、自分を表現する。 夢見る子どもも、年老いた賢者も、 みな立ち、歩みを進める。 ただ立つことに美を見出す、 人生の道のりを、一歩一歩、歩んでゆく。 #詩的散文 #詩文 #