見出し画像

初速No.1の衝撃 『琴浦さん』


2013年1月──。

冬アニメの放送が始まるこのシーズン、第1話放送後に話題を掻っ攫った作品

それが『琴浦さん』でございます。

画像3

2013年冬といえば、現在も人気を誇るアイドルアニメ『ラブライブ!』や京アニ制作のご当地商店街アニメ『たまこまーけっと』、エイトビットが誇る登山アニメ『ヤマノススメ』といった人気タイトルの放送が開始したシーズンでした。

そんな人気作品を差し置いて…と思われるかもしれませんが、それほどまでに当時『琴浦さん』第1話がショッキングだったのです。



当時大学生の私は、某予備校でチューターのアルバイトをしており、ある大学院生の先輩と親交がありました。

もはや言うまでもないですが、この先輩と仲良くなったきっかけは「アニメ」です。先輩は普段あまり饒舌ではなかったのですが、アニメの話になると熱弁を繰り広げる…古参の風格すら感じる先輩からは、ある種のオーラを感じていました。そして何より私は、この先輩から様々なアニメ作品を教えてもらったものです。


2013年の年明け早々、先輩とシフトが被った私は「今期のアニメを少しずつ見始めたんですけど、何が面白いですかね?」と彼に尋ねたところ、次のように返答がありました。


「それはまあ『琴浦さん』だろう。ダークホースで間違いない。」

画像3



(この人、また逆張りしてるなあ。)


当時まだ『琴浦さん』をチェックしていなかった私は、このように考えていました。
この後、第1話の「衝撃」を味わうとも知らずに。


何がそんなに話題を呼んだのかと言えば、間違いなく「絶望感」だったと思います。


『琴浦さん』の主役である琴浦春香は「人の心が読める」超能力を持った少女です。

一般的に超能力はポジティブな方向で描かれがちですが、『琴浦さん』の場合、超能力を持ったが故の哀しさに満ちています。


『琴浦さん』第1話から、琴浦さんを精神的にドン底まで叩き落とします。Aパートが終わるまでのシリアス度は、数あるアニメ作品の中でも随一だったと言えるでしょう。第1話時点で「鬱アニメ」と称された所以でございます。

画像4


一方で、可愛いデザインのキャラクター(いわゆる「萌えキャラ」)を精神的に絶望の淵まで追い詰める作品が珍しいというわけではないのです。

実際に『琴浦さん』の約2年前に放送した『魔法少女 まどか☆マギカ』でも見られた手法であり、このような手法が取られた作品は『琴浦さん』以前にもあったように思います(特にPCゲーム作品には多く見られました)。


しかしながら、琴浦さんのような萌えキャラを第1話のAパートから完膚なきまで叩きのめした作品ってそうそう無かったんじゃないでしょうか。

何より、負の感情を孕んだ言葉が暴力的で鋭く、そんな言葉を浴びせられる琴浦さんを見ていると、こちらも心を抉られます。


『琴浦さん』のことを語るうえで第1話は外せないのですが、第2話以降も十分濃いシナリオが用意されていました。

超能力と人間関係を絡めて話が展開していく中で親子愛友情、そして恋愛といったテーマがあり、決して第1話で話題を狙ったような「釣り」アニメではなかったなと思います。

また、最後まで見てもらえれば分かるかと思いますが、『琴浦さん』は鬱アニメと称されるようなものではなく、人の温かさを感じるアニメだということを付け加えておきます。


私の同年代がすっかり深夜アニメを見なくなってしまった現在、『琴浦さん』を推していたあの先輩が今も深夜アニメを見続けているのか…

そのことが少し気になりますが、疎遠になってしまった以上、それこそ超能力でもない限りは知り得ない話なのかもしれません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?