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鮭といくらと893と「ウマ娘」


アニメファンとは「監督があの人だから」とか「制作会社があの会社だから」などと口にし、制作サイドの人間のことを知った気になってマウントを取る…そういう生き物でございます。まあ、多少偏見は入っていますが。

そんな私も一アニメファンとして、好きな監督を1人挙げるとすれば及川啓監督は外せないところでございます。

AIC出身。1996年、『ウルトラマン超闘士激伝』の動画を手掛けて以来、『HUNTER×HUNTER』や『サクラ大戦』などの原画を担当してきた。2004年には『花右京メイド隊 La Verite』第8話で絵コンテを手掛け、以後演出家としてufotable、AICなどを中心に活動。2009年、『みなみけ おかえり』で監督デビュー。2010年以降はfeel.を中心に監督、演出家として活動している。
2018年の春クール(4月 - 6月)に放送された、『ウマ娘 プリティーダービー』『ヒナまつり』の2作品で監督を務め、さらに、『ウマ娘 プリティーダービー』では全13話のうち6本と第7話のED、『ヒナまつり』では全12話とOP、第6話のEDの絵コンテも担当した。

──「及川啓」-Wikipedia より引用


以上が及川監督の経歴となりますが、主に制作会社Feel.の作品で活躍されており

『みなみけ おかえり』
『俺の青春ラブコメはまちがっている。続』
『ヒナまつり』
『ウマ娘 プリティーダービー』

などの人気作品に監督として入っておられる方です。
特に実質2期と言える『みなみけ おかえり』の功績は大きいものだったと言えます。


及川監督の持ち味は、何と言っても遊び心のある「ギャグ」でしょう。
『ウマ娘 プリティーダービー』に関するインタビューではこのように仰っています。

基本的に僕のギャグはダチョウ倶楽部さんの影響を受けているんです。ダチョウ倶楽部さんから勉強させていただいてます。

これは、ウマ娘※ たちがレースシーンで追い抜かれるときに決まって発する「もう無理〜」というセリフについてのコメントでした。

※ウマ娘 … 異世界(現実世界)の競走馬の名前と魂を受け継いで生まれてきた少女たち。外見は腰から馬のような尻尾が生え、馬のような耳が頭頂部付近にある。超人的な走力を有するが、それ以外は普通の女の子である。(Wikipediaより引用)

レースシーンが始まると毎度登場するセリフなんですが、何度も繰り返される点においては、お笑いでいう天丼なんでしょうね。それを見るのが毎回楽しみになってしまうし、実際に観ているとクセになる。ダチョウ倶楽部のお笑いがバックボーンにあるのも頷けます。

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他にも、ウマ娘たちがご飯を沢山食べて寝たときは「もう食べられないよ〜」と寝言を発するのがお決まりだったりします。

オンエアされた以上にこのような決まり文句を盛り込んでいたようです、及川監督は。カットされることが前提だったみたいですが。

このようなセリフだけでなく、視覚面でも視聴者を楽しませるアイデアに富んだ方でもあります。

例えば、お腹がいっぱいになったときのボテ腹や、馬の耳まで届くような長い電話といったアイデアにユーモアを感じます。
普通、萌えキャラにこんなお腹はさせません。そして従来の擬人化作品では、動物の耳はただの飾りになるのがオチでした。

「満腹になればお腹が出る」「馬の耳で聞き取る」という現実に即したソリューションを出しつつ、そこにアニメらしい描写を加える。だから、こうしたギャグの中にもきっちり整合性がある訳です。

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また、及川監督が『ウマ娘 プリティーダービー』と同時期に監督を務めていたサイキックヤクザアニメ『ヒナまつり』にも及川監督ならではのギャグアイデアが垣間見られます。

キャラクターがダメージを負った時に「アイッター!」と発するのは漫画にはない表現であり、アニメオリジナルと言えるでしょう。

メインのキャラクターが「アイッター!」と発する機会も当然あるのですが、なんと言ってもモブキャラが発する回数の方が断然多い。『ウマ娘 プリティーダービー』で登場する「もう無理〜」もレースで追い抜かれるモブキャラが発するセリフとなっており、モブキャラをギャグ要員としてフル活用するのも及川監督の特徴なのかもしれません。

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また、及川監督の作品は「ギャグ」だけでなく、泣けてしまうような展開も多いのです。

あえて内容には触れませんが『ヒナまつり』#6のように、Aパートで思う存分ギャグを披露した後にBパートで泣ける展開を持ってくる。

原作ありきと言えばそうなのですが、それを唐突に感じないのは、及川監督がサブキャラクターの色を出すのに長けているからだと思うのです。サブキャラクターの感情がメインキャラクターへ還元されていく描写が上手いとでも言うのでしょうか。
『ヒナまつり』#6でいうところのホームレスや中華料理店「来来軒」の林夫妻といったサブキャラに色があるからこそ、メインキャラクターのアンズが想いを吐露するところで感情移入できてしまう節があります。

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これは現在放送中の『ウマ娘 プリティーダービー Season2』#2でも感じた部分で、菊花賞で走るサブキャラのウマ娘達が「(トウカイ)テイオーがいなかったから、なんて言わせない!」と懸命に走る姿に、トウカイテイオーの感情が合わさることで見事に泣けてしまうのです。


今回は及川監督作品をピックアップした訳ですが、映画やドラマと同じように、アニメ作品においてもやはり監督の特色が付いて回るものです。特に『ウマ娘』のようなアニメオリジナルの脚本であれば、それが顕著に現れることでしょう。
もちろんアニメ制作はチームで行うものなので、監督1人で全部が決まるというものではないでしょうが。

「笑いあり、涙あり」そして「萌えあり」の及川監督作品には、今後とも注目していきたい所存でございます。


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