『心霊マスターテープ』最終話感想
2020年3月28日(土)に最終回となる第6話が放送された『心霊マスターテープ』に対しての想いです。
ネタバレ前提ですのでまだの方はアマプラでご視聴ください。
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エンタメ~テレ放送後に勢いで書いたが、そろそろアマプラ勢も視聴が終わったであろうからネタバレ込みの感想を表に出してもいいかなと。
『心霊マスターテープ』
日本初の心霊ディレクター茨木竜夫の心霊世界への肥大した憧憬が生み出し続けた悲劇、そしてその意思を継承してしまった岩澤監督が今も霊を映すために彷徨い続けるという今作のラスト。
心霊業界に携わる作り手と消費者、「恐怖」を追い求め続けた者たちが辿るかもしれないその末路には息を飲んだ。
ドラマとして、ホラーとしては、終わりであり続いてもゆくあのラストは素晴らしい物だったろう。
そしてこれは確かに心霊ディレクターを撮った物語ではあった。
しかし個人的には、そこには物足りなさもある。
群像劇として数々の心霊ディレクターやアシスタントが登場し描かれた中で、ではあえて主役と言えるのは誰かと言えば、発端である日本初の心霊ディレクターである茨木竜夫、そしてその遺志を継ぎ最悪日本最後の心霊ディレクターとなってしまうかもしれない岩澤宏樹監督、もしくはこの大きな事件を追う事で目覚ましい成長を見せたアシスタント涼本奈緒らが挙げられるであろう。
だが他に陰の主役であり真の主役が居たことには視聴した方には分かっているだろう。
そう、寺内康太郎監督である。
上記のアマプラのリンクを辿っていただけば便宜上とは言え「主演:寺内康太郎」ともなっている。
何もこれは自分が寺内監督ファンだからの身びいきとして言っているだけではない。
今作のテーマである「心霊ディレクター」、それを追い続けた「心霊ディレクター」がカメラのこちら側に居続けたのを自分たちは知っている。
他のディレクターたちは基本的に心霊、心霊ビデオを追い続けてきた。
しかしその中で作中世界の「寺内康太郎」はそんな心霊ディレクターたちを追い続けてきたのだ。
だからこそ、その「心霊ディレクター:寺内康太郎」という存在が実際に茨木・梅沢の想いを受けてどう感じているのかが気になるというか、その視点が欠けているのではないかと感じてしまう点が自分としては物足りなさに繋がっている。
自身が表にあまり出ない形を貫く事で、その考えを茨木に代弁させてでもいるのだろうかと考えたが、コメンタリー放送にてそれは否定していた。
であるならば、茨木・梅沢の妄執や中村監督が語った価値観とは違うものを、寺内監督は持っているはずなのだ。
少なくともあの世界での寺内監督は。
故に、心霊ビデオを愛した寺内監督なら継承された怨念の存在を受けてあの世界で動かなかったはずがないのだという思いがある。
心霊ビデオだけでなくそこに携わる人たちもひっくるめて大事にしている寺内監督だからこそ、あの身勝手な撮影手法に、失われた盟友たちへの弔いの念などが彼を強く突き動かすはずだと。
もちろんドラマとしてはそこを描くのはきっと蛇足となってしまうのだろうし、そこは視聴者に感じてもらうべきものであってあえて描くものではないと考えてらっしゃるのかもしれない。
何よりも今回はフィクションで監督という立場で、念願であった心霊業界のオールスターを集めて彼らを題材に作品を作る上で自身をそこまで前に出すはずもないのだが。
そういう観点では寺内監督は梅沢と似たような境遇へ落とされたともいえる。
作中で梅沢は「心霊映像を作りたい。茨木の弔い合戦じゃないけど」と語る。
茨木から受け継いだ「世の中に心霊映像をもっと出したい」という願望、それはそのまま梅沢に殺されて逝った心霊ディレクターたちの想いと合致するものであろう。
茨木の執念と幽霊の作り方は梅沢へと受け継がれ、またその想いはビデオを通して岩澤監督へと継承された。
しかし寺内監督へはその歪んだ撮影方法を除いたよりピュアな「世の中に心霊映像を出したい」という意思だけが受け継がれたはずなのだ。
考えて見て欲しい、誰よりも長くカメラを回し事件を追っていたはずの寺内監督のカメラには最後まで茨木の姿が映らなかったのは何故なのだろう。
岩澤監督は茨木からのメッセージとして「共鳴できる心霊ディレクターに継承してもらいたかった」と寺内監督へ明かす。
それでは寺内監督の前に現れなかったのは共鳴できなかったからなのか?
いや、事故に遭った監督や井川さんは最終的に共鳴しなかっただけでその姿を現してはいた。
であるならば試す迄もなく受け継ぐ資格がないと最初から判断されていたのか?
そこには、茨木のなりふり構わない妄執とは相反する何か、心霊ビデオについての想いが決定的に食い違う何かがあったのだろう。
叶うならば、第6話のコメンタリー配信では、現実世界のテラコーではなく『心霊マスターテープ』の世界で事件を追った「寺内康太郎」としての話も聞きたいものだ。
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