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僕がボイドを送り出した理由

どうぶつの森の住民、ぶっきらぼうでちょっとコワモテのゴリラ、ボイド。

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あつ森を始めて彼が島にやってきたのはまだ4人目という早い段階でした。
かわいいもの好きの自分としては猫やウサギなどベタでもかわいい見た目の住民を揃えたいと思っていたため本来なら選ばないであろう種族。
しかし当時は売地を用意してすぐに離島で勧誘しないとたぬきちが勝手に新しい住民を連れてきてしまう事を知らなかったために翌日には移住が決まってしまっていました。
そうなればこちらの印象としては「ゴリラが勝手に住み着いた!」というマイナスイメージ。
タイミングが来たら追い出してやる気まんまんだったのは仕方がなかったと思っています。

しかしまだまだ新しい住民が増え続ける進行度、引っ越しやキャンプサイトでの交換などは起こらず島での日々は続いていきます。
そして何だかんだ言いながら交流を続ける内に彼が島民であることをいつしか受け入れていました。
大きな体に似合わないペロペロキャンディーを持ち歩く姿、寝床もない武骨な部屋でくつろぐ姿。

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かわいい住民ばかりでなく一人ぐらいは頼れる兄貴的な存在が居たっていいのではないか。
そう考え始めた僕の中にはもう、追い出すぞという気持ちは無くなっていました。
もしも彼が引っ越すと言い出せば、きっと「いかないで」を選ぶのだろうと思っていました。

彼が旅立ちを決めたあの日に起きた悲しい事件があるまでは……

マイレージをこなしつつ木を揺らし、穴を掘り、石を叩き、それらを日課のようにこなすプレイヤーは僕以外にも大勢いる事でしょう。
その日も僕は島内を散策しつついつもの採取作業をしていました。
ボイドとも挨拶をかわしすぐ近くにある木を揺すったその時、木から落ちてきたのは初心者プレイヤー泣かせのハチの巣。
とは言え島民生活が2~3日目ならまだしも、すっかり慣れてきて木を揺らすときは網を持ち必ず正面からを心掛けているためもう焦ることはありません。
ハチ(2500ベル)+ハチの巣(300ベル)でいい収入になる、その程度の感覚です。
ハチの方に自動で向き直ると共に驚きのリアクションを見せた時点でAボタンをポチポチ押し始め、捕まえる準備は万端。
何の問題もないはずでした。
さっき挨拶を交わしたボイドがスタスタと近づき僕の真横に立つまでは。
キャラの硬直が解け本来網を振るうために押されたAボタンはボイドへ話しかける行動へと変更されてしまったのです。
もちろんそれだけであれば不運が重なった痛ましい事故、それで終わるはずでした。
しかし話しかけたボイドが放った言葉に愕然としました。
「そんなのを連れてこっちに来るんじゃねぇ」

……
え?お前の方から近づいてきて邪魔しておいてなんなんそれ?
ポカンとする僕を尻目に彼はさっさと逃げて行きました。
そして会話が終わるとともに、網を振るう間もなくハチに蹂躙される僕。
あの時どんな言葉をかけられていたら暗い感情を抱くことはなかったのでしょうか。
「ここは俺に任せてお前は逃げろ!」
「厄介なヤツに追われてるな、一緒に逃げるぞ!」
いや、そこまでいかなくても
「すまねぇ。見捨てることになっちまうが俺は逃げるぜ」
それぐらいでも良かったはずです。
ただ実際にはこちらを非難する言葉を残して置き去りにされたのです。

それから数十分後でしょうか、モヤモヤを浮かべた彼から島を出る事を考えていると打ち明けられたのは。
その時の僕は「いかないで」を選ぶことが出来なかった。

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そして今日彼は去って行きました。

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広場や僕の家からもそれほど遠くない位置にあった彼の家は売地となって新しい住民を待っています。
今でも彼を憎んでいるということはなく、新しい島で楽しい生活を送ってくれたらと思っています。

それでも

僕がボイドを送り出した理由

や つ あ た り

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