スクリーンショット__29_

境界カメラ 田中花子の動機

前回は田中花子は一体誰なのか?というのを相関図に載った人物の中にいると仮定し、それぞれの立場で〈動機〉と〈手段〉を想定してみた。
ただ、その推理の中で一人重要な人物を抜かしていることに気づいた。
そう『田中花子』自身である。
もちろん『田中花子』という人物は実在しないと考えられている。
だからこそ他の誰かが正体を偽って封筒を送ってきたという線で話を続けていた。
しかし余分なフィルターを外して『田中花子』の取った行動からどの様な〈動機〉が見えるのかを考えるのは無駄ではないかもしれない。

〈手段〉

前回共通して軸にしていた「どのようにしてナリモトが捨てたビデオを拾い、送りつけたか」という点は変わらない。
大よそ考えられる可能性は

1.ナリモト自身→簡単な話

2.ナリモトと親しく近い存在→母ナリモトキョウコ

3.ナリモトと直近に行動をしたり連絡が取れ動向を知れた→ずっと一緒に行動し早く作品を完成させたかったイカワ氏、廃墟の探索前後で連絡を取り合ったであろう青木氏

4.ナリモトをストーキングし後を追うことができた→途中から取材に呼ばれなくなったまま作品が打ち切られたことを知った谷もも、廃墟の探索前後でナリモトをみつけたキリタニ、調査を依頼し進捗を知りたかった投稿者M等多数

5.人知の及ばない力→島田の証言から霊と自由にコンタクトが取れることが分かったキリタニの霊能力
といった物が考えられる。

この様に〈手段〉からは絞り込める要素は見られない。

〈動機〉

問題は〈動機〉からの視点。
『田中花子』の起こした行動で表に出ているのは「VHSとUSBメモリを送る」というもの。
ここで一つの疑問点が出てくる。
USBの中に入っていたのは「ナリモトが取材し編集したビデオ」、本来なら心霊獄門帳に収録される予定だったものだ。
だがこれは調査に行き詰まる様子までは入ってはいるが、その後イカワ氏から提供された「VHSに似たロケーションを探す取材や廃墟の映像」は当然入っていない。
これは当然である。廃墟後イカワ氏と会おうとはせずそれらの映像はナリモトは所持していない。
問題なのは廃墟でナリモトが回していた別カメラの映像も入っていないのだ。
ナリモトの失踪が嘘であると一発で分かる映像、そしてある意味では肝となる幽霊の姿が収められた映像はないのだ。

言い回しの問題かもしれないがナリモトは「VHSとHDDを捨てた」と言った話をしていたように記憶している。
HDDをそのまま送るのではなくその中にあるデータから編集したものだけを何故選んだのであろう。
送料の問題だとしてもメモリに移す映像の取捨選択理由の裏に何か感じ取れないであろうか?

前回の考察で〈動機〉にあった多くは「獄門帳を完成させる」というものであった。
どんな形であれ完成し終了させるのであれば全ての映像を送ればよい。
ナリモトのカメラに霊が映っていたのならばそれは十分にクライマックスとして使え、受け取ったLA側で完成をみれたはずだ。
そうなれば本来その時点で「獄門帳を完成させる」であったならば達成できた。

だが送られたのは取材を途中まで編集した物だけである。
≪境界カメラ≫としてプロジェクトは動き出したが、送られてきた映像だけでは足りずに追加の取材やメンバーへの聞き取りが行われ、調査は難航した結果解決する前に凍結されてしまった。
獄門帳の完成を目指すならあれだけでは足りなかったのだ。
にも関わらず凍結後にテラコーが動くまで田中花子からのアクションはなかった。
例えばその時点でナリモトD失踪事件の調査で浮かんできた人物が田中花子であれば、凍結後にさらなる映像を追加で送り付けることで再始動を図ろうとはしなかったのか?
実際問題イカワ氏は実行こそしなかったものの後日『田中花子』の名を騙りさらに封筒を送る算段をしていました、本物は何故そうしなかったのか。

何故か頑なに廃墟のビデオは見せない。
これらを踏まえると、[何としてでも「獄門帳を完成させる」]といった確固たる姿勢の〈動機〉ではどうにもしっくり来ない。
であれば、[条件をつけた上で「獄門帳を完成させる」]という些か消極的な〈動機〉であればどうであろう?
獄門帳は完成させたいが全てを詳らかにするのは不都合がある場合だ。

ここで浮上するのがkazzさんやごろーさんが提唱するナリモトキョウコ=田中花子説である。
ある日帰ってきたら様子がおかしく、いつしかひきこもって外に出ようとはしなくなった息子。
仕事に関する電話などはかかってくるがそれに応じる気配もない。
そんな中で珍しく外出する息子を案じて後を付けた彼女は公園のゴミ箱に何かを捨てる様子を目にする・・・
息子を立ち直らせたい、仕事上迷惑をかけた相手に申し訳ない。
そんな感情から取材したビデオをLAに送ろうと思い立つ。
だが、一番最後付近に収められた映像では息子が廃墟で何度も取り直し演出(ねつ造)しようとする様子が分かってしまう。
これが人目に付けばそれこそ息子は立ち直れなくなってしまうのではないだろうか?今後仕事ができないのでは?と考え編集されたと思しき映像のみを送ることにした。
途中までの映像で何とか作り切ってはくれないか。
子を想う母親の愛から生まれた存在が『田中花子』である、と。
なるほどもっともであり、凄くありそう。とってもハートフルで嫌いではない。

だがしかしなのである。
これを見ている男性諸君よく考えて欲しい。
思春期だろうがおっさんだろうが、よく情景を思い浮かべてもらいたいのだ。

実家暮らしのおっさんがこっそり家をでて公園のゴミ箱に何かを捨てている。

母親がさらにこっそり後を付けてそれを拾いなおす。

ほら、少し背筋がゾワゾワしてきていませんか?(霊的な物ではない

母親がその中身を見る

無修正と書かれ裸の写真が載ったAVと何やらHDDが入っている

お、恐ろ・・・しい、ですね・・・
さて、母親はそれを見てどう思うでしょうね?
子供思いの優しいお母さんなら何も見なかったことにしてそのまま捨てませんかね?・・・

彼女の様子からは親子仲は良好な様子は窺えるが、仕事の事はあまり話さないと答えていたと思います。
「この無修正ビデオには上書きされた心霊映像が入っているんだよ!」とか説明されてたとは思えないですし、よもや取材映像の入ったHDDを捨てると考えますかね?
しかも遠くから見てたら捨てる直前にVHSのパッケージ外して裏を見たりとかしてるんです。
名残惜しそうにAV捨てるように見えちゃってたら「あっ(察し)」になりはしないのかと。

こうなってくるとナリモトキョウコ説もしっくり来なくなってしまう。
結果としてはナリモトが立ち上がってお母さんには喜ばしい流れなのでナリモトキョウコ説だとハッピーエンドへ向かっているんですけどねぇ。
「VHSやHDDを心霊ビデオや取材映像と知って拾っている」と仮定できる人物でなければならないんです。
もちろん亡くなったAさんであればそれらを知らなくても「無修正ビデオだ!やっほーい!」と拾いますけどね。

さぁ分からなくなってきました。
〈動機〉として可能性の濃厚だった「獄門帳を完成させる」ですが『田中花子』視点で追ってみるとどうにも中途半端な印象がぬぐえません。

であれば青木氏の仮説で出た「キリタニの周りで起こる心霊現象を解決したい」もしくは「心霊現象を広めたい」という〈動機〉なのでしょうか?
それであればやはり最初からVHSパッケージの署名を匂わせたり、それこそ廃墟の映像を見せて「心霊現象はあった」というのを明確にしていないのは不自然に思える。
そもそもパッケージの裏の署名に青木氏が気づいていなければそこを押さなかった理由にはなる。

しかしそうなるとキリタニというキーワードでVHSと廃墟を繋ぐ線が無くなり、VHSだけを送っても自分が設定したゴールへの道筋が薄いのだ。
あのまま行けばイカワ氏が「ナリモトは失踪してない」と言って彼の廃墟映像を渡せば終わってしまう可能性だってあった。
事実、イカワ氏が嘘をついてこじれたものの調査再開がなければ本人が消えることを示唆した自作自演の「ナリモトD失踪事件」のままであり明確な心霊現象には辿り着いていないのである。
であればやはり廃墟映像を見せなければならないのだ。
このことから「キリタニという存在を知らしめたい」「心霊現象を見せたい」という意思も弱く見えてしまう。

それこそ青木氏やキリタニ本人が愉快犯的思想から、与えられたヒントに右往左往しながら解き進むメンバーを見たいというのであれば小出しにする点に理もあるように思えるが・・・
実際の調査メンバーではない彼らの立場からすれば、調査凍結という情報も放送から明確にできず自身に追加調査が来なければ自分から聞くわけにもいかない。
いつ決め手の映像を送るか迷ってるうちにタイミングを逸してしまった可能性もある。
「進展を面白がる」が〈動機〉というのは意外とあり得る?
その程度の理由では馬鹿々々しいと思われるかもしれないが島田がVHSを作った真相も「嫌がらせ」という明かされれば随分とあっけらかんとしたものだった。

さて調査メンバーではないので追加のアクションを起こせなかった云々の流れで同じような立場の人をもう一人。
投稿者M氏である。
彼は≪心霊獄門帳≫においては投稿者として重要なファクターではありましたが、≪境界カメラ≫としてはまったくその存在に脚光を浴びず、いくら調査が進んでも情報が直接伝えられる立場にはありませんでした。
我々視聴者と同じく放送を見てその進行度を知れるだけになっていたのです。

別に、何が何でも彼を犯人に仕立てたい訳ではないのですが、整理すると当てはまってしまう点があるんですよね・・・
まっしーさんと二人で盛り上がったM氏復讐説。
ビデオの謎を依頼したがその裏には父親の死の謎を解明したいという気持ちがあったとしたら。
そもそも復讐したがっているというのが妄想なのでそこから始まる仮定というのは意味がないかもしれませんが少しお付き合いください。

鍵となるのはパッケージの裏の署名です。
もしあれを発見していたらそもそも心霊ビデオとして調査の依頼をせずに、自分で少し調べれば父親の過去の同僚に島田の存在を見つけ出すのは難しくなかったでしょう。
では署名に気づかず〈動機〉が製作者の発見もしくは本当に心霊現象だったのか知りたい場合は?
調査報告を聞こうとしたがナリモトから連絡がなかったり中止を告げられ、直接会おうとした機会にVHSなどを拾った等の仮定を〈手段〉として心霊現象解明の視点から進めます。
廃墟の映像には確かに心霊現象が映っていた。
だとしても彼にとってはあまり意味がないんです。
この場合、彼が知りたいのはVHSの中にある心霊ビデオが真か偽かという点。
イカワさん視点の映像がないもののナリモトが演出(ねつ造)しようとしていたのはナリモト視点の映像からだけでも分かる。
廃墟の映像では謎の男(島田)が映っていた場所とも全然違って見える。
なので「再びVHSの中身を追わせるために送り付ける」としたらこれは必要がないと判断してもおかしくはない。
ナリモトが失踪したか否かを判断するためには非常に重要かも知れないが、M氏はナリモトを表に出したいのではなく、場合によっては別班が再びVHSを一から追うのでも良かったのでやはり必要性は薄い。
むしろVHSの謎を追うのを諦めたナリモトは不要なぐらい。
彼の〈動機〉は「獄門帳の完成」に近くはありますが獄門帳スタッフや境界カメラ勢とはスタンスが違うのです。

さらに廃墟はVHSと関係が見られないのでその映像は不要というのは父親の死の真相説でも同じ。
犯人に繋がらない情報は無駄と判断した。
ちなみにもしパッケージの裏の署名に気が付いていたとしても、その時点ではやはり廃墟とVHSは繋がらないのです。
「いやいや署名でキリタニの名前見てたら廃墟と繋がるじゃん!」とお思いかもしれませんがそれはないのです。
ナリモト復活回でナリモトは「テラコーが青木氏にインタビューした映像を見てキリタニが関係していることを知った」と話しています。
廃墟撮影時、そして田中花子が封筒を送った時期にそのことを知っているのは限られた人物だけであり、M氏は除かれます。

他の人物の視点ではネックになっていた「廃墟の映像を送らない理由」は多くの立場で「あると都合が悪い」といった中で、彼視点では純粋に「必要なかったから」というシンプルかつ合理的な理由になります。

最近ようやくVHSとキリタニ、そして廃墟が繋がる情報がでました。
このタイミングでなら廃墟のテープを明らかにしても・・・とはやっぱりならないんですね。
VHSの真偽は分かったので廃墟の映像が本物であろうが関係ない、また犯人の島田には辿り着いてしまったし、廃墟映像が直接キリタニに繋がらないのであれば今更目立つアクションを起こす必要がないのです。
まぁ他の人が『田中花子』だったとしても、あえて今危険を冒して廃墟映像を送る理由もないんですけどね。
ナリモトやイカワの所業は知れ渡ってしまった訳だし、キリタニの霊能力もVHSや島田の証言から確定的となったので。
視聴者は喉から手が出るほど見たいんですがね・・・
それこそ愉快犯的性質であれば「ようやくここまで辿り着いたか・・・最後のヒントをやろう!」的に送り付けてきてもいいんですけどね。

まとめてきな何か

前回、この事件には明らかになっている関係者の中でまだ語られていない話や大きな嘘が一つ以上はある気がするとした考えを述べました。
その一つの考えを当てはめるだけでこうも考察の幅が広がるのです。
今回しっくり来ないと判断した人物たち、さらにはそもそも考察に登場していない人物の中にこそ大きな秘密は隠されているかもしれません。
そして自分の想像力では思い浮かばないそんなピースが今後明らかになれば、『田中花子』足りえないと思っていた人が一気に怪しくなることもあるでしょう。
益々テラコーからの追加報告から目が離せませんね!

なお、様々な考えを述べていますが母親説を始めとして他の方の考察を否定するものではありません。
むしろ色んな方の説を見て自分では考えつかない視点を与えてもらったからこその自説です。
急ぎ執筆したためまとまらず相も変らぬ長文となりましたが、皆さんの推理のきっかけになれば幸いです。

※参考画像・資料は全て『境界カメラ』内の物を使わせていただいております。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?