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春を背負って

監督・脚本 木村大作

俳優 松山ケンイチ・蒼井優・豊川悦司

立山連峰のとある山小屋で働く人々や登山客との触れ合いの物語。

富山県へきてから4年間ほど、立山連峰はすっかり私の心の拠り所になった。といっても登ったこともないし、登りたいと思ったこともあまりなくて、遠くからながめるだけ。キリッと冷えた晴天に青々とそびえ立ち、夕暮れ時には神々しくオレンジに輝き、墨汁がこぼれてじわじわと滲むように霧がかかり、四季折々、時々刻々を車の運転中に眺める。気持ちが晴れないときは近所の呉羽山へ車を走らせ山の見える景色を眺めにいく。

神奈川の住宅地にいた頃も、東京の小さなアパートに暮らしていた頃も、日常に山を意識することはまるでなかった。時折ビルの間から、富士山が米粒ほどに見えると喜んでいたくらいだ。考えごとをするときは、高層ビルに上がって、川の向こう側に行って、家やビルの明かりが点いたり消えたりする様子や窓の向こうに小さく動く人の営みを眺めた。

「春を背負って」は登場人物が山小屋で働くに至ったストーリーや食料を足で運んだり、無謀な登山客が遭難しかけたところを救助したりと自然の厳しさと対峙する人々の様子が描かれ、外から眺めただけの山の話ではないけれど、悩める人々を癒す不思議な力がテーマになっている。

登山をすると違う世界線が広がっているのだろう。立山連峰への想いも変わるのだろう。でも、もうしばらくは眺めていよう。









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