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「実務解説 行政訴訟」ってどんな本?

みなさま、はじめまして。
社会人予備試験受験生の堀鉄夫(iron_husband)と申します。
Twitterやツイキャス、Facebookで同名義で細々と?情報発信をさせていただいております。
この度、遅まきながらnoteデビューを果たすこととあいなりました。
何卒お手柔らかにお願い申し上げます。

さて、記念すべきnoteの第一弾ですが、当初の予定では、過日内輪向けのツイキャスでお話しさせていただいた「ウェブ進化論とアフターコロナ」をテーマに取り上げるつもりでした。

ところが、日頃からお世話になっているバベル先生(@babel0101)こと大島義則先生より表題の書籍をご恵投いただく、というまさかまさかの大イベントが発生したため、急遽予定を変更することにしました。

さて、先のツイートでバベル先生が紹介された私を含む4名のうち、アガルートの石橋侑大先生(@yudai1122yudai)はYouTubeで、トモシビ先生(@lighta_ampligh)はツイキャスで、それぞれ受験指導者の立場から本書を紹介されると伺っております(と勝手にプレッシャーをかけておきます笑)ので、私は一介の予備試験受験生の立場から本書を紹介させていただこうと思います。
なお、便宜上、本書の表記は「剣盾本」とさせていただきます。

1.まずは中身以外のところから

装丁が超絶カッコイイのは一目瞭然ですので、それ以外の点について簡単に触れてみます。
まず、厚さは約2cm、ページ数は400ページ強となっています。で、1ページ当たりの文字数は実はそれほど多くありません。
ということは「分量的には通読も決して難しくない」ということが言えなくもなさそうです。
なお、ページレイアウトについてはMANAMIさん(@make_up_manami)が興味深い指摘をされています。

これは恐らく余白がかなり広く取られていることを指しているものと思われます。事実、ページ番号が振られている場所から約2cm分、行末からは3cm弱もの余白がありました(他の法律書と比較してもかなり広めでした!)。
というわけで、少なくとも書き込み場所に困ることはなさそうです。

話は少し逸れますが、表題の写真はMANAMIさんが撮影されたものを拝借しました。しかも背景は「H&Mのスカート」とのこと
さすが美のプロフェッショナルは違いますね!

2.困ったときは「はしがき」をチェック

その本が自分に合っているかどうかを判断するには「はしがき」をチェックするべき、というのは昔からよく言われていますよね。
というわけで、冒頭の「はじめに」の部分から気になった点を適宜引用させていただきます。

序章「行政事件訴訟における事案検討の手順」では、行政紛争事案を検討する際の思考プロセスや検討方法について概説をしている。行政紛争事案を検討する際の思考の流れとして、①訴訟類型・仮の救済の選択⇒②訴訟要件論⇒③本案論⇒④訴訟の終了(判決等)という4つのステージが存在する。序章では、この①~④の全体像について概説した。

えっ?

これって(④はともかく)行政法の論文問題を考えるときの思考プロセスそのものですよね!?
ということは、この部分だけをみても受験生にとって有用であると言えそうですね。
しかも、ありがたいことに、訴訟要件や本案勝訴要件、判決効といった重要ポイントが一覧表にまとまっているんです!これって予備試験の短答式対策にも便利ですよね!
ということは、受験生としてはこの序章部分をしっかり読み込むことが短答式にも論文式にも有用だ、となりそうですね!

第1章~第8章はそれぞれ「Ⅰ 制度概説」と「Ⅱ 論点解説」から構成されている。各訴訟類型の概要をざっと知りたい方はまずは各章冒頭の制度概説を読んで全体像を把握することが有益であろう。

これは受験生的には制度概説が基礎編、論点解説が応用編、と読み替えることができそうですね。ということは、取消訴訟以外の訴訟類型の論点解説は優先順位を下げる、といった戦略を立てるのも良いかもしれませんね。

論点解説では、特に、訴状や準備書面で実際に起案することになる②訴訟要件論や③本案論を中心として解説を行っている。 

ということは、論点解説の部分は論文式試験における「あてはめ」の対策としても有用である、という推定が働きますね。
GW中に行われた出版記念オンラインイベントの場でも、伊藤たける先生や三宅千晶先生が同様の趣旨のご発言をされていたように記憶しております。

これは私の勝手なイメージですが、ライバルに差をつけられないために「制度概説編」でしっかり基礎を身に着け、ライバルと差を広げるために「論点解説編」であてはめを学ぶ、といった利用が考えられそうです。

個々の論点解説の冒頭では解説本文のPOINTを簡潔に示しており、リサーチがしやすいよう工夫をしている。

これまた至れり尽くせりですね!

なお、取消訴訟を扱う第1章では、他の抗告訴訟と重なる共通部分の総論的な解説を含むため、分量がやや多くなっている点にご留意いただきたい。

編者の大島先生ご本人が執筆を担当されたのが「序章」と「第1章(取消訴訟)」とのことです。
余談ですが、先のオンラインイベントでこんな一幕もありましたね(笑)。

3.実際に読んでみた

というわけで、早速私自身も少し読んでみました。

読めるぞ!私にも読める!!

実はトモシビ先生から「司法試験受験生にはオーバースペックかも」と脅されて?いたのですが、行政書士試験合格(行政書士試験指導歴あり)、予備試験短答突破に苦しんでいる(泣いてません)私でも意外なほどすんなり読み進めることができたのです!

では、なぜ読みやすいのでしょうか?
これはあくまで私見ですが、全般的に記述がコンパクトにまとまっていて、行間を読ませる(≒読者に負担を強いる)ところが少ないからなのではと考えています。
また、共著の弊害として一般的に挙げられる「執筆者間の温度差や意識のズレ」のようなものがほとんど感じられませんでした。
ひょっとしたら大島先生が編者として相当な強権を発動させたからなのかもしれませんね!?

と冗談はさておき、大島先生が執筆をご担当された序章と第1章(取消訴訟)全部、それと第2章以降の「制度概説」(第2章以降の「論点解説」は後回し)は実際に読んでみてとても分かりやすかったです(なお語彙力)。
ただ、「分かりやすい」だけでは芸がないので

・第1章(取消訴訟)の論点解説では「処分性」や「原告適格」といった典型論点について一覧表を交えた分かりやすい整理がなされていた
・第2章以降(取消訴訟以外)の制度概説の部分も記述がコンパクトにまとまっていて、短答式対策としても通読する価値は十分あるように感じた

ことはしっかりとお伝えしたいと思います。
あと、もう1点感想として特筆しておきたい点があります。それは

「剣盾本」って、実は「憲法の地図」の行政法版、つまり「行政法の地図」だよね?

というものです。
「憲法の地図」が判例分析のためのツールなら「剣盾本」は行政法の事案を解決するためのツール、といったところでしょうか。
用途が思いっきり広がっているのでさすがにこの比喩は苦しいかもしれませんが、ツールとしての使いやすさには共通したものを感じました。

4.行政法ガールⅡとの関連性は?

大島先生といえば「憲法ガール」「行政法ガール」シリーズですよね!
しかも、行政法ガールⅡは今年の4月10日時点で「執筆中」とのこと。

我々受験生が手にする日が来るのもそう遠くないのかもしれませんね。

となると、気になるのは「行政法ガールⅡ」と「剣盾本」との関連性についてですよね!
私の個人的な予想としては「策士」たる大島先生が行政法ガールⅡを執筆される際に「剣盾本を引用しないはずはない!」と勝手に踏んでいるのですが、実際のところは大島先生ご本人からご説明いただいた方が良さそうですね(無茶ぶりその1)
もしそうだとすれば、行政法ガールⅡの出版記念講演のテーマも「行政法ガールⅡと剣盾本の架橋」で決まりですね(無茶ぶりその2)!?
行政法対策の三種の神器が「サクハシ」「剣盾本」「行政法ガール」と言われる日が来る、やも知れぬ!?

5.「剣盾本」は買い?

さて、長くなりましたのでそろそろ締めに入りたいと思います。
私の結論としては、今年の司法試験(いったい何時になったら試験日が決まるのでしょうか憤怒)を受けられる方(直前期のインプットをさけるべき方)を除くすべての法曹志望者の方にオススメしたいと考えます(ダイマ上等)
理由は以下のとおりです。

・リファレンス性が高い(そんな日本語あったっけ?)
必要なときに必要な情報にアクセスしやすいので、調べる時間を大幅に削減することができそうです 時は金なり
・行政法初学者でもそれほどハードルは高くない
図表が豊富で記述もコンパクトなので意外となんとかなりますよ
・長期的にみてコスパが高い
個々の学習ステージにおいて参照すべき場所が次第に増えていき、実務家になってからも長く使うことができるものと推察されます
・行政法ガールⅡと相性が良いはず?
これまた大島先生ご自身に証明してもらうしかありませんね(無茶ぶりその3)

以上、一受験生として剣盾本をどう活用できるか(活用させるか)という観点から書き綴ってみました。
状況が状況ですので、店頭で実本を手に取ってみることができない(通販で購入するにはちょっと勇気が要る)受験生の方も多くいらっしゃるものと思われます。
そういった方々にとって拙稿が少しでも参考になれば幸いです。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!

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