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人生で1番静かだった朝

2020年12月15日、愛犬の「もこ」が死んだ。

その日家に帰るとリビングの椅子の上にもこのベッドがあり、いつもなら誰かが帰宅するなり喧しいくらいに吠える子だったので、「もこが吠えないの珍しいね」なんて祖母に言うと

「もこ、死んじゃったんよ」

頭が真っ白になる。などとはよく言われるがその瞬間、本当に真っ白になったのを覚えている。

確か高校生の頃、家に帰ると家族が集まっており犬の鳴き声が聞こえたのが俺ともこの出会いだった。

最初はまさか飼ったとは思わず、「誰から預かったの?」みたいなことを言った気がする。

過去にもペット自体は金魚やハムスターなどを飼ったことがあるが、ついに犬かと少し嬉しかったのを悟られないようにしていた。

名前は家族みんな頭を悩ませていたが、当時はまだ産まれたばかりでもこもこしていたので「もこ」と自然に名前が付いた。

思い返せばもこはかなり自信家というか、人間でいうとツン8:デレ2のような犬だった。

家に来てから少しは誰でも抱っこ出来たし、写真を撮る際にも物珍しそうにカメラのレンズを見ていた。

何年か経ち、もこも我が家に慣れ始めたのか次第にツンツンし始めた。

抱っこしようとしても「仕方ないわね」というオーラが出ていたし、おもちゃで遊ぶ時にも「はいはい、遊んであげるわよ」みたいな感じ。

たまたま俺が家にもこと1人と1匹で留守番になった際には「あんたも留守番?」みたいにおもちゃを咥えて来るような犬だった。

留守番の時は親に内緒でちょっといいお菓子なんかをあげたりしていたので、もこからすれば「いいエサをくれる奴」くらいの認識だったのかもしれないが。

俺が大学生にもなると、もこと外へ散歩に行くようになった。当時は夜中までバイトをしていたためあまり散歩に連れてってやれた記憶は最近の記憶しかない。

飼い主より犬を後に付けさせるのが一般的らしいが、俺ともこの散歩はどちらかというとお互いのジョギングにお互いが渋々付き合うような散歩だった。

ある程度散歩に連れていくと不思議なことに、お互いがお互いの休憩のタイミングを察するようもなった。

そんなもこも2019年頃から体調を崩すことが多くなったように思う。

元々下痢は何度かあったが、かなり頻繁に下痢をするようになった。

病院に連れていくとどうやら腹部に水が溜まっているらしい。俺はあまり犬のことに詳しくなかったのでその時は「犬もそんなことあるんだ」くらいにしか考えてなかったと思う。

それから内緒で美味いものを食わせてやることは少なくなったが、晩御飯のメニュー次第ではドッグフードの他に「もこスペシャル」なんて名前で湯通しした魚の切り身や肉、豆腐、卵の白身を親父があげるようになった。

それが習慣化すると、親父が味噌汁に手をつける辺りで(親父は味噌汁を最後に飲み干す)椅子の下にスタンバイして、お椀を置き椅子を引くと同時に膝に飛び乗るようになった。

今年2020年の大体夏頃にもなると、腹部に水が溜まる頻度が増え、ドッグフードに薬が混ぜられるようになった。

もこは食欲旺盛な子だったため、薬が混ざってようがお構い無しに食べていたが、「もこスペシャル」を貰う時にジャンプ出来ないことが時々あった。おそらく水が溜まっていたので身体が重かったのだろう。

病院に行く頻度も増えた秋頃にはちょっと高さがある祖父祖母のベッドに乗れない事も増えた。



12月になると、高さ30cmあるかないかのベッドにすら乗れなくなり、薬も徐々に強いものになった。


しかし普段は至って普通で、いつも通り誰かが帰宅すれば吠えるしご飯も食べていたのでそこまで心配はしてなかった。


12月14日、もこが入院した。お医者様が言うにはそこまで酷くはないが様子見のために、らしい。

入院も過去に数回あったので、2日もすれば帰ってくるだろうと楽観的に考えていた。

12月15日、19時前に帰宅してリビングに知らせようとすると、椅子の上に置かれたベッドの上に毛布を掛けたもこが寝ていた。

玄関にウィンドチャイムがあるため、その音がするともこは2階で寝てない限り吠えながら出迎えてくれるのだが珍しく寝ている。

キッチンで晩御飯の用意をしている祖母に「帰ってきても吠えないで寝てるの珍しいね」なんて、その時は内心嬉しさもあってか吠えないで寝ていることを何も疑わなかった。

そして冒頭のやり取りが始まる。何時に死んだのか、大体の原因なんかを聞いても現実味がなく、タバコに火をつけた。

部屋に戻りとりあえずTwitterを開いた、YouTubeで適当な動画も流した。とりあえず何かして落ち着いて考えようとした。


1人になると一気に現実が襲ってきた。曾祖母が亡くなった時は現実味はなく、泣かなかったのだがぼろぼろと涙が溢れてきた。








ああ、本当にもこは死んだんだな。もっとあれこれしてあげたかったな。

今日の朝、親と同時に起きる犬の鳴き声が1匹少ないだけでこうも静かな朝なのかと思った。

人生で1番静かな朝かもしれない。



出かける際、涙を堪えてもこに「行ってきます」をした。


これを書いてる今も気を抜いたら涙が溢れるし、ここ数日はふとした事で泣いてしまうかもな、なんて天国の愛犬に想いを馳せつつ筆を置きたいと思います。





そういえばこの写真をとあるVのリスナーがペット写真応募してたから送ったのを思い出しました。

暑い夏の日、暑すぎて虚無ってる愛犬です。




2020/12/16

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