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Photo by
sujaku1979
いつか結ばれるより、
まぶたを閉じて横に寝転ぶ。
ふとした気配にまぶたを開けると、そっと伸びてきていた掌が視界に入った。
瞬きに遮られ、躊躇いに固く結ばれてしまった右手が宙に浮かぶ。
きっと、わたしの頰に触れようとした掌なのだろうと思っても、もう一度まぶたを閉じる気にはならない。
そのまま撫でてと言えるのならば、どんなによかったのだろう。
行き場をなくしたその右手がかわいくて、そっと握ると、乱暴に抱き寄せられる腕の中、照れて笑う吐息が聞こえる。
額にかかる前髪を揺らすそれだって、今夜だけのとっておきなのだ。
ほんの少し冬を感じさせる冷たい風が吹くたびに漂う残り香がホームに揺れる。
香水の入り混じった、柔らかい、肌の香り。
またねとも口に出せないような夜に、さよならを告げることもできず。
「いつか結ばれるより、今夜一時間会いたい」
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