黄燎の章の感想とシナリオの考察

風花雪月無双、黄燎の章をクリアしました。

プレイ時間はハードクラシックでだいたい50時間ちょっと。遅いのかな。リセットはリシテアが寝っ転がるかミッション失敗した時くらいだったんですけどね。

風花雪月無双を知らない人向けの超ざっくりとした説明

ファイアーエムブレム無双風花雪月とは、2019年に発売されたニンテンドースイッチ専用ソフト「ファイアーエムブレム風花雪月」のスピンオフ作品であり、「無双シリーズ」とのコラボ作。本家とは異なる主人公で、選んだ道ごとの物語が展開されます。あとはまあ公式トレーラーでも見てくれ。

ざっくり感想

ゲームとしてはとても楽しくて、結構カロリー使うので自分はあまり長時間は遊べないんですけど、一度遊び始めるとなかなか辞め時が見つからない中毒性があります。
本家風花雪月ではできなかった同盟軍としてデアドラを防衛する戦いに臨んだり、正気のディミトリと対峙したり、前作よりがっつりナデルが協力してくれたり(操作させろ)、あの計略があの形で再現されたり、真価を発揮した遺産が凄まじい強さを見せてくれたり、相変わらずメトジェイがケエッヘッヘしていたり
アクション面も、ひたすら敵をなぎ倒すだけでなく、放っておくと割とすぐ暇し始める味方に指示を飛ばし(指示さえ出せば味方NPCも優秀)、刻々と変わる盤面に応じて采配を振るう、忙しい楽しさがあります。

新主人公のシェズも良いキャラをしていて、支援会話も彼/彼女周りはもちろん、今作初登場のホルスト殿や、前作にはなかったクロードとハピ、ヒルダとリンハルト、ラファエルとアッシュなどの組み合わせがあって(前作の支援あり組がなかったりもしますが)、意外なやり取りや関係性を見れます。(前作の支援Aみたいな戦争が終わったら……的関係にはなりませんが)

ですが今回語りたいのは風花雪月無双のストーリーの一つ、黄燎の章におけるシナリオ部分。
「面白そうな題材で、大筋だけ見れば納得できる話を描けるはずなのに、何か味付けを間違えた」という印象が強く、どうしてもその点の違和感を文章に明示しておきたかったため、それを書き綴ります。
細かなガバについては拾いきれていないので、いろいろ不備はあるかもしれませんが、悪しからず。

当然ですが黄燎の章全体のネタバレがあるので、読むのは自己責任でお願いいたします。

・黄燎の章のあらすじ


まずは黄燎の章のシナリオ構成ですが、

第一部は戦争の発端であるアドラステア帝国との戦い。圧倒的劣勢の状況を覆し、同盟を守る話。
第二部はファーガス神聖王国、そしてセイロス教団中央教会との戦い。帝国と盟約を結び、戦乱を終結させるべく中央教会打倒を目指す話。

となっています。
そして、個人的に思うところが大きく、恐らく黄燎の章において問題視されがちなのが第二部の流れ。

ちなみに黄燎の章の主役となるのが彼ら。自分にとっては本家風花雪月での可愛い教え子たちでもあります。やろう、風花雪月。金鹿の学級はいいぞ。


・原因は大体EP9と10

黄燎の章における第二部の幕開け、EP9の導入をざっくり説明すると、

戦時における意思決定の遅さを打開するべく、レスターは合議制から成る同盟の体を捨て、連邦国へと体制を移行。クロードは自ら初代レスター王となる。
同時期に、国内の西方三領、バーガンディ、シーワード、オールバニの治安が急激に悪化しているとの報が届く。連邦国成立に反対する三家には、王国への転身を図ろうとしている噂が流れており、更に西の国境付近ではセイロス騎士団の姿が目撃され始めていた。
不穏な影に疑念を抱きながらも、新王クロードは西方三領の治安回復に向け動き始める。

というもの。
この次に帝国との盟約が成立するイベントが発生するのですが、なんだか様子がおかしくなってくるのは更にその次のイベントから。

帝国との盟約成立、および今後は教団と王国が敵になる旨を仲間に報告。当然仲間たちは動揺するが、クロードは「フォドラの均衡が瓦解した今、傍観していれば立場が弱くなる一方。じゃあ今は帝国と協調して力をつけておこう」と説明。
「何の恨みもないファーガスを食い物にするのか?」とローレンツに問われれば、「俺たちに恨みはないが、歴史的にファーガスには散々やられてきたし、何より中央教会保護を掲げる王国とは相いれない」と返す。
クロードは中央教会こそがフォドラの悪しき秩序の原因と見て、それを破壊したいと考えていた。
そうこうしているうちに、西の国境近く、煉獄の谷アリルで帝国軍とセイロス騎士団が衝突した報せが届き、一行は盟約に基づき帝国軍への加勢を目指す。

このイベントの何がおかしいって、二つ前のイベントが何も生きてこないんですよね。

まず第一に、「ファーガスには何の恨みもない」とローレンツは言いましたが、少し前に西方三領が王国への転属を図っている噂があったばかり。
後に王国視点のイベントで王国側が騎士団を通じた引き込みを狙っていた事実は確定しており、話の限り転属を企てたのは三領からだったようですが、経緯はどうあれ所領の一部を勝手に奪おうとしている以上、レスター側にしてみれば現在進行形で侵略を受けていたも同然。恨みがないとか言っている場合ではない。
三領は連邦国に反対で国に助けを求め辛いことや、王国や教団は彼らの成り立ち的に信徒からの助けを見過ごせなかった側面もあるのでしょうが、そこを掘り下げればもっと自然に「成立したばかりの連邦国の地盤を崩されたくないレスターvs中央教会を抱える国として助けを求めてきた相手を見捨てられない+あわよくば国土東側の戦力を強化したいファーガス」の図を作れたはず。(あるいはクロードは後述の理由でヘイトを王国には向けたくなかったのかもしれないが)
更に言えば、連邦国成立について大司教レアは「主に認められることもなく、人の手で勝手に作られた連邦国など」と否定的な発言をしており、(ただし、これは最終決戦で追い込まれた際の発言故、平時の考えがどうであったかの保証はない。が、そもそも三領の引き抜きを教団が主導している時点で=連邦国を快く思っていないと見て良いと考えられる)これらの情報を早い段階で明示して、「レスター連邦国が存続する為には、中央教会の絶大な影響力が今のまま存在されては困る」と明確にしておけば、それまで影も形もなかった中央教会の罪状どうのこうの、過去の因縁どうのこうので戦う理由を捻りだすよりも、今現在戦わなくてはならない理由として、納得できる展開になったのでは?と個人的には思います。
(ちなみにジュディットさんの発言もいろいろ怪しい(本編ではレア様のために戦いたいと同盟軍について来るのに、無双では元々東方教会を支持していると発言)のですが、これは……レア様個人に恩があるけど中央教会自体はそんなにってシャミアさんスタイルってことなら、うーん……)

第二に、治安回復に動くぞという名目で出撃したのに、その治安回復の話がなにも出てこない。この章自体、メインとなる戦闘は煉獄の谷アリルにおける帝国vs教会への介入で、あれ?治安回復は?というと、なんと道中の(どころか別にクリアする必要すらない)サブステージとして消化されて終わり。一応、アリルでの戦いの結果、教団という仲介者を失った三領は大人しくなり王国への寝返りは立ち消えとなるのですが……じゃあ格好付けて出撃したイベントはなんだったん?
ここは素直に西方三領を巡るレスター連邦vs王国or教会の一戦にしてしまえばよかったのでは、と思ってしまいます。(そうならなかった理由は……大人の都合?)

・レスターなりの生存戦略

こんな調子で話が進む中、しかしクロードは本当の狙いも口にしています。

このまま帝国と連邦、王国と教会で戦えば、最終的には帝国が勝つだろう。ただしその場合、征服した王国の土地は多くが帝国に分配され、ますます帝国の力が強くなる。覆し難い国力差を前にすれば、いずれ自分たちも実質的に属国化して吸収されてしまう。それは避けたい。
ではどうするべきかといえば、王国を滅ぼさずに戦争を終わらせること。そうして三勢力で均衡を保つことこそが、レスターにとって生き残る道となる。

帝国が戦争を起こした動機は、あくまで中央教会の解体。重要な点として、王国の征服、フォドラ統一などは掲げていない。
つまり、先んじて自分たちが中央教会を倒せば、帝国は侵攻を続ける大義名分を失う。(ただし、拠点会話ではまた別の理由をでっち上げそうだよなとも話しているのだが)
そして、自分たちは帝国と王国、教会を同時に相手取りたくないから帝国と結んだが、それは帝国にしても同じこと。
教会を倒した後は連邦国が帝国と王国の間を取り持つ――つまり「戦争を続けたいなら自分たちも黙ってないぞ」と双方に圧を加えていけるポジションに収まることで、レスターの存続を図ろう、というのが本当の狙いであると語っています。
帝国と組んだのも、先述の事情により第二部開始時点のレスターにとっては帝国が敵だったのはもちろんとして、王国と中央教会も敵同然であったから。ただでさえレスターは帝国対王国のとばっちりを受けている立場で、その両者を同時に相手取れる訳がないんだから、ひとまず和睦の意思を見せている方と組みますよそりゃ。

レスターはただでさえ戦力が弱く、事実帝国との闘いではあっさりと盟主の都デアドラまで攻め込まれ、王国と対峙した際にも「レスターの戦力なんてたかが知れているから東の守りは今まで通りで良いのでは?(byフェリクス)」なんて言われてしまったりする始末。
当然ながら王国や帝国を真っ向からぶちのめしてレスターがフォドラを統一!なんて不可能なので、器用な立ち回りを求められたクロードなりの生存戦略がこれだったのだ、と考えられます。(本編でフォドラ統一ができたのは、先生の存在によってセイロス騎士団を味方に加えられたこと、奇策を用いた電撃戦で一気に片を付けたことが大きい)

この辺りの理由を、先に挙げた事情を踏まえて明示おけば、クロードが暴走しているという批判も減って、国と国の大義と生存をかけた争いを盛り上げられたのではないかな?と感じます。建前としても十分通る話のように思えますし。
教義がどうこうって話については、クロードの野望を語るなら避けては通れない話ではありますが、それを語るならばナデルやシャハドらパルミラ勢の視点や、北方民族スレンとの対峙が続いて来たファーガスとのやりとりも交えて進めていけば、急にどうした?感は減ったのではないかと思います……が、詳しく掘り下げるとなると情報不足ですね。

・無駄死に感の否めない兄妹

いろいろと問題だらけのEP9ですが、このEP9で連邦国軍がクロードが帝国将ランドルフを囮として見殺しにしてしまったことにより、EP10において彼の妹フレーチェから強襲を受けることになります。
EP9におけるランドルフ見殺しは、相手が騎士団随一の剣士カトリーヌであったことや、前の章でシャハドを殺害したことでクロードが精神的に追い込まれていたが故の出来事であり、味方を失いたくない苦渋の選択(もちろん仲間にはさんざん非難され、クロード自身も勝ったとは思えない苦悩を零している)であったと描かれています。
しかしそれがランドルフの妹フレーチェの耳に入り(闇に蠢くもの、通称闇うごのせい)、ジェラルト傭兵団などを雇って仇討ちの戦を仕掛けてくる――という流れ。黄燎の章においては、ここでのベレト/ベレスとの因縁の行方によってルートが分岐します。
が、正直なところ、このフレーチェ強襲は前エピソードとの繋がりこそあれど、物語全体で見た時には省いてもそう大きな問題はないエピソードであり、彼女に襲われる展開自体にもなんとなく制作側の都合を感じるんですよね。

黄燎の章においてそれ以前にベレト/ベレスと戦うのはEP6と7の二回で、その際には帝国軍に雇われています。EP8は対パルミラなので登場の余地がなく、9以降レスターは帝国と結び、ジェラルトは原作プレイヤーなら知っている何らかの事情で王国(というか中央教会)を避けたがっている関係上、本来は敵対の機会がない……筈なのですが、どうにか三度目の対決、ルートを分岐させる状況を作りたい、と考えた結果、EP9でのランドルフ見殺しからEP10のフレーチェによる強襲へと繋がったのではないでしょうか。あくまで邪推ですが。
ただ、これも一つ前のエピソード時点で「帝国との契約を終えた後、今度は西方三領に雇われていた」とかの理由で登場できたと思うんですけどね。その場合、わざわざ本筋をぶった切ってまでランドルフ、フレーチェ兄妹を殺してクロードの危うさを示すシナリオをやる必要もなかったのでは?あるいは本筋に絡めながら自然に取り入れられたのでは?という疑問が出てきます。もちろん、クロードの一人で抱え込む癖を一発ぶん殴るイベントは不可欠なのですが。
で、仮にランドルフ死亡からフレーチェ強襲の展開がなくなった場合、全17エピソード構成のうち一つ空きが生まれるので、何か別の話を入れる機会もあったんじゃ……と思わないでもありません。それこそ闇うご本拠地へのカチコミとか。
出てきては散々な目に遭い、あまつさえ話の大筋に必要だったか怪しいとさえ感じてしまうこの兄妹、嫌いじゃないし心は痛むんですが不憫だな……

これに限らず、どうしても黄燎の章は負のシナリオ都合を感じてしまう場面が多いんですよね。

ザラスの闇イベントまでクロードとディミトリの直接対話を取っておきたかったからなのか、電撃戦で一時的に王都フェルディアを包囲しておきながらも闇うごの暴動で戦果なくとんぼ返りしたり(しかもレスター優勢の戦況でとんぼ返りする羽目になるのはEP7に続いてこれが二度目)、
ザラスの闇発動の生贄に使いたかったからなのか、はたまた本編ほどの明確なハッピーエンドにしたくなかったのか、ソロンは取り逃がし続けるし闇うごの本拠地も見つけられず終いだったり(この辺にあるのかもと当たりはつけてたけど)、

やりたいことは分かるんだけど、なんだかな。見せ方がどうもな。
クロードという人物の描き方には問題なかった、できる限りを尽くしてレスターを護らんとする姿勢はむしろ好感を持てるくらいだと思うのですが、いや今語るべきはそこじゃないんじゃ?が総じて付き纏ってきた印象。

2023/6/25追記
ちなみに無双クロードは仲間を信用していない!という主張もちらほら見かけますが、自分は別にそう思っていません。
というのも、上でも挙げたように当初は「王国とも相いれないから」戦うと皆に説明していたものを、フレーチェの一件後には「教団だけを除いて戦争を終わらせる」という真の目的を明かしていたり、死亡セリフも「俺の野望」→「俺たちの野望」と変化していたり、クロードから仲間への信頼は確実に増しているのだと思っています。

あとシェズくんのこともラルヴァくんのことも例のあの人のことも今一つハッキリしないまま終わりましたね。それでいいのか?それともDLCがあるの?最低限重要な情報は本編で出せやってifで怒られてなかった?
(まあ王国ルートでほぼ答え出てるようなもんだけどさ)

というのが、プレイして気になった部分でした。他にも気になるポイントはあるんですが、細かいしキリもないのでこの辺にしておきます。

打ち切りと言われるエンディングについては……闇うごさえ倒せていればなあと思いつつ、中央教会が崩れたあの状況では今後は政治的な争いがメインになりそうな予感が強いので、そこまで文句はないですね。
ただただ見せ方が悪いよーの一言になる気がします。

・おわりに

こんなとりとめのない文章を最後まで読んでいただいた方、ありがとうございます。
この考察はあくまで自分なりに感じたことの覚書みたいなものなので、内容が正しい保証はできません……が、コイツはそんな考え方をするんだなくらいに思ってもらえたらちょっと嬉しいです。

小説書きアカウントの最初のノート投稿がこれで良いのか?
どうだろう……そもそも次に使う機会があるのかな……次は創作活動のこと書けると良いな……
でも、楽しくゲームをしながら物語を考察して、学びや反省を得て、それは今後の自分の創作にも生きてくるものがあるんじゃないかな、と思ったり思わなかったりします。
フォドラに生きる者たちがどんな考えでどうして争っているのか、本来はこういう話がメインなんじゃないか、を考察するのは楽しい。

最初にも言いましたが、ゲームとしてはとても楽しかったです。
アイスナー親子のやり取りを色々見れたり、ジェラルトとレオニーの師弟関係が見れたり、ホルスト殿の趣味がキノコ料理だったり、説得されて同盟軍の将にされてもマイペースなリンハルトにボロ小屋引き篭もりベルナデッタ、一方で一人ガン曇ってガチ睨みをかましてくる説得アッシュくんなどなど……

次は青燐に進むか赤焔に進むか考え中ですが、じっくり楽しむことにします。
いろいろ問題点は上げましたが、楽しいゲームなので、暇だったらぜひどうでしょうか。

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