不動産鑑定士試験の演習問題、どこの街がモデルなのか問題(令和4年編)
全国若干名の不動産鑑定士試験マニアのみなさま、「探偵!ナイトスクープ」の時間がやって参りました。複雑に入り組んだ演習問題に鋭いメスを入れ、さまざまな謎や疑問を徹底的に究明する「探偵!ナイトスクープ」。私が局長のirisです。嘘です。
今回は令和4年の演習問題を取り上げます。過去記事(令和2年と3年)は下のリンクからどうぞ。
ちなみにこの謎探偵企画ですが、第3弾にしてここからが本番です。
令和2年及び3年の演習問題は、各種資料のうち複数が現実の街そっくりに作られていて特定しやすかったのに対し、これらの年以外の問題はもっと巧妙に(?)フィクションやフェイクを織り交ぜて作られている印象です。
したがって私が導き出した結論も若干自信ないです。「ここの考察甘いんじゃない?」等の突っ込みはコメントいただければ励みになります。
それではどうぞ。
【参考】http://www.mlit.go.jp/totikensangyo/kanteishi/content/001495339.pdf
位置図と都市概況資料の考察
では例によって位置図からみていきましょう。演習問題P14に掲載されている位置図がこちら。
あ~っと!ノーヒントだぁ~~っ!!
このどこにでもありそうな碁盤目の街並み。これだけではさすがに特定不可ですね。ページを戻って都市の概況資料(P9以下)から絞っていきましょう。問題の舞台となっているB市の概況のうち、特定に役立ちそうなものをピックアップしていきます。
人口 約120万人
面積 約300㎢
B市は県庁所在地
市内中心部を私鉄が南北に縦断・JRが東西に横断
上3点の要素に近しい都市は、京都市・広島市・さいたま市・仙台市です。(※)。これに4点目(私鉄とJRの通り方)を考慮すると、有力候補は京都市っぽいということが分かります。
(※ なお各都市の面積は「可住地面積」をベースに比較検討しています。)
しかし資料を読み進めていくと「商業施設」の項目に問題の記述が。
B市の繁華街○○エリアはJR○○線「W駅」南側に所在し、百貨店を中心に専門店、商店街が集積するA県随一の商業地域である。
また、「W駅」の隣駅である「Z駅」(=位置図に載っている駅)南口から伸びる広幅員道路沿いに高層の店舗・事務所が建ち並び、その背後地には小売店舗や飲食店舗が集積している。
京都市の繁華街は京都駅南側ではない…!百貨店・専門店・商店街が集積するのは京都駅から地下鉄で2駅北側の「四条」駅周辺なんですよね。
加えて京都駅の隣駅である「西大路」駅と「山科」駅周辺は、確かに駅前こそ広幅員道路沿いに商業施設が建っていますが、背後地までがっつり商業地域が広がっているとまでは言えない街です。
当該記述がフィクションという可能性もゼロではありませんが、そうするとあまりにも現実の京都市とかけ離れた架空の都市という結論になってしまいそうです。一度振出しに戻って考え直しましょう。
「商業施設」の項目に記載されているような、JR線を2駅もまたいで結構な商業地域が広がっている都市となると、最初の候補に挙げた4つの都市よりもうひとまわり大きい都市なのかもしれません。したがって次の候補はこちら。
神戸市です。
大きな繁華街は地図の東側にあるJR「三ノ宮」駅の南側に位置しています。阪急百貨店やマルイがあるし、「神戸三宮センター街」という商店街もあります。
さらに「三ノ宮」駅の隣駅である「元町」駅南側も結構な商業地域。駅から南東へ少し歩けば広幅員道路沿いに大丸神戸店。その他「元町商店街」という商店街や南京町(中華街)もあり、背後地にも小売店舗や飲食店舗がギッシリ集積しています。
神戸市の人口はこの試験のあった令和4年8月時点で約151万人。問題上は120万人と少なめに書かれていますが大きく外してはいない。(キリ良く150万と書いておいてくれれば一発で特定したのに)
また電車の通り方(JRが東西に、私鉄が南北に通っている)も、下の地図の通り一応合致しているといえば…しているかな?
最後に位置図と実際の元町駅周辺の地図を照らし合わせてみましょう。
うーん…ドンピシャという感じではありませんね。
ただ現実の元町駅を少しだけ東にずらして幹線道路の上に置いて、地図全体を15度ぐらい右に回転するなどの脳内変換を加えれば、そこそこ似ている気もします。位置図における対象不動産の西向かいが、現実の地図における大丸神戸店といったところでしょうか?
以上、怪しい点は少しありますが、モデルとなった街は一旦神戸市の元町駅周辺であるとして検討を進めていきます。
地域要因資料の考察
続いて問題文の地域要因資料を見ていきます。画像で載せると資料の文字が小さくなってしまうので主だったものをピックアップ。
Z駅周辺の用途地域は全て商業地域&防火地域。
指定容積率はZ駅を南北に縦断する幹線道路沿いが600%。その他地域は300~500%。
標準的使用は幹線道路沿いのみ高層店舗付事務所地、その他が高層店舗付共同住宅地。
(あれ?概況資料では結構な商業地域であるかのような記述してませんでしたっけ…?)
一方で実際の元町駅周辺の都市計画は以下の通り。
一面真っ赤(商業地域&防火地域)です。問題上の設定と同じですね。
なお現実の都市計画の指定容積率は400~800%に設定されていて、問題上の指定容積率よりも実際のほうが高いです。まぁ容積率はフェイク入れているんでしょうね。
公示地価や取引事例価格水準の考察
最後に価格水準を見ていきましょう。まずは公示価格から。
全然違うやんけこれ…
接道状況や容積率等の価格形成要因を考慮しても、問題上の標準地より現実の元町駅周辺にあるポイントのほうが、公示価格はうんと高いです。この点をみるとモデルとなった街は元町駅では無いのかな…と不安になってしまう差ですね。
他の価格水準もみていきます。この年の演習問題の類型は「区分所有建物およびその敷地」。中古マンションの評価です。問題に掲載されている区分所有建物の取引事例と、現実の取引事例とを比較してみます。
問題上の取引事例は70㎡台の事例で、その取引価格水準は概ね4,000万円前後。直近2年間の現実の取引価格水準も4,000万円前後のものが多いですが面積は50~60㎡台。単価で考えるとこちらも現実のほうが高いですね。それでも公示地価のような圧倒的な差はなく、軽くフェイクを入れた感じなんだろうなぁという印象です。
まとめ
以上より、令和4年の演習問題で舞台となった街は、いろいろな要素にやや疑問が残るものの、
「ちょっと鄙びてしまった神戸市 元町駅周辺」
と結論付けました。
がんばろうKOBE。irisはオリックスバファローズを応援しています。
それではまた。
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