不動産鑑定士修了考査 出題傾向分析及び対策(論述問題編)
全国200名に満たない不動産鑑定士実務修習生のみなさまこんにちは。irisです。今回は表題の通り真面目な記事です。
10月末提出の実地演習課題も終わり、いよいよ迫ってきた不動産鑑定士の修了考査。今回は記述の考査のうち、論述問題の出題傾向分析及び対策です。多肢択一・計算問題編は下のリンクからどうぞ。
※ 修了考査の過去問等はこちらから。
論述問題の出題傾向
前提として、修了考査の論述問題は2問出題されます。
1問目が不動産鑑定士として必要な知識+その応用を問う問題(以下、「A問題」といいます。)で、2問目が修習生自ら実地演習にて作成した鑑定評価報告書の内容を前提として、実務的な知識を問う問題(以下、「B問題」といいます。)とされています。
A問題は何が出るか試験当日までわかりません。一方B問題は事前に連合会のサイトにて出題可能性のある類型が3つ開示され、そのうちの1類型から出題されます。
まずは過去5回の修了考査の問題とその内容について見ていきます。
A問題
第12回…自建(から貸家への転換)
表形式で詳細に対象不動産の設定が提示されたうえで、評価方針及び活用する資料について問う形式の問題となっています。(小問は2つ)
第13回…借地権付建物(貸家)
第14回…継続賃料(家賃)
前文で軽く対象不動産の概要が提示されたうえで、小問1で活用する資料に関する問題が、小問2と3で評価上ポイントとなる論点に関する問題が、それぞれ出題される形式です。この2回は非常に問題構成が似ています。
第15回…取引事例比較法(要因比較)
第16回…原価法(減価修正)
前2回から打って変わって一般論的なことを問う問題です。(みんな大好き論文式試験の問題のような感じ)小問1で基準本文または留意事項の内容を直接問う問題が出たうえで、小問2と3において実務的な知識・内容を問うてきています。この2回も非常に問題構成が似ています。
B問題
各回におけるB問題の出題類型は以下の通りです。
第12回…区分所有
第13回…商業地
第14回…業務用ビル
第15回…区分所有
第16回…借地権付建物
続いて問題文を見ていくと、第12回はやや題意がざっくりな印象。
第13回と14回は市場分析・地域分析に関する問題(基準でいうと総論6章がらみの問題)が頻出。
第15回と16回は数を指定して列挙させたうえでどのように評価に活用・反映させたかを問う形式の問題が頻出。
予想と対策
以上の通り過去5回の問題文を時系列で見ていくと、論述問題の出題者は2年毎に変わっていると考えられそうです。したがって第17回修了考査の論述問題は、前回(第16回)とは違う出題者が作問する可能性が高い気がします。
ただし当然のことながら、出題者が変わるからと言って出題傾向が変わるとは限りません。また、日本不動産鑑定士協会連合会のサイトにて公表されている公表資料なども引っ張り出して、実務修習・修了考査の運営体制全般の傾向を見ていくと、下図の通り6年周期で大きめの改革が行われ、3年周期でマイナーチェンジがみられるとも考えられます。
置きにいった結論で大変恐縮ですが、第17回の論述問題問題は、「第16回から出題の雰囲気は変わる可能性が高いが、過去5回とは全く毛色の違う奇問が出るとは考えにくい」と予想します。
続いてA問題・B問題それぞれの対策方法私見を記していきます。
A問題
■ 鑑定評価基準&留意事項は復習しておくべき
第15回、16回の問題は見て分かる通り、みんながこよなく愛する論文式試験を彷彿とさせる出題形式となっています。また、第13回、14回の問題も、地味に鑑定評価基準と留意事項の内容を引用させるような問題が混ぜ込まれています。
定期借地権の場合に留意すべき事項は留意事項に載っていますし、利回り法の説明及び継続賃料利回り査定時の留意点は基準本文の文言が参考になるでしょう。
前述の通り、第17回の出題内容は未知数ですが、修了考査の論述問題対策において鑑定評価基準と留意事項の復習は避けられないと思います。
ただし基準本文の頭からゴリゴリ暗記をし直す必要はないでしょう。
まずは過去5回の出題内容的に頻出論点と思われる総論6・7章、各論1・2章について、重要な部分(各種キーワードの定義とそれらにかかる留意事項)を復習することから始めればよいのではないかと。さすがに修了考査の論述問題で総論1・2・4・9章、各論3章前半を真正面から出題はしてこないと思います。
■ 「例示せよ」系問題はこじつけでもとにかく例示
これはB問題の対策にも共通することですが、例示させる系問題は必ず1問は出てくると予想します。
これらの問題はとにかく例示しなければ点数にならないはずですので、例えばどうしても1つしか例示が思い浮かばないみたいな問題にあたったとしても、思い浮かんだ1つの例示から表現をアレンジするなりでなんとか捻りだして解答することが大事になってくると思います。
なお、↑で掲載した第15回修了考査の問題は、留意事項に4つ例示されていますので、留意事項の該当箇所を覚えていれば難なくクリアという問題になります。例示せよ系問題の対策として、基準本文や留意事項の中に記載のある総合的勘案事項や例示系の箇所は重点的に復習しておいたほうが良いかと思います。
■ アウトプットの訓練として、論文式試験の過去問を解くことも一考
A問題対策の難しさは、鑑定評価基準や留意事項をもう一度復習しなければならないダルさもさることながら、活用できる教材が極めて少ない点も大きいと感じます。
論述問題の想定問題を作ってくれる等の手厚いサポートが付いている修習先もあるかもしれませんが、そうでないならアウトプットの訓練として論文式試験の過去問を活用することも一考ください。論文式試験対策と同じく、インプットだけでは限界があると思いますので。
ただし修了考査の論述問題の解答用紙は、A問題・B問題でそれぞれ1枚だけですので、論文式試験の解答用紙の半分弱の分量しか文字が書けない点には注意ください。論文式試験の時みたくコッテリと基準・留意事項を引用しまくる答案構成はせず、簡潔に答える訓練もここで身に着けられるとよいと思います。
B問題
■ 口述対策と並行して対策を
B問題で聞かれる内容は概ね口述でも聞かれるような内容であることがほとんどです。したがって口述対策の一環として想定問答集を作成することで、おのずとB問題対策にもなると思います。また、A問題と違って出題される類型はあらかじめ3類型に絞れるので、A問題よりは肩の力を抜いて構えておいてよいと思います。
■ 例示系問題はとにかく例示
A問題対策でも述べた通り、例示せよ系問題は頑張って例示しましょう。以下、実体験も交えてお話しすると、私が受験した第16回修了考査B問題の小問1は以下の内容でした。
この問題に対する私の第一印象は、「がっつり留意して借地権価格に反映させた借地権の態様なんて4つも無ぇよ!」(というか借地権価格査定にあたって借地権の態様で留意しなければならない事項が4つもある案件なんて、そもそも一般実地演習のお題として不適格なのでは…)でしたが、泣き言を言ってもしょうがないので、借地権価格の増減にほぼ影響しなかった借地権の態様についても無理やり書いた記憶があります。
自分のあの答案でどれだけの点数が乗ったのかは知る由もありませんが、挙げなきゃその分は0点なのは間違いないので、この手の問題は1点でも積み上げる気持ちが大事だと思います。
【12/26追記】対策用問題など
ここからは論述問題A・Bともに具体的な対策用問題(論文式試験の過去問が中心です)を挙げていこうと思います。初詣のお賽銭代わりに投げ銭してもらえると幸いです。
【注意】以下、論述A問題対策として有用そうな論文式試験の過去問を掲載しますが、過去問の問題文そのものは掲載しませんので、必ずご自身で論文式試験の過去問題集をご用意ください!(B問題対策用の予想問題は私オリジナルなので掲載しています)
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