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【ピル】血栓症の症状と予防策について解説します。【知らないと危険かも】

「ピルの副作用に『血栓症』があるみたいだけど、このまま飲んでいて大丈夫かなあ。症状とか、発症する確率とか知りたいな。」

こんな悩みに、ヤーズフレックス歴3年目の看護師がお答えします。

最初に伝えておきたいのは、「ピルって怖いんだよ!」と過度に脅かすつもりはありません。あくまでピルは、女性にとって有益な薬です。

その上で、こういう側面もあるから注意が必要だ、ということを伝えたいです。

今回は「血栓症」について知り、万が一の時にすぐ受診できるよう理解を深めていきましょう(`・ω・´)ゞ


気づいてほしい『血栓症』の初期症状

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初期症状にも色々ありますが、ポイントは3つです。

・脳の静脈塞栓を疑う症状
・下肢塞栓を疑う症状
・肺塞栓を疑う症状



①脳の静脈塞栓を疑う症状(激しい頭痛や吐き気)

脳の静脈に血栓がつまると、以下の機序で脳障害が起こります。

脳から心臓に血液を返す静脈が閉塞する
→脳浮腫が起こり、頭蓋内圧が上昇
→脳機能障害が起こる


✔主な症状

・激しい頭痛
・吐き気、嘔吐
・麻痺
・意識障害 など

割れそうな頭の痛みや、それに吐き気を伴う場合は注意したほうがいいかもしれません。
そして時間とともに症状が悪化することが多いのも特徴。

そのほか視野狭窄、舌のもつれ(しゃべりにくさ)などがみられたりします。

いつもの偏頭痛じゃないかもな、と思ったらちょっと敏感になってみてください。


②下肢塞栓を疑う症状(足の痛みやしびれ)

ふくらはぎや太ももの深いところの静脈に血栓がつまりることで起こります。

深部静脈血栓症、エコノミークラス症候群ともいいますね


✔主な症状

・腫れ
・突然の激しい痛み
・熱を帯びている感じ など

足の痛みって、筋肉痛や足の使いすぎのときに出てくるくらいで他はあまりないですよね。
わりかし、症状に気づきやすいと思います。

ただし、軽症では症状がほとんどでませんのでなにかを感じたら結構重症の可能性があります。

また、以前の熊本地震で深部静脈血栓症を発症した事例がありました。これは典型的な症状が最初にでてこなかった症例です。こちらにまとめました↓

参考:ピルを飲んでいた女性が車中泊をして血栓症に・・【地震大国の日本で気をつけたいこと】


③肺塞栓を疑う症状(激しい胸痛や呼吸苦)

血栓が血流にのって肺の血管に運ばれ、肺動脈が詰まることでおきます。
機序は以下のとおりです。

深部静脈に血栓ができる
→血栓が血液の流れに乗って、心臓から肺動脈に流れていく
→血栓が肺動脈で詰まる
→肺血栓塞栓症を発症する


✔主な症状

・呼吸困難
・胸痛
・動悸
・血圧低下
・意識消失 など

突然死につながることもあるので、これが一番怖いと思います。

突然の胸の痛み、呼吸困難感がでてきたら要注意です、、、


死亡例が3件開示されている話

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続いて、死亡例をみていきます。正直、若い人もいたりして結構衝撃でした。

いずれも「ヤーズ」を服用中に死亡するにまで至ってしまった3例です。

①頭蓋内静脈洞血栓症
②肺塞栓症
③肺塞栓症・下肢深部静脈血栓症


① 頭蓋内静脈洞血栓症

20歳代女性、貧血あり、クロチアゼパム内服あり。
月経困難症治療のためヤーズ配合錠を内服していました。

✔経過

・内服2日目 頭痛出現
・内服4日目 朝から頭痛・吐き気・動機あり、内科受診
・内服7日目 内科再診、頭痛あり
婦人科受診→ピル服用中止
脳外科受診→診察時点で明らかな麻痺症状なく検査予約して帰宅。嘔吐、歩行困難あり
・中止後1日目 体動困難になる
・中止後2日目 朝、ベッド上で失禁した状態で発見される。
病院での意識レベルはJCSⅢ-300、痙攣あり、CTの結果『脳静脈洞血栓』と診断される。
・中止後3日目 水頭症が悪化、呼吸不全→気管挿管
・中止後4日目 死亡

ピルを飲んでこんな早くに症状がでたの?!と驚きでした。
内服4日目から症状がでていますよね。

この方は、症状が出てすぐに受診行動を起こしています。

しかし、これだけ行動をおこしていたにも関わらず事前にわからなかった。
当時は『ピル』による副作用がそこまで重要視されていなかったのでしょう、、

やはり頭痛と嘔吐のセットは要注意なのかもしれません。


②肺塞栓症
10歳代後半女性、合併症なし。
月経困難症、子宮内膜症のためヤーズ配合錠を内服していました。

✔経過

・内服526日後 外出後21時ころ下宿に帰宅→連絡が途絶える
・内服529日後 室内で倒れていることを発見(526日時点と同じ服装)→死亡確認。死亡推定日は内服526日後。

個人的にこれが一番恐怖を感じたのですが、みなさんはどうでしょうか。

事前の症状があったのかは不明で、受診行動を起こすことなく倒れてしまっているんですよね。

一人暮らしだと、すぐに発見されないです。
なのでひとり暮らし勢は、何かあったときのSOS発信方法を検討しておくのも必要なのかな、とすごく思いました。

私のマンションはオートロックなので、突然倒れたりでもしたら超一大事です、、、


③肺塞栓症・下肢深部静脈血栓症
40歳代女性、子宮筋腫あり。
ジクロフェナクナトリウム、テプレノン、コハク酸ソリフェナシン内服あり。
喫煙なし、経妊2回。

✔経過

・処方207日後 右足がつる、痛みはなし
・投与中止から2~3週間前 右足の腫れ・痛みを訴え、整形外科を受診。
・処方369日後 呼吸苦を訴え、救急搬送。意識レベル JCS:I-3、頻呼吸、呼吸苦、血圧94/74、HR126
救急車内収容時、上肢屈曲、下肢伸展、強直。車内にて心肺停止。病院到着後、心拍再開、以降2回心停止
その都度蘇生させたが、意識回復せず。RCC7単位、FFP8単位輸血
・中止19日後 心停止、呼吸停止、瞳孔散大、対光反射なし。死亡確認。

救急搬送されたけど間に合わなかったんですね、、、
経過を見ると、懸命な処置がなされていたことがすごくわかります。

右足の腫れや痛みが、もしかしたら深部静脈血栓症の初期症状だったかもしれません。


血栓症予防のために3つのすべきこと

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ここまでちょっと怖い話をしてしまいましたが、血栓症のリスクって実は妊婦さんより少ないんですよ。

その少ないリスクをもっと少なくするために予防は大事。すごく簡単にできるので、今日から始めていきましょう(`・ω・´)ゞ

血栓が作られる要因は大きく分けて以下の3つです。

①血流の停滞
②血管壁の障害
③血液凝固系の異常

早速これらにアプローチしていきましょう。


その①:積極的に足の運動をする

足の運動を行うことで、血流の停滞を予防します。

とにかくこまめに足を動かすことが大事です。

なぜなら、一度血栓ができてしまうとそのあと急に動かしたときに心臓や肺の方まで血栓が飛んでしまうことがあるんですよね。
なので、ムラなく定期的に運動するのがポイントです。

運動の方法はいろいろあります。

・一時間に一度、つま先立ちをする(座りながらでも)
・時間を決めて、椅子から立ち上がり足を動かしてみる

意識すると意外と簡単に時間を作れますよ。

私は、一時間に1回つま先立ちをしてふくらはぎの筋肉を動かすようにしています。

自分のライフサイクルに合わせて、運動を組み込んでいくのがいいと思います。


その②:弾性ストッキングをはく

弾性ストッキングとは、足を段階的に圧迫して血流のサポートをしてくれるアイテムです。血流の停滞を予防する効果があります。

全身麻酔の術後の方や、病気で足が全く動かない方が治療のサポートとしてつけていることが多いですね。

治療にも取り込まれているほど、弾性ストッキングはエビデンスがあります。


その③:危険因子を減らす

危険因子があればあるほど、リスクは高くなります。


あなたはいくつ、当てはまっていますか?

・肥満
・喫煙
・脱水
・臥床
・エストロゲン療法

工夫次第で予防できるものが、唯一「脱水」です。

脱水になると、血液がドロドロするので血流が弱くなります。すると、血栓ができやすくなってしまうんですよね。

脱水対策としては、とにかく水分を飲むことです。


まとめ

今回は以上です。

ピルを服用中の方には、特に注意してほしい『血栓症』について執筆しました。

結構怖い記事になってしまいましたが、血栓症の発症率は0.6%と報告されています。
死亡してしまった3例の確率は、およそ0.000016%。

まあ、かなり低いです。
でも、用心するに越したことはないですよね。

今服用中の方は、初期症状を頭に入れて、万が一症状が出たらすぐに受診するようにしましょう。また、これからピルを考えている人はきちんと医師と相談したうえで服用するようにしてくださいね。

予防もすごく簡単なので、今日から始めてみましょう。


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