【NMJ Vol.1】原作者インタビュー/ならざきむつろ氏
noters' MOVIE JOURNAL 創刊号 寄稿
note映画部の原作第1号に確定した作品『あるnoterの生き様。』(ならざきむつろ著)。
本稿は上記作品の制作者にインタビューを実施し、テキスト上にまとめたものである。作品に込めた思いや、映画制作陣への期待とエールを、ご自身も映画に関して造詣の深いならざきむつろさんに語っていただいた。
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優れた創作物のなかには、制作者の期待以上に一人歩きをする作品がある。それはふれる人それぞれの胸に嵐を引き起こし、たとえようのない感動をもたらし去ってゆく。
今回このテキストで取り上げる『あるnoterの生き様。』。 (https://note.mu/muturonarasaki/n/nf26977033d95 )
これだけ反響が大きく、また読む人によって受け止め方に幅がある作品にわたし達が出会う機会は多くはない。むしろ非常に希少だと言っていいだろう。
本作のコメント欄を読み返すと、この小説が公開された直後の過熱ぶりがうかがえる。ある読者には恐怖を与え、また別の読者には納得を。自分の創作姿勢を正す決意を表明する者や、説明しがたい感動を覚え余韻に浸る者……。
みな、この主人公のnoterに自分自身を少なからず重ね見て、これからの自分のnoterとしての姿を心に描いたのではないだろうか。
――原作について、どう着想を得られたのでしょうか?
「もともとの発想は、noteで自身の日常を発信されている方のテキストでした。誰のどれ、というわけではないんですが。
皆さんが日常を、しかもまた魅力的に見える日常を日記のように公開されているのを見て、正直、『……良くネタが尽きないなぁ』って思って、そこから連想していきました」。
――多大なフォロワー数を誇るならざきさんのような方でも、他者の投稿をご覧になって、羨望を感じたりなさるなんて意外です!
そんな今回のストーリー、一番のこだわりはどういったところになりますか?
「やはりラストですね。
あのラストはギリギリまで思いついてなくて、直前に作中に転載させていただいたなかむら歌乃さんの『laugh』という絵と出逢うことで初めて彼の本心が理解できた、って気がして。
だから、あのラストが一番のこだわりです」。
――こだわって執筆なさったラストシーン、とても衝撃的でした。
映画化にあたり、どういったところを期待なさいますか? 脚本、演出、人物、音楽、どんなことでも結構です。
「個人的には全て監督さんにお任せしたいと思っていますが、できれば冒頭にnoteに関する説明のようなものが簡単にでも入ると、noteを知らない方でも楽しめるんじゃないかな、って思ってはいます。
なんせ映画化の話自体が夢みたいなものですからね(笑)」。
――これから作品を引き継ぐ製作陣に、エールをお願いします!
「映画製作には、相当な時間も費用も手間もかかります。
それだけの価値がこの作品にあるのかどうかは、正直私にはよく判りません。
でも、この作品は、いろんな方がいろんな解釈でもって読まれた作品です。
その作品を製作陣がどのような解釈で映像化されるのか、映画ファンの一人として凄く楽しみにしています」。
――映画ファンとおっしゃっていただいたところで、ならざきさんが好きな映画を教えてください。
「好きなのはやはり原田眞人監督作品ですね。『バウンス ko GALS』『KAMIKAZE TAXI』『わが母の記』『クライマーズ・ハイ』『狗神 INUGAMI』そして『タフ』。
彼の創りだす、往年のハリウッド映画にも似た見事な演出とカメラワークに、何度シビレさせられたことか。
特に『タフ』は、その全てが大好きです。問題作『リターン』も夏にDVD化とのことで、楽しみにしています」。
――まだまだお伺いしたいところなのですが、さいごに、ならざきさんはnoterとして、原作の「彼」のようなnoterをどう思われますか?
「彼は、ある意味ではnoterの、というか、ネットで自分の声を発しているすべての人の象徴のように感じています。
誰かに認めてもらいたい。
誰かに反応してもらいたい。
誰かとふれあいたい。
弱ってる誰かに手を差し伸べたい。
弱ってる自分に手を差し伸べてもらいたい。
そんな、誰もが少しは感じている願望や欲望や希望を一緒くたにして存在していたのが、彼なのかなと思います。
って、作者が登場人物について語るのは、本当ならナンセンスなんでしょうけどね(^_^;)」。
☆☆☆☆☆インタビュー雑感☆☆☆☆☆
オールラウンダー。ならざきむつろさんを一言で表すとしたら、この言葉に尽きると思う。
ならざきさんの作品は実に幅広いジャンルにわたる。切ない余韻を残すものから軽やかな笑いを攫ってゆくもの、きゅんと甘酸っぱい青春の味を思い出させてくれるもの、身動きできなくなるような恐怖をもたらすものに、ほのぼのと心に灯りをともしてゆくものなどなど……。
「あるnoterの生き様。」はそれらが見事に収斂された作品だと言えるだろう。
ところでならざきさんといえば、その豊かな表現力と持ち前のサービス精神でもって、数々のコラボレーション作品を作り続けていることでも知られている。
利他という言葉がある。おのれの利益だけを図る利己と逆の意味。他人に利益となるように図ること、自分のことより他人の幸福を優先し願うこと。
この利他の精神によって、ならざきさんの創作は確立している。
「人のために作り、人のために手を差し伸べる。それが結果的に自分の幸せにつながるんだ」(『今の私の創作活動の根源。』より引用)と彼自身が記しているように、彼は自分のことよりも他人の喜ぶもの求めるものを作り出すことに心血を注ぐ。その姿勢こそがしかし、作品にふれる者を深く感動させ、その感動が合わせ鏡のように制作者ならざきさんをも感動させ、幸福を彼にもたらす。
こういった創作姿勢であるからこそ、ならざきさんは多くの人を深い感動に導く『あるnoterの生き様。』のような作品を生み出すことが可能だったに違いないと、わたしは確信している。
noters' MOVIE JOURNAL 創刊号 寄稿
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