【NMJ Vol.1】原作者インタビュー/さとねこと氏



                noters' MOVIE JOURNAL 創刊号 寄稿

 note映画部の原作確定作品『』(さとねこと作詞作曲歌唱)。
 本稿は上記作品の制作者にインタビューを実施し、テキスト上にまとめたものである。
 作品にこめた思いや、映画制作陣への期待とエールを、さとねことさんらしい飾らない言葉で語っていただいた。

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 さとねことさんの『手』。
           ( https://note.mu/satonekoto/n/n53a6f39a8405 )
 この作品、原作とは言え小説でも漫画でもなく「歌」である。さとねことさん作詞作曲歌唱の歌。
 実はわたしは初めてこの作品が原作に確定したことを知った時、率直に言って意外だった。なぜ、歌なのか。
 この作品を実際に聴くまでは大変失礼な言い方だが、映画の原作になりうるのかどうか半信半疑だった。
 ところが、一度聴くと腑に落ちた。それどころか深く納得した。そして疑いを持った自分を恥じた。
 さとねことさんの持ち味である優しいメロディーとやわらかい歌声のなかに、手が紡ぎだす「つながり」がある。そう、人は手に感情を託しコミュニケーションを図る。
 大切な人に思いを届ける手段は言葉だけでは、ないのだ。


――原作について、どう着想を得られたのでしょうか?
「握手や指相撲、ゆびきりげんまん……手の動きに、出会いや喧嘩、約束……人生の様々なシーンを連想する時があります。
 手の動きを並べて、ストーリーを表現してみようと、挑戦しました」。――一番のこだわりはどこですか?
「こだわったところは、手の動作の表現のしかたです。はじめの歌詞は、断片的な手の動作を。途中からは具体的な描写を、入れたところです。
 断片的な表現は“今まであったいろいろな事”、具体的な描写は“今”をイメージしてもらいたいと考えました。
 一緒に過ごして、言葉もいらない二人を感じてもらえたら、嬉しいです」。
――言葉すらいらない関係って、素敵ですよね。
 では、映画化にあたりどういったところを期待しますか? 脚本、演出、人物、音楽、どんなことでも。

「もともと、曲でエントリーさせてもらえないかしら……と、アップしたのですが、原作となっていてびっくりしています。
 音楽が原作というのもあるのですね! 本当に光栄です。
 『手』を聴いて、自分の思い出をイメージした方がいて、のあちゃん(筆者註:のあnoirさん)が絵コンテを描いてくれて、嬉しかった。
 自分の作品がだれかのインスピレーションになる事はとても素晴らしくて貴重なことです!!
 これから、それをたくさん体験できる事を期待しています。
 ……そして、この曲は原作だから劇中等では使用してはもらえないのでしょうか。
 劇中かエンディング等で曲を使用してもらえる事も期待しています!
 (その際はぜひふくざわさんアレンジバージョンで! https://note.mu/charly_jp/n/na96a6f4067b7 )」。(筆者註:charly - ふくざわまさひろさんの『手 (Strings Version) プレビュー版』)
――これからこの『手』という作品を引き継ぐ制作陣に、エールをお願いします!
「歌詞であったり、色であったり、小さなかけらでも良いので、みなさんのインスピレーションに『手』がありますように。
 映画の作り方の順番はわかりませんが……素人がふと考える感じ、これから大変そうです!!
 私もお手伝いします。いっしょにがんばりましょう★ よろしくお願いします!」。
――制作チームに心強いお言葉、ありがとうございます。
 ところで、さとねことさんご自身の好きな映画は? その理由も簡単に教えてください。

「『下妻物語』です。初めて見た時、心にズカンと来て、その衝動で台本を書いて、友達とパロディ映画を1年かけて作りました。
 青春の思い出と一緒に、きっと一生これが一番好きな映画であり続けると思います」。
――制作に1年!? ひとかたならない熱意がうかがわれますね!!
 それではさいごに、さとねことさんにとっての「手」にまつわる思い出をお話しください。

「ここにいるのか、ふと心配になると手をかざします。平たい背景の中で手が浮き出て見えて安心します。
 なんか具体的じゃない話ですね……。あっ、指相撲が強いです!! 冗談ではなくて(笑)」。



       ☆☆☆☆☆インタビュー雑感☆☆☆☆☆
 
 さとねことさんの作品はやさしい。
 イラストや漫画の色合いも、ストーリー展開も、楽曲の旋律や歌詞も。時にトークノートやコメントの贈答の際に語られる言葉でさえも。発信することに細心の注意を払い、受け取る相手に対する配慮を忘れない。押し付けがましさのない作風が心地よく、人となりに癒される。
 それがよく表れている彼女の作品が『抱きしめたまま』、『まよなか』シリーズ、そして映画原作の『手』。
 誰もが心のうちに、たいせつに飾っているであろう「手」の記憶。握手したり指相撲をしたり、重ねたり約束をしたり。
 つないだ手の懐かしい記憶。そして愛おしい人と見つめ合いつなぐ手と手。言葉はなくてもいい。つないだ手にその指先に、握り返す力を込めるだけで……。
 『手』のサウンドノートのコメント欄にわたしがお邪魔した際にも書かせていただいたのだが、当時まだ交際中だった主人とデート中にケンカをして、お互いトゲトゲした言葉や態度をぶつけ合った後「ごめんね。これからも仲良くしようね」と、握手をしたことを、この曲を聴いて思い出した。仲直りのあといっしょに、自動車の窓越しに星空を見上げたことも。
 手にまつわる記憶。きっと、わたしだけではないはずだ。
 この曲はたくさんの人の記憶のなかのやわらかいところにそっと手をあて、ぬくもりややさしさで彩られた手と手でつながった記憶を、よみがえらせてくれるものだと思う。
 「つながり」というテーマにふさわしい作品。わたしは今、『手』を心からそう思うのである。

                noters' MOVIE JOURNAL 創刊号 寄稿



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