弱者男性の定義に関する個人的見解(5/11)
2024年5月12日(日)に弱者男性の定義を考えるバーというイベントを行うのですが、そもそも主催者が弱者男性の定義についてどのように考えているか事前に言語化したほうが当日の議論に役立つと考えたのでここに記します。
1
弱者男性とは、弱者であり、かつ、男性である人間のことである。
1.1
人間は、弱者男性である人間と弱者男性でない人間の2種類で構成される。
1.2.
弱者男性は、人間集合のうち、弱者集合と男性集合の共通部分である。図で表すと図1のようになる。一般的な通念として、弱者集合の中に男性集合が、あるいは男性集合の中に弱者集合が完全に含まれている包含関係ではない。
1.3
人間集合から弱者男性集合を抽出するSQL(Structured Query Language)は、全人類にユニークなIDを割り当てたhuman_tableに対し、sexおよびstatusがそれぞれmanかつdisadvantagedとなる条件での絞り込みとして記述する。
SELECT
user_id
FROM
human_table
WHERE
sex = 'man' AND status = 'disadvantaged'
2
弱者とは、ある尺度において序列づけられた人間集団のうち、集団の中での下位にいることにより不利益を被っている状態に置かれている人間である。
2.1
ある尺度とは、定量的または定性的な基準において、優劣、高低または大小などの評価される領域における判断軸である。
2.2
定量的な基準とは、所得や資産などの経済的な基準や、年齢・身長・体重・疾病の有無などの身体的な基準、労働時間や休息時間などの時間的な基準、交際人数・交友人数・家族人数などの人間関係的な基準など多岐にわたる。
2.3
定性的な基準とは、出身地や出身年などの出生的基準や、国籍・人種などの国際的基準、容姿・容貌などの外見的基準、コミュニケーションの上手さ・人間関係構築力・好かれやすさなどの対人能力的な基準など多岐にわたる。
2.4
ある基準において弱者である人間が、別の基準では弱者でない場合もある。
2.5
相対的な弱者と絶対的な弱者の二種類が考えられる。
2.6
相対的な弱者とは、集団の上位者との比較での判断ではなく、集団全体での位置での判断が妥当である。もし前者の判断を採用してしまうと、例えば、野球の強さという基準では、「藤井聡太は大谷翔平の相対的弱者」となり、将棋の強さという基準では、「大谷翔平は藤井聡太の相対的弱者」となる。しかし、彼らはそれぞれ野球または将棋での序列関係における頂点であり、彼らをそれぞれ専門外の領域での比較をして相対的弱者として判断するのは一般的な通念からしても相対的な弱者の判断として採用し難いものである。
2.7
絶対的な弱者とは、一般的な通念として、弱者であるとみなされることへの共通理解の得られた属性ないし条件を満たす弱者である。
2.8
絶対的な弱者として社会に認められている状況にあるかの判断基準として、合理的な配慮などの理由により、行政の支援があるかどうかで区別できる。
2.9
相対的な弱者と絶対的な弱者は、一致することもあれば、一致しないこともある。
2.10
相対的な弱者であるが絶対的な弱者でない人間は、ある基準において下位にいることで不利益を被っているが、合理的な配慮などの対象とみなされず、行政の支援を受けられず、社会からも支援する対象としてみなされていない人間のことである。
2.11
相対的な弱者であるが絶対的な弱者でない人間は、行政の支援を受けることまたは社会から支援する対象としてみなされることを目的とした社会運動や当事者運動へと自覚の有無に関わらず駆り立てられる外圧に晒されていく。
2.12
絶対的な弱者が公的支援の対象という目に見える形で区別されるのに対し、相対的な弱者は個人または人間の部分集団の主観などによって恣意的に弱者かどうかを判断されうる。
2.13
限られた福祉資源の分配という観点において、誰が弱者であるとみなすかは重要な問題になる。
2.14
弱者の定義に関する近年(2024年前後)の具体的な例として、トイアンナ氏の「弱者男性1500万人時代」では、次のaからpのいずれかの属性である男性を「弱者男性」と定義している。
a.障がい者
b.信者の家族
c.引きこもり
d.介護者
e.虐待サバイバー
f.犯罪被害サバイバー
g.多重債務者の家族
h.容姿にハンディのある人
i.貧困
j.性的マイノリティ
k.境界知能
l.非正規雇用・無職
m.コミュニケーション弱者
n.3K労働従事者
o.在日外国人、民族的マイノリティ
p.きょうだい児
この定義を採用すると、高学歴であったとしても、上記aからpのいずれかの属性を持っている男性は「弱者男性」ということになる。
2.15
行政が弱者支援の文脈で支援している対象の例として、東京都の人権課題が以下のように対象を挙げている。
女性の人権問題
子供の人権問題
高齢者の人権問題
障害者の人権問題
同和問題(部落差別)
アイヌの人々の人権問題
外国人の人権問題
HIV感染者・ハンセン病患者・新型コロナウイルス感染症等の人権問題
犯罪被害者やその家族の人権問題
インターネットによる人権侵害
北朝鮮による拉致問題
災害に伴う人権問題
ハラスメント
性自認
性的指向
路上生活者の人権
様々な人権課題
2.16
現代日本社会において支援される対象とみなされるかどうかの序列として、「かわいそうランキング」という言葉がある。
2.17
支援の優先順位の低い弱者男性が、支援の優先順位の高い若年女性の支援をバッシングすることに対して、若年女性を支援しない社会は弱者男性も支援しないと思われるため、弱者男性は支援の優先順位の高い人間への支援へのバッシングをしない方が良いといった意見もある。
2.18
弱者の聖化や社会で救いにくいタイプの弱者についての指摘は昔からある。
2.19
弱者男性を定義することの難しさは、弱者を定義することの難しさである。
3
男性とは、生物学的な性別が雄の人間である。
3.1
生物学的な性別が雄の人間の特徴として、男性型の生殖器を有することや、X染色体とY染色体を有することなどが挙げられる。
3.2
本論では、生物学的な男性(sex)と社会的な男性性(gender)を区別する。その理由は、弱者男性の定義をするにあたり、一般的な通念として、弱者男性の語が含む「男性」とは「生物学的な男性」のことであり、生物学的な女性で性自認が男性といったトランスジェンダーの人間のことを弱者男性の定義に含むことは、上記の一般的な通念と不整合な定義となりうるためである。
3.3
生物学的な男性(sex)にとっての社会的な男性性(gender)は、弱者男性の定義および用語が生まれた背景などを考える上で重要であり、弱者男性の定義に社会的な男性性(gender)を含まないことは、それを無視するものではない。
4
生物学的な性別が雄であるために、モテないことが弱者男性の苦しみとして主張されることが多い。
4.1
モテないことの定義も、人それぞれ違う可能性が高く、検討する余地のある言葉である。
4.2
「好き」を定義づける過程を描いた漫画・アニメ作品において、ある人物が別の人物を好きであることを調査するとき、その調査対象の選び出し方自体「ある人物が主観的に別の人物を好きであることを自己申告している集団」であることから、好きという状態は主観的に感情で決まるのでないかと結論されていたが、モテるかモテないかも本人の主観で決まる可能性が大きい。
4.3.
自身を非モテと思う男性の行動として、二次元コンテンツなどに没頭する、ナンパする、非モテ男性同士で慰め合うなどの行動がとられることがある。
5
弱者男性による犯罪などで、男性の攻撃性が発現されたとき、弱者男性へのイメージは悪化する。
6
弱者の助け合いは、リソース不足による崩壊の危機が常にある。
7
弱者男性が救われることは絶対にないだろう。
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