おにっ誌番外編 2023/10/28 | ユーロ円ショート損切りの是非

ふと気になって、今ユーロ円ショートを損切りすべきかについて数字で考えてみた。今もユーロ円ショートを保持したまま耐える覚悟を決めている方は多いように見える。そこで、もし1年耐えるとしたらどうなっているか…を過去データからの類推で分析してみた。

【免責事項】

  • 本記事の内容は筆者の私見によるもので、情報の正確性を担保するものではありません。

  • 特定の行動を推奨するものではありません。

  • 筆者はユーロ円ショートの取引を現在行っていません。外野による参考情報としてお読みください。

分析について

前提条件の設定

レート:1€=158円(執筆時点での概算値)
通貨量:1万通貨
政策金利:4.5%(執筆時点での値)
分析に用いた過去データ:1990年1月~2023年10月27日までの日足データ8,815個

分析方法

各日足データの始値以降260日間における、最高値および最安値を特定し、各始値との変化率を算出。8,556日分のデータを便宜的に8,556回分の試行データと見なして、

任意の一日の始値から1年経過する間に最大で何%の変動が起きやすいと見做せるか

を算出。この変動幅の区間ごとの分布を求め、便宜的に出現確率として扱う。さらに出現確率に変動幅を乗じることで期待損益を算出し、いくつかの観点から損切りの必要性を検討してみた。

1年以内に十分な下落は見込めるのか?

多くの人にとって最も気になる情報はこれだと思う。下表に示すように、任意のレートから▲8%~▲12%あたりの範囲において期待損益が最も高くなった。これはあくまでも過去に起こった結果ではあるが、仮に今後も同様の値動き傾向が発生すると考えるならば、▲8%程度の下落は待った方が期待損益が高くなるのでベター、ということだ。
ちなみに158円から8%下落すると145.36円だが、これは恐らく多くの方が「このあたりまで下がってくれたら撤退できる」と考えているレートではないだろうか。

任意の1日から1年間における最安値の変動率一覧

1年以内に暴騰してしまう恐れは?

次に、期待とは逆に1年以内に暴騰してしまう可能性について考えてみる。下表の通りだが、+6%~+10%の期待損益(損失)が最も大きく、高値方向に行けば行くほど出現確率が下がり、期待損益(損失)も小さくなることがわかる。
なお、1€=158円から+8%高くなると約170円。期待損益がぐっと小さくなる+14%高の水準は1€=約180円である。

任意の1日から1年間における最高値の変動率一覧

今後1年間でどういうレンジを想定すれば良いか

前述の2セクションから以下のことがわかった。

  • 下落に期待するなら▲8%程度の変動(約145円)を待つと十分な期待損益が見込める

  • 高騰についてはどこまでも耐えるべきだが、期待損失が急減する+14%(約180円)水準までは最低でもなんとか耐えたい

ここまでを読むと損切りせずに耐えることが正義のように思えてくるが、残念ながら金利をまだ考慮していない。

金利によるマイナススワップ影響

まずマイナススワップ額を計算する。

158円×1万通貨×金利4.5% = 71,100円

現在レート近辺では、1万通貨を1年持ち続けただけで約7万円の損失が出るということだ。

ここで下落時の期待損益を振り返ってみると、▲8%下落で約5.7万円。つまり過去のレート推移から考えた限りでは、1年間耐えてしまうと期待損益上は損失見込みの方が大きい。高値方向への推移確率も考えると、実際にはもっと損失見込みが大きくなるかもしれない。

評価損益については何とか凌げるかもしれないが、マイナススワップによる損益インパクトは体感以上に大きい。

ユーロ円ショート損切りの是非

期待損益が良くないのですぐに全損切りすべきか?という結論になりそうだが、必ずしもそうではないと私は考えている。

あくまでも、1年間耐えると期待損失の方が大きいというだけなので、耐える期間を短く想定する、というやり方も検討の余地がある。

例えば、今後半年でユーロ円の暴落が起きて145円に到達することに賭けて我慢し、期待した暴落がもし半年待っても起きなかったら潔く諦めて全損切り、というようなやり方だ。

数字のお遊びになってしまうが、上記のように耐える期間を半分にすればマイナススワップの影響は約3.5万円に抑えられ、期待損益の向上が見込める。

損切りできる状況ならば一括で全損切してしまった方が良いかもしれないが、今もまだ耐えているケースにおいては、様々な事情から損切りに踏み切れない可能性がある。

耐えると決めていても、いつまで耐えればいいのか、日々精神をすり減らしている方も多いように思う。そういった状況に対して、ひとつの考え方を数字で補強して提示してみた。

まとめ

  • 下落に期待するなら▲8%程度の変動(約145円)を待つと十分な期待損益が見込める

  • 高騰についてはどこまでも耐えるべきだが、期待損失が急減する+14%(約180円)水準までは最低でもなんとか耐えたい

  • マイナススワップの影響を考えると、今からさらに1年我慢することは得策ではない。マイナススワップの影響を減じるためにも、今から半年などのもう少し短いスパンを選択しに入れるべきかもしれない

  • 今すぐ全損切りする方が結果は良いかもしれないが、あと半年~9か月程度の様子見ならば期待収支も釣り合う、という見方もできるので一考の余地あり

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