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マイルCS 2021 ふりかえり

1 レース概要

(グラフの見方)
緑:今回のラップ
赤:過去10戦のうち、ラスト3Fの時計が遅い3戦の平均
紫:過去10戦すべての平均ラップ
青:過去10戦のうち、ラスト3Fの時計が速い3戦の平均

マイルCS2021結果

緑 タイム1:32.6 ラップ35.6-33.3 RPCI56.8
赤 タイム1:34.1 ラップ35.3-35.4 RPCI49.5
紫 タイム1:33.4 ラップ35.1-34.8 RPCI51.0
青 タイム1:33.0 ラップ35.4-33.9 RPCI54.6

今年のマイルCSはグランアレグリアが優勝し、現役最強マイラーの座を誰にも譲ることなく有終の美を飾りました。レースはRPCI56.8とスローペースでしたが、G1級の馬にとっては超スローだったようで、レース上りが33.3、勝ち馬の上りが32.7と、究極の瞬発力勝負になりました。

昨年もスローでしたので、阪神芝1600という舞台は、平場よりG1の方がペースが遅くなる傾向がありそうです。想像ですが、逃げ馬が本命クラスでない限り、1発を狙うためにはいつも以上にペースを落として、脚を余しておこうという作戦になるのかもしれません。実際、逃げたホウオウアマゾンは、4頭のG1馬に次いで5着と健闘を見せました。次回のマイルCSも引き続き阪神開催ですから、この推測を来年に生かしたいです。

2 グランアレグリア(1着)

スタートはそろっと出て後方からとなりました。秋天では追走のペースが遅く番手につけましたが、本来はこのくらいの位置取りがグランアレグリアの競馬です。スローペースをきちんと折り合い、道中は外目を回ることで他馬に邪魔されることなく進みます。4コーナーでは大外を回しましたが、内から伸び続ける3歳世代のG1馬2頭をものともせず、直線だけの競馬で軽やかに交わしてゴール板を駆け抜けました。

もともと能力は最上位かつ絶好枠でしたので、逆らいづらい馬でしたが、秋天後に蹄に不安が出て、香港マイルを回避してマイルCSを引退レースに定めたあたり、状態面では今一つと判断していました。しかし、格の違いとはこういうことと思い知らされるレースぶりで、アーモンドアイに完勝したマイル女王の姿を最後に見せてくれました。

牝馬ながらに父ディープインパクトの切れ味をもっとも強く受け継いでいる馬ですので、これが牡馬だったらもっとたくさんの産駒を見ることができるのに、という気持ちもありますが、2年後の春に生まれるであろう初仔が、今から楽しみで仕方ありません。

3 藤沢和雄調教師とゼンノロブロイ

「馬第一主義」を掲げ、多くの名馬を輩出した藤沢和雄調教師は、来年の2月に定年を迎えます。グランアレグリアはおそらく最後のG1馬でしょう。

藤沢調教師が手掛けた名馬は、タイキシャトル・シンボリクリスエス・レイデオロ・そしてグランアレグリアといくらでも挙がりますが、一番に思い出す馬はゼンノロブロイです。

クラシックではダービーで2着に入った素質馬でしたが、G1で好走はしても勝ち切ることができず、どこか物足りなさを感じさせる馬でした。それが古馬最初の秋になると、秋天・ジャパンC・有馬記念を立て続けに連勝し、「秋古馬三冠」を達成した史上2頭目の馬となりました(1頭目はテイエムオペラオー)。

前年に、当時の最強馬と謳われたシンボリクリスエスが引退しており、ゼンノロブロイに対して”空巣G1馬”などと心ない揶揄がありました。そういったネガティブな意見を知ってか知らずか、藤沢師はにこやかな笑顔で「どんな馬も、レースに走ることができないと勝つこともできない。ゼンノロブロイの今日の勝利は、彼が何度でも走ってくれたからです」といった趣旨のコメントを残し、現役王者を称えました。

うろ覚えの記憶から引っ張り出してきたので、実際の発言はまったく異なると思いますが、馬をレースに出すことの重みと、結果は馬が持ってくるものといった藤沢師の哲学を感じさせる内容で、大事に使われて素質を開花させたゼンノロブロイの活躍と合わせて、17年経った今でも思い出せるくらい印象に残っています。

netkeibaで関連記事を見つけたのでリンクを貼っておきます。当時の厩務員さんのインタビューですが、「馬第一主義」の話をしてくれていますので、ぜひ読んでみてください。
https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=34325

グランアレグリアもまた体質が弱く、使い詰めできない馬でしたが、藤沢師のもとで大事に使われながら、それに応えるようにG1を6勝もしました。上のインタビュー記事で川越厩務員さんもこう言っています。「最後まで大事にしてきた馬には、やっぱり良いことがあります」。

4 シュネルマイスター(2着)

内ラチ沿いを中団から追走し、直線では荒れ馬場を壁を縫いながら上り2位で2着でした。グランアレグリアとは枠順が逆なら結果も逆だったのでは、と思わせるパフォーマンスで、乗り替わりと関西初輸送というマイナス材料をはね返しており、間違いなく今後のマイル戦線の中心になる馬です。

恐ろしいのは、サンデーの血が全く入っていないにも関わらず、日本の馬場の瞬発力勝負に対応していることで、古馬になってからの活躍だけでなく、種牡馬になってからの期待も大きいです。競走馬にはいつまでも走っていてほしいロマン派の自分ですら、「怪我する前にさっさと引退して種牡馬入りした方がよくね?」と思うくらいです。逆に言えば、それほどの逸材が来年も現役で走ってくれるというのは幸せなことで、ぜひ最強マイラーの称号をグランアレグリアから受け継いでいってほしいものです。

5 ダノンザキッド(3着)

春で頓挫した2歳チャンピオンが帰って来ました。シュネルマイスターと合わせて、3歳世代が強さを見せつけています。他の話でエネルギーを使いすぎたのでここまでとしますが、今回のレースで一番の驚きと喜びはこの馬の3着でした。

6 カテドラル(9着)

本命で推し馬でしたが、出遅れのスローペースではこの結果も致し方なしというところです。ただ、出遅れがなくても掲示板に載れたかどうか、というところで、勝つには展開の助けが必要でしょう。マイル女王の引退と同時に、3歳世代の台頭が始まりましたので、G1では順番が回ってこないかもしれません。。。もちろん応援はしますが!

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