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’23日本ダービー ふりかえり

ラップグラフ

集計:13~22 日本ダービー 10戦

・平均ペースに見えるが、逃げたパクスオトマニカが道中大きく差をつける展開。2番手以降は近年でもかなりスローだった。

・実際、レース上りは35.3だが、33秒台の脚を使った馬は10頭もいた。

・おそらく原因は、内でスタートを決めた1番人気・ソールオリエンスがガチガチにマークされていたため。

1着 タスティエーラ

 スタートを普通に決めて馬なりで前へ。内側の馬たちが競らずに引いてくれたのは運が向いた。

 労せず自然な流れでソールオリエンスを内に閉じ込め、自分は動きやすい先行集団の外目を確保。レーン騎手の駆け引きの巧みさと、タスティエーラの操縦性の高さが合わさった完璧なポジショニング

 中盤から、逃げるパクスオトマニカがラップが緩める。しかし、タスティエーラをはじめとする先行集団は、ソールオリエンスを内に閉じ込めたまま、誰も包囲網を崩すつもりがない。むしろ、よりペースダウンし、逃げ馬との差は大きく開いた。

 向こう正面で起きたこのシチュエーションにも、後続勢は動かず。ここで、積極的にまくってくるような馬がいれば、結果はまったく異なっていたかも。

 集団が一団となって直線を迎えると、タスティエーラはソールオリエンスの鳥かごを解いて進出開始。しかし、すぐ後ろのハーツコンチェルトが新たな壁となり、ソールオリエンスの行き場は失ったまま。

 残り300mで完全にトップスピードに乗ったタスティエーラが前を捉える。内からはベラジオオペラが迫り、外からはようやく壁を抜けてきたソールオリエンスが一歩一歩差を詰めてくる。

 脚色からすれば、あと10mあればソールオリエンスが交わしていたかもしれない。しかし、先にゴール板を駆け抜けたのはタスティエーラだった。

 90回目の節目となる記念すべき日本ダービー馬は、久しぶりにサンデーサイレンスの血を持たない種牡馬の仔でした!ポストディープの種牡馬戦国時代を象徴するような結果で、これから多様な種牡馬の産駒が活躍し、どんどん競馬が楽しくなっていく予感がします!

 レースそのものは、ひとことで言えば「みんなソールオリエンス気にしすぎ」というもので、そのなかで自在性に優れたタスティエーラが、相手の良さを殺す競馬に徹し、勝利に繋げました。

 共同通信杯でかかって4着に破れたタスティエーラでしたが、今回はドスローをきっちりと折り合っての競馬。その意味では、弥生賞を使わざるを得なかった、想定より1戦多いローテーションが、むしろ貴重な経験となったと評価しています。

2着 ソールオリエンス

 皐月賞で負けて強しだったのがタスティエーラだとすれば、日本ダービーで負けて強しだったのがソールオリエンスです。

 先に書いた通り、レースの大半を前後左右にフタをされたままで、馬群で我慢し続ける経験も、まったく動けないままドスローに落とし込まれる経験も初めて。それがストレスだったか、道中の走りは少し固いように見えました。

 自分で動いて競馬ができたのは残り300mから。やっとステッキが入ったのもわずか残り200mから。不自由な道中で消耗していたか、反応は皐月賞ほどではありませんでした。

 それでも、G1馬らしい末脚で食らいつきます。しかし、鞍上の横山武史ジョッキーからすれば、喉から手が出るほどほしい日本ダービーの勝利は、またもや目の前で他の馬に奪われてしまいました。

 今日の人馬を見て、昨年のドウデュースと武豊を思い出します。前が有利とされる皐月賞で後ろから競馬して敗れたのち、日本ダービーではイクイノックスとのマッチレースを見事に制してみせました。武豊ジョッキーには、皐月賞すらも叩き台にしてダービーを狙う老獪さがありました。

 対してソールオリエンスと横山武史ジョッキーは、1戦1戦を勝ちにこだわりすぎました。それに応えられるほどの素質がソールオリエンスにあったことは幸運ですが、皐月賞で派手な勝ち方をしたことは、今日のマークがきつくなったことに当然繋がっています。
 
 また、能力ある馬ほど遅く走らされることを嫌がります。ソールオリエンスもその例外ではなく、京成杯でも馬群に入っているときはかかり気味で、途中から外を走る馬がいなくなって落ち着いていました。もし、京成杯で最後まで馬群で我慢させる経験をさせていたら、今日の最後の末脚はもっと鋭かったかもしれません。

 レースはレースでベストを尽くしつつ、大きな目標のためにはどこかで教育は必要なのだと思います。

 横山武史ジョッキーの試練は続きますが、彼のような若い天才が経験の壁にぶつかるというのは、本人にとってもファンにとっても良いことです。来年の日本ダービーでは、新しいパートナーと一緒に、今日以上の素晴らしいレースをしてくれることでしょう。

おすすめ馬の結果

タスティエーラ 1着 キタ━(゚∀゚)━!!!!!!!

 予想は完璧でした。

 3連単は場外ホームランを狙いすぎてますが(3着シーズンリッチ)、単勝・馬連・ワイドと本線が完全に的中し、昨年に続いて日本ダービー2年連続的中となりました。

 普段はせんえんとかしか賭けていないのに、ダービーで気が大きくなっていちまんえんも賭けてしまったので、払戻金が多くて嬉しいというより、損しなくて良かったとホッとしています。

追悼スキルヴィング

 2番人気に推されていたスキルヴィングは、レース中、心不全を発症して予後不良となりました。馬券が的中した喜びはつかの間で、なんとか彼の無事をと祈っていましたが残念です。

 予想のときは「面白みのない走りできっちり勝ち切る」などと、ちょっと揶揄する書き方をしましたが、中長距離での大物感ということならソールオリエンスよりも上で、父キタサンブラックや母父シンボリクリスエスのように、古馬になったら手が付けられなくなるかもな、と思っていました。

 鞍上に怪我をさせることなく、日本競馬の頂点たるダービーを完走。偉大な馬です。ありがとう。


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 メジロマックイーン対トウカイテイオーの天皇賞・春が、競馬に関する最初の記憶。母がテレビ観戦しているところを、興味なく横目で見ていた。レース後、母は嘆いていたから、トウカイテイオーを応援して馬券を外したらしい。

 数年後、ウイニングポストやダビスタに触れ、本格的に競馬に目覚める。ナリタブライアンからディープインパクトまでの時期に熱中。一番好きな馬はヒシミラクル。2022年には牧場まで出向き、十数年越しに初めての対面を果たした。

 ディープインパクトの引退と時期を同じくしてプライベートが忙しくなり、しばらく競馬から離れる。それでもオルフェーヴルの凱旋門賞チャレンジは、リアルタイムでテレビ観戦した。

 ウマ娘ブームをきっかけに本格的に競馬に帰還。以後、予想記事を書いたり、血統を調べたり、牧場見学に行ったり、一口馬主になろうとしたりと、競馬が趣味の中心となりつつある。

 犬と馬が好き。

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