見出し画像

名ばかりのプロが噛む犬をつくる

先日、新規のお客様が入った。
予約時の電話で柴犬、オス、5ヶ月というのは伺っていた。

柴犬は気質の強い所があり、人間と対等でいようとする部分があるので無理に抑え込んだりされる事が苦手な子が多い。
でも、人間と家の中で生活していく時にシャンプーや病院での診察が出来なくなるのは飼い主さんにも苦痛になる。

シャンプーが苦手な子が多い柴犬だが、仔犬の時にしっかりと教える事が出来れば、その後のシャンプーは問題なく出来る事も多いのだ。
その事を理解されている飼い主様からの依頼の電話を断る理由はない。

5カ月と言えばそろそろ反抗期近くなる事、体格もしっかりしてくる頃なので楽しみに予約当日お待ちしていた。

初めにお店の説明などで少し時間を頂くのだが、その間もかなりのヤンチャぶりを発揮していた。
面白い顔で「パクパク」と遊びが入っているのだが噛みつこうとしていた。
体格もかなりしっかりとしていて予約時に伺っていた体重より1㎏以上増えていた。

説明が終わり、トリミングに入ったのだが体温を測るのは全く問題なし。
次に爪切りをしようと思ったら・・・
かなりの抵抗にあってしまった。

飼い主様からお聞きすると、過去に2回程爪切りをしたそうだ。
1回目はペットショップで。
この時も大騒ぎで大変だったそうだ。
2回目は動物病院で。
この時は一人では無理だからと裏に連れて行かれて保定の人間が別途必要だから料金が¥1000-プラスになったそうだ。
そして、この時もかなりの大騒ぎだったそうだ。
どちらも、その犬を購入した大型ペットショップだ。

私で3回目だったわけだが、7.4㎏になっている体格で本気で抵抗されると私でもギリギリだったが、ここでやめるわけにはいかなかった。
飼い主様から過去の話を聞いたので作戦変更をした。

とにかくこの柴犬がこの先何年も生きていく上で必要な事だからトラウマの上書きをしなければならない。
爪切りの振動が耐えられないのだろうとやすりを爪に当てる作戦に切り替えた。
それでもやはり一度嫌な事をしたので抵抗が半端ない。
でもここでやらねば、この先は体ももっと大きくなるし、噛みつく事で自分の思いが通る事を覚えてしまうと厄介なのだ。

何とか、飼い主様にも了承を得ながら犬がイケナイ事を学ばないように配慮しながら戦う事、数分・・・。
やっと少し疲れてくれた。

そこでやすりで爪をいじる事に抵抗が無くなる。
ここまでくれば終わりにして良い。

正直、今回がギリギリのところだった。
これが1か月先だと私の押さえが効かなかったかもしれない。
間に合って良かった。

シャンプーも最初は手こずったが興奮させないように動きをセーブしてシャンプーしたら最後には気持ち良さそうにしていた。

ドライヤーは耳の中に風が入るのを嫌がる柴犬は多いので様子を見ると案の定この柴犬も嫌いだった。
耳に風が入らないようにしてやれば問題ない。

ただ、この事が分からない「名ばかりのプロ」は確実に存在する。
犬に従わせることだけを力づくで教えてもその後診察時に触れなくなる事も多いのだ。

現にこの柴犬も5カ月にして既に爪切りに対しては酷い抵抗を見せる。

正直、このようにこの柴犬に教えた「名ばかりのプロ」の尻拭いをしている感じがある。
でも、飼い主様は獣医やトリマーは誰でも上手く出来ると思っているし、自分の犬に悪い事を教えるわけはないと思っている方も少なく無い。

今回、飼い主様が賢明で一生懸命探して下さり私のお店を選んで頂けた。
関わった以上、この柴犬と飼い主様にとってベストな選択をしていきたいと思う。

気質の難しい犬を迎えた家族は、しっかりと選ぶことが重要だとおもう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?