過去話 1

人生に絶望していた。 

小学生の時から感じていた不穏な感情が、或る事を切っ掛けに17歳で瓦解した。死のうと思った。

しかし、自殺などしては家族の風評がどうなるか分からない。親は割とどうでも良かったが妹は好きだった。だから、誰も私を知らないところで死にたかった。そして自分の死体の事で迷惑をかけてしまうのも嫌だった。『完全自殺マニュアル』を愛読していた私は、人に迷惑をかけずに死ぬ事がひどく難しい事は知っていた。

そんな折、出会い系で会った男性に女性が殺されたというニュースを見た。

これだ、と思った。

これなら全てが私の自業自得、自己責任、私が勝手にやって勝手に死んだと思われるだろう。

実行に移す為、出会い系サイト(サイト名は忘れた)に登録した。プロフィールをどんなものにしたのかは覚えてないが、年齢を19歳だと偽った事だけは覚えている。当時は年齢確認など必要無かったのだ。

風呂に入る直前に登録し、髪と身体を洗って半身浴がてら携帯を開いたら

100通超のメッセージがきていた。

しかもまだ届き続けている。

恐れ慄いたが、目についたメッセージを開いては閉じ、開いては閉じ、どんな人が殺してくれそうなのか全く分からないまま、とにかく返信してみようと思って相手のプロフィールも見ずに返信した。

遣り取りの内容は覚えていない。

が、恙無く会う事になり、何でだか海へ連れて行ってもらって貝殻を拾って満足して帰ってきた。

楽しかったのだ。

ドス黒い日常に彩りが宿り、私は再度その人と会った。朝から動物園に行った。これも楽しかった。

数回目にして、ホテルに誘われた。

どんなものかは知っていたので了承し、特に何の感慨も無く初めての性行為を迎えた。今気付いたが、別に脱ぐ事を恥ずかしいとも思わなかったので倫理がバグってるのは最初からだったのだと思う。

初めては特に気持ち良くも何とも無かった。痛くも無かった。喘ぐ真似をしてみたけど、良く分からなくってやめた。

違和感を感じて自分の左手を見た。美術の授業で彫刻刀を使った時に怪我してしまい、ガーゼと包帯を巻いていたのだが、解けてきたような気がして。

お風呂では濡らさないように気をつけていたのだけど、やっぱり濡れてしまったようで。

包帯に、血が滲んでいた。

それが目に入った瞬間、私の意識は真っ白になった。

良く分からないけど声は出てたようだしイった様相を呈していたようだ。完全に忘我状態、自分がどうなったのかも把握出来ない。

「大人の女になったね」とか言っていたが、そんな事は最早どうでも良かった。さっきのは一体何なのか。

この直後、自分の目的を思い出したのでこの人とはもう会わない事に決めて、更にヤバい人を見つける事に注力する。二人目は記憶に無いが、それなら恐らく「ハズレ」だったのだろう。

三人目が、とかくヤバい人だった。狙ったとはいえ、自分の人間観察力にゾクゾクしたものだ。


…と、慣れない引きのような事をして終わる。

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