#001 スーパーカラフル

記念すべき初回で取り上げるのは、『スーパーカラフル』。

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2004年にシングルとして発売・同年発売のフルアルバム『純愛サプリメン』の1曲目を飾っています。

まずこのアルバムは、どうしても、CDとして買ってほしいのです。

オビウラ(CDを開けないと見れない帯の裏の部分)オフザケなんてのは当たり前で、とんでもないところに川柳が書かれているわ、歌詞カードにはガブペコ商店(おそらくVo.)の世界観バクハツのマンガが入っているわで( "マトリョーカシ" がまあかわいいこと)。

4人時代のスムルースは本当に遊び心があって、というかもういいわ、何なんだよ、というくらい遊んでいて(笑) そんなところが大好きでした。

「誰かは不幸で 誰かは報われて」というのが何とも人間的というか、不条理なんだけど理にかなっている、みたいな、人間という生き物のあまり綺麗ではない部分を表しているなあと思っていて、それを曲序盤に持ってくることで、重くなりすぎず爽やかに歌い上げているように感じます。

「乾いた体に ミネラルレインボー」

"ミネラルレインボー" が何かはわからないけれど、何となくわかるというか、この "ミネラルレインボー" が『純愛サプリメン』の1曲目を飾るカギのひとつになっている気がします。

すうっと心に入ってきますよね、夏場の外仕事から帰ってすぐのポカリみたいな。

そうそう、この曲はポカリのCMソングっぽい。

純愛・サプリ・ミネラル・ジェリービーンズ。どこか共通点というか、山手線ゲームギリOKみたいなところがありますよね。ね?

「ほぐれつちまつた / はがれつちまつた 悲しみに」

中原中也の「汚れつちまつた悲しみに」からきているのでしょう、Vo.&Gt.トクダさんの文学に対する造詣の深さが伺えます。私とあおたながよく話す "徳田文学" ってやつは、いろいろな人や作品、触れたものをトクダさんが "徳田文学" として昇華して、スムルースという自身のバンドに還元しているような気がします。いや "徳田文学" って何。(でもそれが『イヌマニダイサクセン』だから)

"ミネラルレインボー" と、かの有名な詩人の作品の一節を組み合わせるという。この"組み合わせ" のセンスは、スムルースのスムルースらしさを増幅させる部分だと思います。

サビ。

「そして僕らは必ず淋しくなった そしてそのうち忘れていった」

"寂しい" ではなく "淋しい" です。

さんずいが "涙" を表している漢字らしいです。

どうして、何がさみしいのか。

それはもしかしたら、誰かが不幸なときに誰かは報われている、ということなのかも。

「何度も塗り重ねる スーパーカラフル」

"塗り重ねる" は、"失敗しても上から塗っちゃえばいいじゃん!" とも "経験や思い出を上書きしていこう!" とも、また別のニュアンスともとれる気がして、その "別のニュアンス" っていうのは、聴く人のタイミングや状態で変わったり見つかったりするのではないかと思います。実際、私もそうでした。

"ニュアンス"… というか、感じ方、みたいな点でいうと、MVのラストシーンはいつも「どっちかな?」と思います。水のないプールの中に自分たちとお客さんを入れて演奏した後、誰もいなくなったプールを4人がデッキブラシで掃除しながら空を見上げる。

演奏(ライブ)をして、「楽しかったなあ」と思い返しながらその後掃除をしているのか、あれは夢で、「あんな風になれたらいいなあ」と一生懸命掃除をしているのか…

トクダさんの歌い方が特徴的なのか私の耳のつけ所が偏っているのかわからないのですが、この曲のこの歌詞のこの文字がたまらない!みたいなのがあって(音源限定だったりライブ限定だったり両方だったり)この曲でいうと、サビ前の「塗り重ねる」や「吹きすぎる」の "る" が限りなく "ろ" に近い発音であるところや、「そしてそのうち」が「そしてそのーち」と聞こえるところです。

つまり、大袈裟にわかりやすく文字に表すと「何度も塗り重ねる〜」が、私には「何度も塗り重ねろ〜」、「吹きすぎる〜」が「吹きすぎろ〜」に聞こえるんですね。

「塗り重ねろ!」「吹きすぎろ!」という命令形に聞こえる、という意味ではありません(吹きすぎろ、とは)。

「未完成を重ね続ける」

途方もない話だなあ、と思う私は大人になりました。気づいたとき、個人的にはあまりうれしくなかったです。

それはなぜかというと。

この曲を聴きだした頃私は、未完成でもいいんだ、重ねていけばそれでいいんだ、未完成を "重ね続ける" ことに意味があるんだ、と希望を持ったものでした。

前述の通り、スムルースは命令形のメッセージがあまりない=押し付けがましくない ので、気づくときに気づくんですよね。

それはスムルースからの "プレゼント" であると捉えています。"気づき" と、"気づくまでの時間"。

ちょっと綺麗なことを言いすぎました。

まあ、歳を重ねればその分いいことも悪いことも、綺麗な部分もそうでない部分も、そのどちらでもない部分を知っていくので仕方ないのかなあという気もしますが、少し "淋しく" なりました。

意図せず、おあとがよろしいようで。


スーパーカラフル / スムルース

https://youtu.be/aiqBJTkVSiE

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