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それは左右非対称だった

4月末日、快晴、風力3 10時26分発各駅停車新宿行、7号車の床を細いものが蛇行中。頭らしき塊があり、それに先導されて、離れてつながる細い紐状の胴体が移動している。南に進む電車、床の中央、南北に吹く風にのってそれが移動する。動きを目で追う。

それは向いの座席よりで止まり、ふわりと頭をもたげ、こちらを向いた。停止した姿をよく見ると、頭も胴体も左右非対称の出鱈目な構造をしている。床上5センチの気流の風向きが変わり、それがこちらにむかって進んでくる、来るのか、という瞬間、南からやってきたハイヒールに踏みつぶされた。頭を失い、動きがとまり、それの魂は瓦解して、埃と髪の毛の塊になってしまった。