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アンビエントお茶会#3感想

これはアンビエントお茶会の自分のDJの選曲テーマがゆらぎだというツイートに連ねての今回色々考えたことの怪文書です。

1.ゆらぎ・絶え間なさ

ゆらぎというのをテーマにしたことについて、まずシンセのゆらぎが第一義ですが、ゆらぎながらもひとつの音楽としての平衡を保っている。そのゆらぎの絶え間なさが自分はアンビエントのひとつの要素ではないかなと考えました。

絶え間なさを表すために用いられるのが、川のせせらぎや浜辺に打ち寄せる波、風の音、鳥の声に代表される生物たちの営みetcなのかなと。長い周期で見ればこの絶え間なく起こっているように見える現象も何かしらの変化(ゆらぎ)を見せながらその体を保っています。

それらはもちろん子どもたちの遊ぶ声もそうだし、ずっと垂れ流しにしているCM音も、レストランの騒々しい会話群もアブストラクトな物音も場合によってはいま現在の人間としての営みの絶え間なさ、そしてその人間活動のゆらぎを表すに足るものだと思います。



2.アンビエントは慣れの芸術なんじゃないか

そして例に出したこういったものってすぐに慣れますね。厳密には毎回違う現象なんだけどそれにラベル付けすることで同じ枠組みを作って、同じ現象として脳内で処理をする、そうすることで毎回新しいものとして処理をする(例えば毎回驚くとか)よりエネルギーの節約になります。エネルギーを節約し、効率よく行動出来るようにすることは生きていくうえでは重要なことです。これを適応と言います。

環境に慣れて適応するという能力を逆手に取って「聴かせないように聴かせる」のがアンビエントの端緒なのだと思います。ブライアン・イーノもアンビエントの着想を得たエピソードでははじめは聴いていたのに聴いていることを忘れていたのではないかと想像します。そういうことから本来は無いのだけどあたかもそこにずっとあるかのように環境に混ぜ込んでしまうのが環境音楽=アンビエントなのだなと自分は理解しました。

そして、その環境音楽がシンセ音楽としての色味を帯びたこと、そのフォーマット自体がアンビエントやニューエイジとして様々な解釈がなされ、90年代には陳腐化した。しかし近年に至り資本主義的な構造がゆらいできたタイミングで興ったVaporwaveによる過去の商業音楽やモール音楽などの商業的営みが諧謔的にではあれど顧みられた。結果、世界的なレトロスペクティヴの流れとしてポスト・アンビエントの時代が来ているのが今なのかなという風に思いました。



3.人間もゆらぎでできている

話は変わって、人間の身体自体もよく観察するとゆらぎがあります。手技療法の世界ではそれをtide(潮)と呼びますが、身体を構成している無数の細胞が呼吸をし、体液を循環させる中でゆれが起こる。これが医学的かどうかは分かりません。でも自分の感覚で言うとナメクジやカタツムリが動く時のようにグニョォ〜という小さなうごめきが極小さな力で身体に触れることで触知できる。小さな力であればあるほど身体ってこちらに変化を見せてくれるんです。強い力で身体を変えようとすると変化がわからなくなるんです。これってめちゃくちゃアンビエント的ですよね。

そして生物には無数の細胞が常に生きたり死んだりすることでひとつの個体としての恒常性を保つホメオスタシスという性質があります。これもゆらぎの一種で、この少しずつ身体の中身を調整しながら、状態の浮沈を繰り返しながら一定の状態の維持を目指すという性質があることで環境の変化にも耐えられるようになっています。要するに非線形の波形を辿ることで逆に個体を安定をさせてるんです。

だから生物には「完璧な状態」というのはありません。常にゆらぎながら、行きつ戻りつを繰り返しながら「最善の状態」を目指しているとでも言った方が合っていると思います。実際何が最善かすらも観測出来るものではないので分からないんだけど、環境の変化に応じた最善を選択するYes /Noゲームに長らく生き残ってきたのが私たちですから、とにかくゆらいでることって自分達の生き物としての状況にそぐうんだと思います。だから環境を構成する私たちも生きているだけでアンビエントなんですよね。



4.アンビエントお茶会ありがとう

そういう意味では今回のアンビエントお茶会、奇縁で自分たちの器以上に大きな会場を用意していただけて、正直自分は不安もだったんですが(一番初めのイベントに来てくれたの2,3人だったので)、SNJOくんをはじめとしたB1の運営の方々、セット設営の中心を担った李李華店さん、微風ゾーンことツジオさんのサウンド・インスタレーション・ライブ、らるぷりさんを中心とした我々DJ・トーク陣がかなり最善目指して頑張った熱というか肉感みたいなものが伝わってたと思います。良いイベントだった。ありがとうございました。僕はのっけからミスかまして落ち込んでましたけど、それをらるぷりさんがありがたいことに即興でカバーしてくれて、自分が機能不全起こしても他の人がカバーしてくれるっていうのもすごい肉体的だと思います。もう過去3回くらい自分がDJ出来なくてらるぷりさんやタイさんに代わってもらってます。ちょっとミスが多すぎますよね。すみません。あと今までwavに対して絶対的な信頼を置いていたけどwavのことはもう今後信用出来ないです。やっぱり絶対視ってダメなんです。


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