ありふれたものでつくるそうでないもの

 初めましてでない方もそうな方も、この世にたくさんあるテキストの中からこの文章を開いてくださってありがとうございます。「星のようなもの」第1回です。今回はイントロダクションです。

 わたしはいまのところアクセサリーを作ってぎりぎり生計を立てているものです。と、いうとアクセサリーデザイナーなんですか!? すごーいという反応が返ってくることもしばしばですが、どちらかというと河原で面白い動きをして投げ銭で暮らしているというほうがイメージとしては近いです。アクセサリーも宝飾店で売っているようなご立派なきちんとした金だの、プラチナだのというものではなくて、メッキのチェーンや、あまり高くない石や、アクリルのパーツなどをたくさん使った、だいたい一万円以下のささやかなものが大半です。

 ところで、いま上に挙げたような素材はアクセサリーの素材屋さんにいくと、普通に、個人でもそれなりの値段で買うことができます。いわばこの世にありふれたもの。アクセスするのに手間がかかるものもありますが、わたしの使っている素材は、だいたいのものが簡単に手に入るでしょう。

 どうして、わたしがそのようなありふれたものたちを使って、なんとか生きていくくらいのことができているかというと、わたしが運送業であり組み立て工場であり詩人であるからです。わたしは「さみしいなにかをかく」というおもちゃをもっており(詳しくはこちらにまとめておりますhttp://blog.shinsei.nu/?eid=1428210)

 これを使って大体週数回のペースでアクセサリーを作ってインターネットに載せております。これにはお題とお話がついており、「お話にアクセサリーがついてくる」のような側面があります。わたしは物心ついたときからお話をずっと作ってきたタイプの人間なので、別に普通のことなのですが、ありがたいことに面白いと思っていただけているようで、ずいぶんよい評判を頂戴しております。

 作っておりますものをごらんいただければおわかりいただけるかもしれませんが、穴の空いていない原石のままの石や、時計を分解した歯車類をわたしはよくつかいます。かつては、おもちゃのカメラや、ブリキのバッジなども素材としていました。これはいわゆるアクセサリーの材料屋さんではないところから買ってきたものが多くあります。また、旅行先でボタンやリボンを求めることも多いです。

 ようするに、そういった世界のどこかにバラバラにあるものを、わたしの理解できる範疇で読み解き、適したように組み上げ、購ってくださった方にお届けする、というのがわたしの今のところの仕事です。あといまはもういない人の言葉を印刷したリボン、というのも作っていますが、それもまあ、そんなものです。

 へんな仕事でしょう? でも、わたしはこの仕事が好きです。そしてその仕事で、最近新しく始めたことがあります。お客様から、形と色と、お題を三つ頂戴してつくるかんたんなオーダーシステムです。

 これはいろいろな使い方がありますが、例えばあなたがとても好きな本が一冊あったとしましょう。あなたはその本を読むとすこし寂しいような気持ちなりますが、その読後感がとても好きです。登場人物が一心に何かを信じているところも好きだし、結局どこかにたどり着いたのか、どうか、読んだ人に解釈を任せるような終わり方も好きだとします。そしてまた別にあなたが青いブレスレットが欲しかったとします。

 そこでですね「一心に信じること」「この世のどこかにある場所」「書かれた言葉」みたいな感じでお伝えいただければ、こちらからは石やガラスを並べた写真をお送りして、「信じることの強さを不透明なラピスラズリのビーズで表そうと思います。チクチクうにうにした形は個人のひたむきさと、周りを構わない破綻の香りが少しします。黄色と青が入り混じるガラスビーズはチェコのものです。この世のどこかにある場所にふさわしい色味だと思います。明らかに地球ではない星のようです。アジャスターを留める部分には不純物がたくさん入った水晶のビーズを。黒いスポットが文字を書くためのインクのようです。つめたい静かな寂しさを感じていただくべく、チェーンはシルバーで統一しました。アジャスターの先には真鍮の流れ星を、どこかにたどりつけるためのお守りとしておつけしようと思います。」

 みたいな感じで、ほぼほぼポエムで、お返しさせていただくというのをやって、お気に召したらお作りさせていただき、お届けするというのをやっております。

 これがまたボチボチ評判も良く、友達にもご利用いただいているのですが、上のようなポエム部分をとても面白いと言ってもらい、こういうコラムを書いてはどうかと勧められて、それは面白そうだなぁと思い、このような連載を始めました。どうぞ宜しくお願い致します。

 次は水晶の話でもしようと思います。

 下はオマケ情報。今すぐ石が欲しい、石ってどこに売ってるんですか!? ってひと向けの石売り屋さんの話です。初心者向け。


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