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【社会起業家取材レポ #25】昆虫の力でゴミを資源化し、世界の食料不足を解消する。 ~視察レポート編~

SIACの学生が東北で活動する社会起業家の取り組みを視察・取材する「社会起業家取材レポ」。今回は、SIA2022卒業生の石田健佑さんのもとへ視察に伺いました。

インタビュー編はこちら


石田健佑さんについて

株式会社TOMUSHI代表取締役COO
高校を卒業後、東京地下鉄株式会社に就職するも、単調な日々にやりがいを感じることができず入社から1年で退職。この出来事がきっかけで父親と喧嘩をし、家出を決意する。当時19歳だった石田さん。SNSで人脈づくりをしていく中でDMM.comの社長と出会う。この出会いから一般社団法人DMMアカデミーDMM.com経営企画室に入り、経営について学ぶ。その後、弟も含めた5人の友人とSNSマーケティング等の事業を行う会社を起業するも、数か月後に意見の相違や方向性の違いから事業は頓挫してしまう。東京を離れ、秋田県大館市の祖父母の家へ身をよせる中、幼少期に「ムシキング」にハマっていた熱が再燃、弟の陽佑さんとカブトムシ取りに没頭する日々が続く。趣味の延長線上として、飼育していたカブトムシの販売事業を始めようと祖父母や友達からお金を集め「株式会社リセット&マラソン」を創設。現在は、社名を「株式会社TOMUSHI」に変更し、カブトムシとともに有機廃棄物の増加や食料資源難などの社会問題に取り組み、世界を救う活動を行っている。

カブトムシがゴミを食べる!?

石田さんは現在、弟の陽佑さんとともにカブトムシの力で世界を変える事業を行っています。その内容はなんと、カブトムシがゴミを食べるというもの。

現在、世界では、有機廃棄物の焼却処理によって大量のCO2と廃ガスが排出されています。世界中で大気汚染などの問題が深刻化する中、石田さんたちは有機廃棄物の処理をめぐる課題に目を付け、人が生み出した有機廃棄物をカブトムシに食べさせて処理をしているのです。例えば、秋田県のきのこ農家から廃菌床を引き取り、これをカブトムシのエサとして活用しています。

現在は、全国各地に有機廃棄物を処理するプラントを設置し、廃菌床以外の有機廃棄物もエサ化をしカブトムシを通じて処理をしています。これらのエサを食べて育ったカブトムシは、販売をしたり、カブトムシから抽出したたんぱく質を養殖や畜産の飼料の代替品として生まれ変わらせているといいます。また、最近では、カブトムシが廃棄物中の炭素を減らし窒素を増やすという特性が明らかになってきたため、その特性を活かした有機肥料の開発など、脱炭素社会に向けた取り組みも行っています。

TOMUSHIとカブトムシ

私たちが今回視察のため訪問したのは、秋田県大館市にある一軒の民家でした。ここは石田さん兄弟の祖父母の家でもあり、株式会社TOMUSHIを起業した創業の地でもあります。民家の中に入ると中はカブトムシを始めとする昆虫たちのおもちゃなどがたくさん飾ってあり、石田さん兄弟の昆虫に対する熱い想いを感じることができました。

石田さんとのお話では、高校卒業後に就職をするもすぐに退職をした話や弟の陽佑さんとの関係、家出をし名字を変えた話など、TOMUSHIを起業するまでの石田さんの歩みについて聞くことができました。また、現在行っている事業内容についても詳しくお話を聞かせていただきました。例えば、TOMUSHIの基幹事業である、カブトムシによる廃棄物処理活用プラント事業では、各地から集めた有機廃棄物をまず一次受け場に回収し、二次受け場で微生物を投入、カブトムシでも食べることができるようエサ化を行っているそうです。この微生物やカブトムシの糞のサンプルも実際に見せていただきました。そして、この仕組みのプラントを、現在全国に37か所設置しており、年間で1200トンもの有機廃棄物を処理しているそうですが、実はこれでもまだ世界の有機廃棄物の約0.0004%しか処理できておらず、まだまだこれからこの事業を展開していく必要があるといいます。その為、この様な取り組みが行われている事を周知し、理解を広げていくためにJRなどと共同で全国14ヶ所でカブトムシをテーマにしたイベント事業も行っています。ゴミの処理だけではなく、子供達の教材としてもカブトムシを活用しているそうです。

TOMUSHIの起点

お話を聞かせていただいた後、起業当初にカブトムシ飼育場として使っていた倉庫を見せていただきました。倉庫は、元々農業の資材置き場であったため起業する際に、祖父母から借りた400万円でリフォームを行ったそうです。各地から集めた有機廃棄物の保管やカブトムシに与えるエサの製造、カブトムシの飼育まですべてをこの倉庫で行っていたといいます。

また、実際に飼育しているクワガタを見させていただくこともできました。今回見ることができたのはこの個体だけでしたが、とてもきれいな色をしていてたしかに昆虫の世界に引き込まれるのもわからなくはないなと感じました。
なお、現在大館市では、市内の旧小学校でのみ飼育を行っているとのことです。

視察を通して

石田さんの取材を行う中で、「好き」を起点に事業を起こす大切さを強く感じました。また、終始楽しそうに事業のことを話す石田さんからカブトムシと共に世界の課題を解決していくのだという社会課題解決に対する熱意を感じることができました。石田さんの「自分の好きな事ではなくお金稼ぎばかりを優先しては事業がブレてしまう。」という言葉が今も心に残っています。石田さんは社会課題である有機廃棄物の処理を大好きなカブトムシで解決するために今も挑戦をされています。

世のため・人のためという想いに加え、「自分自身の好きを起点に世界にイノベーションを起こす!」このような想いが石田さんに限らず社会起業家の芯にあるものではないかと考えるきっかけになりました。

自身の「好き」からより良い世界を描いていく社会起業家という存在を今後も注目していきたいです。

また、私生活の中でも既存企業の事業から社会課題の解決につながることは、沢山あるのではないかという気づきを得ることができました。今後は、私生活から、好きな事と社会問題の解決をつなげ、自分自身もイノベーションを起こせる様に活かしていきたいと思います。

(横石瑠宇来)

今回の視察を通して、社会起業家の想い・取り組みを間近で見ることができてとても良かったです。私自身も、元々、食品廃棄物の問題に関して興味はありましたが、ただの興味関心で終わらせず、自分の趣味の延長として事業を始め、世界の課題解決に向け進んでいる石田さん兄弟の行動力にとても感化されました。

何度失敗しても諦めずに、行動をし続けるということは思っている何倍も難しいことだと思います。しかし、「起業においては、失敗することこそから多くの学び・気づきが得られるもの。失敗しても何回でもやり直せる。」という経験に裏打ちされた石田さんの言葉にとても共感しました。そのような考え方が事業やキャリアの成功につながるのだろうと納得したので、これからの自分の生き方にも取り入れることができたらと思います。

(庄子黎)

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