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【社会起業家取材レポ #22】音楽を通じた共生社会の実現 ~インタビュー編~

SIACの学生が東北で活動する社会起業家の取り組みを視察・取材する「社会起業家取材レポ」。今回は、SIA2022卒業生の野崎健介さんにお話を伺いました!

視察レポート編はこちら

野崎健介さんについて

野崎さんは「音楽で健康も生きがいも」をスローガンとして掲げ、2011年の3月1日に仙台で食事入浴なしの音楽リハビリデイサービスとして株式会社ゆらリズムを創業しました。創業以前は、東北福祉大学を卒業したのちに東京の企業で働いていた野崎さん。生活には満足していたものの「自分がこの仕事を続けて現役を引退するとなった時、趣味や生きがいが重要になるのではないか。」「自分もいつ死ぬかわからない。始めるには早い方がいいだろう」と起業を決断したそうです。現在、ゆらリズムでは、創業時の事業である高齢者向けデイサービス事業以外にも、障がいを持つ子ども向けのデイサービス事業や講師派遣事業なども行っており、音楽を通じた、年齢・性別・障害・国籍などの”バリア”を”フリー”にする「共生社会の実現」に向けて活動をされています。

インタビュー

Q:社会課題の解決のために会社を設立した動機は何ですか?
A:自分の将来を考えたときに、生きがいが重要ではないかと考えたからです。

東京にいたころもそれなりに楽しく生活していたのですが、人間いつ死ぬかわからないじゃないですか。そう考えた時、現役を引退し余生を送るときに生きがい(誰のため・何のために生きるか)が重要なんじゃないかと。数年の準備期間を経ましたが会社の設立に踏み切りました。起業してすぐに東日本大震災があったり、昨今のコロナ禍があったりと大変な出来事もありましたがなんとか続けてくることができました。

Q:"音楽"とリハビリを結び付けた理由は何ですか?
A:"音楽"が持つ力に可能性を感じたからです。

私たちの会社では、食事入浴なしの音楽リハビリデイサービスという形態をとっています。"音楽"には、認知症予防やうつ予防、口腔機能向上など様々な力があるんです。

そして何より、施設だけでなく、場所・体の状態を問わずにできることが魅力だと感じています。行動範囲に制限されない趣味や生きがいとなること。これが"音楽"の可能性だと思います。

先ほどお話した認知症予防やうつ予防など介護予防には6つのポイントがあるのですが、そのポイントを踏まえながら、楽器演奏やリズム運動など"音楽"を軸に様々な活動を取り入れることで効果を発揮できるようプログラムを組んでいます。

Q:現在の事業とその背景について教えてください。
A:現在は、介護予防型音楽リハビリサービス事業、放課後等デイサービス事業、海外協力事業などを行っています。

起業時に始めた介護予防型音楽リハビリデイサービス事業を元に、今は、放課後等デイサービスや海外協力事業など、高齢者だけではなく年齢や国を超えて事業を行っています。

放課後等デイサービス事業は、主に障がいを持つ子どもたち向けのデイサービスです。高齢者向けデイサービスと同じく"音楽"を用いた活動をしていますが、ダンスなど子どもたちに合わせながら取り入れています。また、ほかにも、工作や職場体験なども行い、子どもたちの可能性を広げられるように努めています。

海外協力事業では、南米の国・ブラジルにあるサンパウロ大学という大学の授業の一環として、我々が行っている音楽リハビリのノウハウを教えに行ったり、実際に研修生が来て指導をするということもしています。

こうした事業の背景として、東日本大震災があります。会社を設立したのは2011年の3月1日だったんです。知っての通り、その10日後に震災がありました。建物も被害を受けましたが、他に移る場所もなく、何とかこの場で再起するしかないと踏みとどまり、オープンまでこぎつけたものの、デイサービスのみの運営は困難でした。そこで、講師派遣事業を行ったのですが、それが派生して放課後等デイサービス事業となりました。また、海外協力事業も元は、海外の音楽セラピーを翻訳する事業から派生したものでした。

Q:今後の展望を教えてください。
A:現在の社会性もあり経済性もある事業モデルを継続していくことです。

創業当時、仙台にはショートステイ型の介護予防施設がほとんどなかったので会社を設立する地として選んだわけですが、その時は、テストマーケティングとして2,3店舗ほど運営したら東京に事業展開して行くつもりだったんです。しかし、東日本大震災の影響から計画は頓挫。。。

そんな当時の思いがあったのですが、今では、この社会性もあり経済性もある事業の形が出来てきていますし、さらにそこから派生した事業も誕生してきているので東京でやることも特に考えていません。事業展望ということについても、今は事業拡大ということは考えておらず、現状維持のまま進んでいこうと思っています。

取材・執筆担当:佐々木栞・吉田泰翔

編集後記

野崎さんは、「現状維持」という言葉を使って、今後の展望を話してくださいました。起業家と呼ばれる方々からは「成長」や「拡大」という言葉をよく伺いますが、社会問題などと対峙する社会起業家さんは必ずしも全員がそうではないと感じています。

ともすると「現状維持」は、立ち止まっているといった印象を与えてしまうかもしれません。しかしそれは、決して立ち止まっている訳ではないと思います。

今の規模、今の形が社会と上手にマッチしている場合、「現状維持」が最良な選択になり得るのだと強く感じました。

(学生事務局 鈴木)


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