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【完勝はリスペクトゆえ】セリエA21-22第5節サンプドリア-ナポリ プチレビュー

こんにちは!TORAです🐯

今回はセリエA第5節サンプドリア-ナポリの”プチ”レビュー。

この試合、僕はナポリはサンプドリアをリスペクトし、緻密に練られた対策を講じてきたように見えました。

それが琴線に刺さりまくったので、軽く掘っていこう!という内容です。

●ビルドアップの変化

ナポリといえば、ビルドアップは左SBマリオ・ルイが上がるがニュートラル。
今季は若干色が薄れているけれども。ここはサイド・ハーフレーンで堅実に進軍するスパレッティ監督っぽい。)

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✓左SBルイが上がり、最終ラインは3バック風味に
✓左SH(WG)のインシーニェが内に絞る

もちろん、右SBディ・ロレンツォが上がる場合もありますし、インシーニェが大外でルイがインナーラップする場合だってありますが、土台となるのはこの形でしょう。

なので、ビルドアップは4-3-3→3-4-3のような形に可変し、最終的には「今や敵陣ではこの形だよね!」でお馴染みの3-2-5で仕留めます。

しかし、対サンプドリアではSBの上がりを自重させ、ビルドアップをメイン業務に設定しているように見えました。

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✓Wを描くような形でビルドアップ
✓両SBが上がらないので、逆側がプレスの逃げ道として機能

サンプドリアはセリエA屈指のプレッシングチーム

彼らは入口から獰猛に捕まえてくるので、深い位置での選択肢を増やす目的でしょう。

しかし、この手段だと「後ろに重くなる」というデメリットがあります。

デメリット消失のために効いたのがオシメンとアンギサ

オシメンは質的優位を活かした裏抜け力が抜群。
ポストプレーはまだ課題があるように感じますが、それでもあのフィジカル。戦えます。

なので、彼がいるだけで深さが取れる。縦志向の攻撃が活きる。
これが本当に大きい。

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アンギサはアフリカンらしいダイナミズムでビルドアップ隊とアタッキング隊の両ユニットの架け橋に。

ビルドアップに参加しつつも、前線にボールが来れば躍動感あるムーブで崩しのフェーズにも迅速に参戦できる。

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その背後をジエリンスキとファビアン・ルイスが支えますので、セカンドアタックの質が高いのもGOOD。

そう、ナポリはサンプドリアの積極果敢な前からプレスを利用し、引き付けて、そこから一気にバーティカル(縦方向)な展開を目指しました。
昨季のインテルっぽい火力の出し方です。

・ナポリの前方パス距離比較
4節平均2337ヤード:サンプ戦3148ヤード
パスの距離(ヤード)の内、前方に送ったパスのみをピックしたスタッツ。
かーなりピンと来ないと思いますが、1試合で3000を超えるヤードを記録するとなると、【とにかく縦に送ったか】、【とにかくポゼッションしまくったか】の2択です。後述のスタッツと合わせると、今回は間違いなく前者
FBrefを参照。
『相手のプレスという”攻撃”』に対するカウンター

ナポリは4節時点でリーグトップのポセッション率を誇りますが、本節は縦に速い展開なのでボールを握ることに重点を置いていません。

つまり、ポゼッション率がいつもよりも低いはずで、スタッツにしっかりと表れていました。

・ナポリのポゼッション率比較
4節平均61.7%:サンプ戦53%
4節平均よりもなんと8%以上も低い結果に。
上述の前方パス距離のスタッツと合わせると、いつもより少ないポゼッションの中、とにかくボールを縦に入れたことが分かります。
FBrefを参照。

この事象は「サンプドリアをリスペクトし、対策を立てた」と断じるに値すると考えます。

●前からプレスとブロック守備の変化

サンプドリア対策はボール非保持もまた、でした。

ナポリもサンプドリア同様にプレス、特にアタッキングサードでのプレスを志向しますが今回は控えめ
ミドルブロックをメインに据えていた印象です。

・ナポリのアタッキングサードでのプレス回数と割合比較
4節平均37.4回(31.8%):サンプ戦22回(18.1%)
回数差も目立ちますが、それ以上に着目すべきはプレス割合
こちらもピンと来ないと思いますが、アタッキングサードでのプレス割合31.8%は相当な高割合です。逆に18.1%は低いですね。
FBrefを参照。

また、ブロック守備に関してもディテールが存在。

今季のナポリはフォーメーション通りの4-3-3(4-5-1)っぽく守りますが、本節は中盤3枚が中央をとにかく締めたのが目を惹きました。

非保持の平均的な配置を見ると一目瞭然です。

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・ナポリの非保持における平均的な配置
ルイス(8番)、ジエリンスキ(20番)、アンギサ(99番)が極端に中央に寄っていることが分かります。
セリエA公式を引用。

ⅰ)前からプレスが控えめ

ⅱ)中央を固めるミドルブロック

この2つが意味するのはサンプドリアの最終ラインにボールを持たせるのを許容し、その分、縦に入ってくるボールを迎撃し跳ね返すのが目的でしょう。

それを証明するかのように、本節のナポリは跳ね返した後の、ルーズボール回収数が目立ちました。

・ナポリのルーズボール回収数比較
4節平均39.1回:サンプ戦64回
分かりやすく激増しています(とはいえ、64回ってそんなに多くありません。39.1回が極端に少なさ過ぎですね笑)。
FBrefを参照。

サンプドリアは最終的に右サイドでフィニッシュワークに持ち込むことを理想とするチームですが、”だからこそ”中央や逆サイドを経由しないと効果的な崩しに繋げることはできません。

ナポリはその経由部分を絶つことを試みた、と考察。

おかげでサンプドリアのボールはサイドに追い込まれます。

必然、クロスが増えて一見チームのストロングポイントが出ているように見えますが、ネガティブな意味で右サイドにボールが渡っており、その中身は可能性の低いクロスです。

・サンプドリアのクロス回数比較
4節平均17.8回:ナポリ戦24回
24回の内、カンドレーヴァが15回放りましたが(データサイト基準で)クロスがPA内の味方に合った回数はたったの1回でした。
FBrefを参照。

この事象と後押しするスタッツ。
これもまた、保持同様に”対策”が垣間見えます。

●まとめ

・保持
ビルドアップ隊を増員、安定させ、サンプドリアの前からプレスをあえて引き付ける。

そこからバーティカルな展開で手数少なく一気に攻め立てる。

非保持のプレスを守備ではなく”攻撃”と捉え、
それに対してカウンターを狙う方策

・非保持
前からプレスをあえて控え、サンプドリアの最終ラインにボールを持たせる。

中盤は中央を締めてサンプドリアの縦につけるボールを迎撃。跳ね返して、ネガティブにサイドに追いやる。

相手がサイドに重きがあるからこそ、徹底的に中央を防衛

個人的な意見ですが、スパレッティ監督ってあまり『リアクション』のイメージないんですけど、サンプドリア戦は相手ありきのサッカーだったという側面が強かったと断じます。

それだけサンプドリアを警戒していたんでしょうね。

尚、今回はナポリ目線で、しかも主だったところ、つまり”点”でのプチレビューでしたが、サンプドリアも”これだけ対策された中では”戦えていたことだけは残しておきたいです。

完敗は完敗で間違いないんですけど、流石に0-4ほどの差はなかったかな、と。

あくまで個人的ですが、本節の得点期待値が両者の差をうまく表していたと思うおので紹介いたします。

1キャプチャ

・本節の得点期待値
ナポリは実得点ほどの期待値ではありませんでした。額面上はルイスのゴールが超ゴラッソでしたね。
対して、サンプは額面上でも頷ける0点。惜しいシーンもありましたが、スタッツ上は質の高いチャンスとは言えなかったようです。
understatを引用。

5節時点で1勝2負2分のサンプドリアですが、ネガティブな勝点なのは本節が初めてだという感想です。
同じく黒星が付いたミラン戦は、その内容の良さからむしろ名を上げた感がありますし。

したがって、他チームにとっては良いヒントになったゲームだと見ています。

そして、これを受けてサンプドリアはどう歩んでいくのか。

ますますセリエAから目が離せませんね!!!

最後までご覧いただきましてありがとうございました🐯

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