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【曇りのち晴れのち曇り】セリエA第30節 インテル-カリアリ レビュー

カリアリの守備は降格圏内のそれではなく、インテルはボールを握れど苦心。
終盤のジャストな采配は曇天に光をもたらした。が、その後の采配は再び雲を呼び寄せてしまう。
破竹の連勝も曇り空が続く中では、ファンのエクスキューズは拭えない。

こんにちは!TORAです🐯

今回はセリエA第30節インテル-カリアリのマッチレビューです。ついに30節目。シーズン終了までの最終コーナーが見えてきた感じですね。

●スタメン

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・インテル選手交代
70分、サンチェス▶︎ラウタロ
70分、ヤング▶︎ハキミ
81分、エリクセン▶︎ガリアルディーニ
81分、センシ▶︎ヴェシーノ
84分、ダルミアン▶︎ダンブロジオ
・カリアリ選手交代
72分、ダンカン▶︎アサモア
84分、ルガーニ▶︎シメオネ
90分、ザッパ▶︎チェッリ
90分、パヴォレッティ▶︎ペレイロ

●前半-カリアリのボール保持

パヴォレッティのエアバトル依存です。以上。

●前半-前プレはトリガーONでカルボーニ狙い

と、こんなにもあっさりな表現でも決して誤りではないくらい前半のインテルはカリアリを封殺しました。組織的守備は本節もハイクオリティ

が、本節良かったのはネガティブトランジション、攻→守の切り替えです。

予防的マーキング、カバーリングでボールホルダーの時間を奪いながら、ブロックを組み直す速度と精度はシーズン序盤とまるで違います。

また、迎撃に特化したサッスオーロ戦とは異なり、本節は前からも捕まえに行きました。前からプレスは以下の通りだと思います。

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✔︎カリアリが自陣内でのビルドアップ、もしくはバックパスを選択した場合、エリクセンが上がって、カルボーニを捕まえる。
✔︎その場合、ルカクとサンチェスもしっかり連動して、残りのCBを捕まえる。
✔︎カリアリがミドルサードくらいまで上がれば、しっかりと5-3ブロックを形成。

エリクセンの出る・出ないは非常にパキッとしていて20歳と若いカルボーニ、そしてその先でゴールを守るセリエAデビューとなったGKヴィカーリオをターゲットに「リスクはそこまでかけないけど、あわよくば嵌めたい」という思惑があったように感じます。

であれば、プレスの迫力は必須。理由は絵に描いたようなハイプレスではないのでスタートの位置が低いからです。

エリクセンのタスクではない

想像に難くありませんね。

事実、エリクセンは「バレッラだったらここはハードに寄せていた!」的なシーンでも位置取り重視で距離を縮めるような圧のかけ方ばかりでした。早い話がプレススプリントが絶対的に少ない

バレッラはサスペンションで欠場。しょうがない。しからば、本節のスカッドだと出足が速くクイックネスに富むセンシがチョイスされるべきでは?と試合中からもやもやしてました。

これはエリクセンの能力どうこうの話でなく、選手の特性、設計の話です。

●前半-歯車が噛み合わないボール保持

もやもやはボール保持もでした。
なんでしょうね。

「活路はあるんだけど自ら蓋をしてる!」

という感想。

まずはカリアリのボール非保持を見てきましょう。

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✔︎ラインは低めに設定。
✔︎ツートップとCHナインゴランでブロゾヴィッチを囲むトライアングルを形成。
✔︎なのでナインゴランは最終ラインとは裏腹に下がり過ぎない。
✔︎IHはミドルサードまでは徹底して中央を抑える。

ⅰ)前線はインテル最終ラインがボールを持つのを許容。

ⅱ)代わりにブロゾヴィッチのパスコースを消す。

ⅲ)それにより、ブロゾヴィッチの対面のCHが局地で「+1」を生み出すフォロー役に。

特に後半戦は超お馴染みの"対インテル”の守り方ですが、チームによってディテールが違うのが興味深いところ。

カリアリのオリジナリティはトライアングル

ブロゾヴィッチに対しては「誰かが付いてるぜ!」ではなく、「誰かがそばにいるぜ!」的な対応方法でした。

ボールも持たせない、ではなくボールを持ってから位置関係でプレーを制限するようなイメージ

ナインゴランが出ていく場合もあるので中央がポカーンと空いてしまうリスクも。それを埋めたのが両IHです。

彼らはインテルが自陣深くないエリアでプレーしている分には、とにかく中央を締めました。スライドよりも中央を締めることが優先

インテルが中盤3枚の横で悠々とプレーできた点、ブロゾヴィッチへのアプローチはここに理由があると考えてます。

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ハーフライン付近や自陣深くない位置で、アウトレーンやハーフレーン外側を支配されるのはしょうがない。とにかく危険な中央やハーフレーン内側を締めよう!そんな声が聞こえてくるような守備でした。

カリアリの「水際だけは絶対に抑えるリトリート」。その質はとても降格圏内のチームとは思えないものでした。

しかし、活路はたしかに存在しました。それをインテルが活かせない。いや、活かすための設計にない点が問題でした。

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・インテルの活路
✔︎中盤3枚の横で悠々とボールは持てる。
✔︎ルカク対カルボーニのマッチアップは明確にルカクに軍配。
✔︎中盤3枚の横、もしくはハーフレーンから比較的カンタンにルカクへ楔は付けれる。

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・活路を活かせないインテル
✔︎楔が入っても、そこから受け取る→細かいコンビネーションプレーがハマらない。
✔︎右の大外で深さも出せない。
✔︎ルカクの逆側や裏のギャップを突けない。

活路を活かせない点において。

ルカクの楔からのコンビネーションは”たられば”有りなら、やっぱり馬力と瞬間のテクニックにも長けたバレッラが必要。いないものはしょうがない。であれば、パス&ゴーの申し子センシが担うタスクでしょう。

攻守両面で本節の右IHはエリクセンではないことに疑う余地がない。

さらにこの場面では右サイドで深さを出せなかった点も痛かったです。ここもバレッラならハキミと”あえてのレーン被り”で縦もぶち破れそう。よくやる得意なですね。相手が中央寄りなら尚更

縦に怖さが出れば、カリアリのブロックを揺さぶり、広げられる期待も持てます。そうすれば、中央を効果的に使えるかもしれない。
というわけで、快速ハキミの投入も望ましく思えました。

尚、三度バレッラの名前を挙げましたが、これもバレッラの能力というよりも特性の面を切り取って例に挙げています
まぁ、これだけ多くのシチュエーションでハマるってのは”万能という能力”か笑

話が逸れました。ルカクが楔に入ることでのギャップ狙いはラウタロがふさわしいでしょう。
ルカクのポストプレーがハマる日に欲しい相方はセンターフォワードタスクの選手です。

セカンドトップタスク(ルカク)にセカンドトップポジション(サンチェス)のツートップはこの戦い方ならハマらないことは明白。

使いたいスペースはカリアリのリトリートブロックに加え、ツートップを使いたいセンシと1.5列目に降りてくるサンチェスで交通渋滞中なのですから。

そもそもの設計の問題

こちらも特性の話なので、サンチェスやエリクセンが悪いわけではありません。ずばり、設計したコンテ監督が悪いです

しかし、前半37分頃からセンシ⇄エリクセンのポジションチェンジには着手しました。素人の分際で!って感じですがこれは断言します。

マストな一手だった。

一応、コンテ監督をフォローすると、読みが外れたとは言え、流石に前半でサンチェスやヤング(ダルミアン)を下げるわけには行かないので「やれる範囲でやれることはやった」とは言えると思います。アクションは遅かったですけど笑

●後半-逃げ切りを図るカリアリ

後半頭からカリアリの目論見はピッチに現れていました。

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✔︎ナインゴラン、下り目の位置取りが目立つように。
✔︎ゆえ、ツートップとのトライアングルは解消(形はあるけど、前半の機能にはない)。
✔︎前線はブロゾヴィッチの監視を強化。
✔︎両IHは引き続きのプレー原則。

前半(結果的に)、効果的だった中央封じにリスクマネジメントを上乗せしました。

要はドローで逃げ切り体制。

インテル側はポジションチェンジ以外の変化は見られません。

右はセンシのおかげでスピード感が、左はエリクセンのおかげで良い距離感が生まれ、ポジションチェンジの効果は明確ですが、カリアリのクオリティを崩し切るに至りません。

カリアリのリトリートは集中を保ち続け、また、パヴォレッティの陣地回復やパワープレーも驚異でボールは保持するけど首深くまで噛み付きにいけない

ここまで来るともうソフト面ではなく、ハード面を変えるべきでしょう。

●後半-期待通り、そして期待外れ

70分、ようやくコンテ監督が重い腰を上げました。

ヤング▶︎ハキミ(ダルミアンが左へ)、サンチェス▶︎ラウタロ。
おそらく、全世界のインテリスタの8割は納得したであろう交代。

そして、ゴールが生まれます。

76分、ハキミとルカクのワンツーがトリガー。

やはりカルボーニを苦にせず背負ったルカクの楔からハキミが右サイド深くに抜け出すと、後は決めるだけ!のマイナスクロス。見事、逆サイドのWBダルミアンが押し込みました。

期待通りのゴール

注文通り!前半からこう崩したかった!って形がついに結実。
さぁ、あとはクロージング。気持ち良く勝ちましょう!

…というストーリーで幕引きしたかったんですけどね。

ここから、特に85分以降はカリアリの猛攻を受けました。

終盤、チームの地力に関係なく、スコアが劣っているチームが押し込むのはサッカーではあるあるです。点を取らないと勝ち点を得られない訳ですから、どうしたって攻勢に出ます。

この事象そのものに焦る必要やネガティブになる必要は全くありません。

ここで、スコアが勝っているチームは冷静に耐えつつ、無理が効いている箇所(今回で言えば2CBにしたことで数的同数になった最前線)を狡猾に突いたり、カウンターでダメ押し!が分かりやすいクロージングの教科書だと思うんですが、本節のインテルはあたふたあたふた。”耐える”ではなく、単純に”劣勢”でしたね。超ネガティブ。

曇天を切り裂き、晴天にしたかに思えましたが再びの曇り空で試合終了。

結局、もやもやの残る11連勝となりました。
しかし、苦しんだ要因は自分たちのせいだけではなく、カリアリの質由来でもあります。

ここにリスペクトをしつつ、最近のお約束いきましょうか。

せーの!

「この勝利はデカイ!」

・スコア
インテル1-0カリアリ
(77分ダルミアン)

●雑感−反省会

今回は割と前後半の項に伝えたいことを置けたので本項で特に書くことがありません笑

ということで、85分以降の劣勢における反省会でも開きましょう。

原因は率直に言って、残りの交代選手。ヴェシーノ、ガリアルディーニ、ダンブロジオです。

もちろんこの3名だけのせいではありませんが、与えた影響は大きかったはず。ここは穿って見る必要はないと考えます。

ヴェシーノはカリアリのシステム変更(4-4-2)にどう守るのか?がふわふわ。マークに行くのか、配置で守るのかの判断ができずで中途半端に。結果、”ただいるだけ”状態が散見されました。

フォローをするならバーティカル(縦方向)なアタックに効果的に貢献できていた点は◯。ただし、回数にして2回程度。かつ、疲れのある終盤なので評価はし難いです。様子見ですね。

ガリアルディーニ、得意のポジショニングは及第点に見えましたが、対人であまりに何もできませんでした。

特に88分、アサモアの侵入を塞き止められなかった点と89分のザッパに許した屈辱的な股抜き。この続け様のシーンはなんとも悪印象。

ダンブロジオはもうシンプルに準備ができてないですね。下半身と上半身のフィーリングが合ってないように見えます。重心が整ってないというか。したがって、パフォーマンスは悪かったですが彼の評価を下げるものではないかと。

一番の反省は彼でしょう。

この采配を振るったコンテ監督、喝!

今回は厳しくいきます笑

ⅰ)事前準備がハマらなかった。

ⅱ)前半でエリクセン⇆センシのポジションチェンジに着手したのは◯。だけど、もう少し早くアクションできたのでは?

ⅲ)ハキミ、ラウタロの交代はジャストだったが、結局は個の質的優位を武器にした。個人的にこれももう少し早くアクションして欲しかったですね。

ⅳ)その後の交代はクロージングという安定が必要なシチュエーションにそぐわないものだった。

まぁ、全て結果論ではありますが、逆を言えば、勝利と言う結果が出ていなかったら、非常に厳しい評価になっていたでしょう。

あくまで個人的な意見ですが、直近5試合を振り返ると完勝!と呼べるのはサッスオーロ戦だけです。

「この勝利はデカイ!」

この声は裏を返せば、それだけ苦戦した証拠

この時期はもうどんだけ内容が悪くても勝点3を掴めればなんだっていいのですが、内容が悪いまま勝点を掴み続けようなど笑止千万。セリエAはそんなに甘くありません。

次節は強敵ナポリ戦、しかもスタディオ・マラドーナ(サン・パオロ)です。

一戦必勝!戦術もチームのパフォーマンスもしっかり照準を当てて望んで欲しいものですね。

FORZA INTER!!⚫️🔵

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