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【財務諸表の着地】カルチョフィナンツァ斜め読み

こんにちは!TORAです🐯

今回は超久々の斜め読み記事です。この企画、まだボツってません。忘れてたけど。

尚、「債務の株式化」の項につきましては鮮度を最優先にしているので、鵜呑み厳禁でお願いします。誤りがあったらご指導頂けると幸いです!


●財務諸表の承認

インテル取締役会は2023年6月30日現在の財務諸表を承認

2021/22会計年度と比較して、損失が1億4,000万ユーロから8,500万ユーロに大幅に減少。5,500万ユーロの改善である。

・財務諸表とは
一般的に決算書といわれる書類のうち、金融商品取引法で上場企業などに作成が義務付けられている書類のこと。よく聞く賃借対照表、損益決算書、キャッシュフロー決算書(財務三表)は財務諸表に内包されます。

TORA補足

目新しい情報ではなく、以前記事にした報道記事がオフィシャルで着地したという内容。
※厳密に言えば最終確定するのは10月末に行われる株主総会。

上記記事内で、

今季の営業収益は18‐19の3億6,500万ユーロを抜いて、クラブ史上初となる4億ユーロに達すると予想されています。

と記載がありますが、

最終はマッチデー収入(チケット代はミラノ市に半分吸われるけど、分母が跳ね上がった)とテレビ放映権の収入のおかげで、営業収益が4億2,500万ユーロにまで達しました

クラブレコードの公式発表です!!!

メインスポンサーの収入なし、メインスポンサーの収入なし、メインスポンサーの収入なしでレコード達成。選手、監督、スタッフ、お偉いさん等々、特大の賞賛を送らないとですね。

昨季のスポーツ面の結果は本当に本当に本当にプラチナバリュー

・昨季CL準決勝前のマロッタインタビュー
「イタリアのサッカークラブは国際大会や国内大会の賞金によって『年間収入の大部分』を得ているため、収入とコストの不均衡から、クラブの財政はピッチでの成功に大きく依存しているのだ。」

重い足枷がある中でこれを達成したことはファンとしては誇りですね。グランデ。

●とはいえ、まだ赤字

8,500万ユーロの赤字は大きく改善された数字だが、よく知られているように、特に財務費用に関する数字が重くのしかかっている。

2022年1月にクラブが発行した2027年満期の4億1500万ユーロの社債(ちなみにその一部はオークツリー・ファンドが引き受けた)に大きく関連しており、2022/23年にもネラッラズーリ・クラブの損益勘定に4,000〜5,000万ユーロの重荷となる(=債権の利息が5,000万ユーロかかってますよ)。

2022/23シーズンのインテルの営業損失(収益と費用のみに連動し、実際には金融費用や税金を含まない通常の経営結果)である8500万ユーロの損失の内、約4000万ユーロに相当し、チャンピオンズリーグ決勝(UEFAからの収益だけで1億ユーロ)までのスタジアムの収益(合計8000万ユーロ)にはプラスの影響があったが、ボーナスを含む合計3000万ユーロのデジタルビッツ社とのスポンサーシップからの収益がなかったことがマイナスの影響となった。

少なくとも経営レベルでは、今シーズン中に損益分岐点、あるいは黒字(利息の重みを考慮せず)に近づく可能性さえある赤字だ。

◆ ※区切り

今シーズンの開幕を考えると、競争力のあるチームを維持しながらも、市場(『カルチョ・エ・フィナンツァ』の推定では約2,500万~3,000万ユーロの節約で約10%減)に伴うチーム経費のさらなる削減から始まっている。

さらに、ナイキ、パラマウント+とのジャージパートナーシップの更新、U-Powerとの新契約(デジタルビッツを考慮しない場合、2023/24年のジャージ収入は、2022/23年の約2,250万から約5,000万になる)、キャピタルゲインは2022/23年の約3,000万から2023/24年には7,000万を超える

2022/23シーズンのセリエAでの順位が上がれば、リーグのテレビ放映権収入がさらに増え、CLからの収入が減る可能性にも影響する(=リーグとCLの二兎を追うのは超むずいよねってこと?)。

インテルのジュゼッペ・マロッタCEOはここ数日、ネラッズーリの今シーズンの予算はCLグループステージでの敗退とELへの "降格 "を念のために想定していると説明していた。

ELからの収入は5,500万ユーロに相当し、CLラウンド16への出場権は最低6,130万ユーロ、準々決勝への進出は最低7,250万ユーロに相当する。

したがって、その他の収入とコストの削減はヨーロッパでの「縮小」した道に比べてプラスの影響を及ぼし、2023/24シーズンのインテルの営業黒字につながる可能性があり、これは通常の経営だけでなく、クラブの価値にも影響する問題である。

TORA補足

上記の◆で区切った以前の内容は、やはり記事で扱っていた報道が着地したという内容です。

デジタルビッツの入金があれば、机上の理論上はFSRのブレイク・イーブン案件に(一旦)達していました

◆の区切り以降は新しい情報が降りてきました。

カルチョ・エ・フィナンツァによると

ⅰ)市場の人的コストが約2,500万~3,000万ユーロの節約
※ホントに?w、ちょっと前の記事では1,400万ユーロと見た気が…

ⅱ)スポンサーシップの収入が約3,000万→7,000万を超えるジャンプアップの可能性
※こちらもちょっと前の記事では6,000万だった気がw、しかもボーナス込みの最大値

ⅲ)上記から仮に欧州でEL落ちしても、待望の営業黒字に繋がる!
※かもしれない

ということで、もはや公然の事実である今季インテル目標「スクデット奪還」の背景となる因子を述べています。

昨季のCLファイナリストは確かにクリティカルな成績ですが、おかわりを目指すのは現実問題そろばんを叩きづらい

仮にEL落ちしても他でカバーできているので、今季はスクデットを最大目標に設定し、実際に勝ち取り、クラブバリューを高めることが最も未来に繋がる!という判断なのでしょう。

逆を言えば、昨季の貯金を無駄にしない・活かすために、スクデットは目標ではなく至上命題と設定すべきかもしれませんね。

スクデットが至上命題!というのはもちろんハードルが高く、他クラブにも失礼な話ですが、懸念通り欧州EL落ちしてしまったら間違いなく至上命題の輪郭がはっきりします。これが”イマ”を戦うインテルロードのリスク

リーグが2〜4位の場合は昨季同様に欧州の結果が評価の水準となるでしょうし(万が一、リーグでCL圏から落ちたら論外)、もしスクデット+CLグループステージ突破となった場合は「たいへんよくできました」とクラッカーを鳴らしてよさそう。

この辺りが今季をジャッジするポイントですね。

●債務の株式化

クラブはオーナーである蘇寧が8,600万を資本に転換することを決定した

これはインテルのオーナーがここ数シーズン、どのように資金を調達してきたかという選択に関連した技術的な項目である。

2016年6月に1億4,200万ユーロの”増資”を行った後、蘇寧は有利子株主融資を通じてのみ、クラブの財源に約4億6200万ユーロを注ぎ込んできた。

そのため、他の株主(特にライオンロックは現在もネラッズーリの31.05%を所有している)の株式の介入に繋がる増資は行わなかった。また、株主ローンとして、相対する株式は株主に対する負債として貸借対照表に計上されることになる。

長年にわたり、蘇寧は常にインテルに対する負債を資本金に転換することを選択してきた。これはどういう意味か?

財務諸表に計上された債務を消滅させるため、債務者は債務の全部または一部を資本に転換することができる。「この操作は、債務者によるユニットまたは株式の発行(または他の形態の譲渡)と債権者への譲渡によって行われる」とOIC(イタリア会計機関)の会計基準19が示している。

要するに、債権者(=蘇寧)は債務を放棄し、その債務を資本に転換することで、債務者(=インテル)の資本を強化するのである

このうち、1億500万ドル(一部はすでに過去の損失で目減りしている)は「設立損失を補填するための株主支払準備金」として株主資本に、残りは「将来の増資のための支払準備金」として株主資本に計上される。

したがって、本日発表された動きは、8,600万ユーロの新たな支払いが到来したことを意味するものではない。(実際には、2022/23年の所有権から5,100万ユーロが到着している)

蘇寧がその返済を放棄したことを意味する

この決定の目的は何か?

まず第一に、資本レベルで損失をカバーするためである。実際、2020/21年度と2021/22年度の損失について、インテルはコロナ禍に制定された、個々の会計年度の損失補填を5会計年度目まで(つまり実際には2027年度まで)延期できる州規則を利用することを決定したが、2023年度については、この可能性はもはや実現不可能。したがって、損失を補填するために正味資本を強化する必要があった。

第二に、この転換は負債全体の削減も可能にし、例えば、FIGCやUEFAの規定に準拠するために有用なケースもある。

TORA補足

小難しいですねぇ。

噛み砕いていきましょう。

蘇寧が行ったのはDES(デット・エクイティ・スワップ)という債務と株式を交換する手法です。安心してください、”ホワイト”ですよ。

債務とは事業資金を調達するために発行する債権のことで、つまり、返済義務のある有利子負債です。

対して、株式は返済義務のない自己資本を指します。

つまり、DESを行うと、返済義務のある有利子負債が消滅する代わりに、債権者側(=蘇寧)は株式を持つことになります。

例え話で最もわかりやすいのがオークツリーの借金。

勘違いされている方が散見されますが、オークツリーからの融資はインテルが直接借り入れているわけではありません。

お金の流れは、オークツリー→蘇寧→インテルです。

このD(デット=負債)をE(エクイティ=株式)に交換したということですね。なんでこんなことをするのか、メリットデメリットを見てみましょう。

✔︎メリット
債務者(=インテル)は有利子負債がなくなること。なんと言ってもこれが最大のメリットです。

対して、債権者(=蘇寧)は負債の代わりに株式を保有することになるため、キャピタルゲインやインカムゲイン(配当金)を獲得できるメリットがあります。
DESの後に業績が改善されることで、負債金額の数倍以上のキャッシュを得られる可能性もあります。また、株式を保有しているだけで、インカムゲイン(配当金)も受け取れます。

✔︎デメリット
債務者(=インテル)のデメリットの一つは、債権者(=蘇寧)から経営に干渉される点です。DESにより債権者が株主になるため、従来よりも経営改善に干渉できます。負債を減らせる代わりに経営の自由度が低下する恐れがあるため注意が必要。

債権者(=蘇寧)側には、債権よりも回収順位が後回しになるというデメリットが生じます。債権と株式を比較した場合、債権の方が回収できる順位が早く、株式は後回しとなります。さらに、本来回収できるはずのキャッシュを株式に交換したことで回収できなくなるリスクが発生。

記事執筆では、”昨日の今日”のタイミングなので断言は決してできませんが、現段階で出揃っている情報ですと、今回のケースは蘇寧がインテルのためにリスクを背負ったと読んでいいと思っています。

彼らがこれ以上、インテルのクラブ経営を侵食するとは思えず(極端だけどマロッタやアントネッリを切って自分たちの息のかかった人間にすげ替えるとか。ないでしょ)、ここから短年で大きなゲインリターンも見込めないでしょう。

したがって、記事内にもありますが、本件はシンプルに蘇寧が、インテルがすべき返済を放棄したと認識していいでしょう。

まぁ目的として挙げられているリスク資本やFSRの規定対策は結局のところ、大株主である自分たちの為でもあるけれども。

クラブは一連を下記の声明で締めています。

「オーナー(蘇寧)の継続的なサポートのおかげで、損失の影響を吸収しながら、クラブのパフォーマンスをこれまで以上に高いレベルに引き上げることができました」

「大株主による投資は、男子トップチームの重要な強化に関わるものを超えて、組織レベルでの成長とインテルのインフラ投資を引き続き支援している」。

「まーたTORAの蘇寧贔屓かよ」と思われた方もいらっしゃるかもですが、これは正しく批評するために知っておくべきファクトです。以前にも述べましたが、僕はモラッティ御大を除いてオーナー(会長)に特別な感情は持ったことはありません。

僕だって記事を書いておきながら「増資(資本注入)じゃないんかい」とも思ってます。まぁ、ちょいちょいしてるんですけどね。増資も。

批判したいことももちろんあって、インテルのファイナンス周りを見ていると、ズバリ、蘇寧がオーナーである限り新スタジアムの実現は非常に難しいと思っております。

今のインテルが打てるファイナンス関係の満塁ホームランは新スタジアムしかないと思っているので、それが進まない現状にはめちゃくちゃ悶々としますね。

いつか記事にできればと思っております。

以上!最後までご覧頂きましてありがとうございました🐯


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