【地震から建物を守るために❸】

日本人にとって一番の恐怖、地震。

地震から建物を守るために、何ができるのか。
幅広い視点から地震に強い建物を考えている宮本教授にお話を伺いました。


第3回

シミュレーションの難しさ


 地震をシミュレーションするにあたり、一番難しいことは?

 過去の経験によって、地震の規模については震源がわかればある程度決められるのですが、難しいのは岩盤がどこから壊れていくのかわかっていないことです。

 断層面の中でも、一面が同じように地震波を発生させているのではなく、地震の大きな波を出す場所があります。


 今までの地震で、その場所がどこであったかの研究は行われてきましたが、将来地震が発生したときにどの場所が大きな波を伝えるかについてはまだわ
かっていません。


 そのため、「仮にそのポイントがここにあったら、大阪にこのような波が来るであろう」と計算しているに過ぎません。

 それを様々な仮定の下に計算して、強震動を予測するというのが難しい点です。


 東日本大震災の時、震源から遠く離れた大阪市内ではほとんど被害が出ませんでしたが、大阪の此花に建っている咲洲庁舎は10 分間、左右に片振幅で約1.5 m揺れ、室内の設備やエレベータに被害が出ました。


 なぜ大きな揺れになったのかというと、咲洲庁舎のような背の高い建物がもつ固有周期と、東北で発生し大阪平野の地盤の中で増幅された長周期地震波が、共振という現象を起こしたためです。


 この例からわかるように、建物の地震対策では地盤の揺れ方を考えることが大切です。

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