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【PHI】MLB1と評価されたブルペンの現状と分析


積分定数Cです。
今回のnoteではフィリーズのブルペンに関して述べていく。


開幕前

フィリーズのブルペンはfangraphsのprojected warからトップと評された。


クローザー筆頭候補のJose Alvarado、3月に契約延長に至ったMatt Strahm、昨季30歳でブレイクしたJeff Hoffman、剛腕のGregory Soto、Seranthony Dominguezやルーキーながらポストシーズンを経験したOrion Kerkeringといった面々が揃い、非常に層が厚いブルペンとなり、ファンの間でもかなり期待されていた。



実際


ブルペンの防御率は5.52(29位)となっており、MLB1と評されたブルペンはいづこへ。しかし、FIP3.55(8位)と防御率とFIPの間の乖離がかなりある。フィリーズのブルペンがこの数値を記録しているのは運が悪いのではないかもしれないという仮説を浮かべた。実際に私の仮説を検証してみようと思う。まず、ブルペン全体のBAbipは.341(30位)となっている。BAbipが高い、すなわち運が悪いと言える。運に左右されにくい三振の関連の指標ではK%:25.0%(9位)、K/9:10.0(5位)と上位に位置しているため、フィリーズのブルペンの良さである三振を取れることは発揮していると言える。

https://www.fangraphs.com/leaders/splits-leaderboards

ここからは運の良さ悪さについてに個人に焦点を当てて述べていく。その判断基準としてBAbip、wOBA及びxwOBAを用いる。なお、ここで取り上げる選手は5月2日時点でアクティブロースターに入っている選手である。
運の良し悪しは以下のように検証する。

・BAbipは当該選手の数値と平均(.300)の差を用いる。数式化したものは以下の通り。
(当該選手のBAbip)ー.300=P
・P≧.050の場合、運が悪い、P≦ー0.50の場合、運がいい、とする。
・wOBAとxwOBAの差を用いる。数式化したものは以下の通り。
(当該選手のxwOBA)ー(当該選手のwOBA) =Q
・Q≧0.50の場合、運がいい、Q≦ー0.50の場合、運が悪い、とする。
・当該選手の運の良し悪しはPとQの2種類のから判断する。基準をもとに以下の3種類に分類する。
1.運がいい
P≦ー0.50かつQ≧0.50を満たす。
2.運が悪い
P≧.050かつQ≦ー0.50を満たす。
3.運に左右されない
1,2に該当しない場合。

但し、上記の基準に満たした場合でも、総合的な指標により運の良し悪しの判断を行う時がある。これは、基準を満たしていない場合も同様である。

Jose Alvarado

P=-.078  Q=-.029
ERA4.63に対し、xwOBA.256とERAの数値に見合わない数値を出している。では、何故ERAがこの数値になっているのか。それは3月29日の大炎上が関係している。この日のAlvaradoは5失点を喫している。4月29日時点でのAlvaradoの4月の月間防御率は0.90となっている。3月分の失点が未だに残っているからERAがこの数値となっているのである。したがって、指標通りの成績を残しているとしたい。

José Alvarado Stats: Statcast, Visuals & Advanced Metrics | baseballsavant.com (mlb.com)

José Alvarado - Stats - Pitching | FanGraphs Baseball

Seranthony Dominguez

P=.087   Q=ー.056
運が悪いと判断する条件は満たしているが、一旦ここで別の視点から考察してみる。試合を見る限り、彼のピッチングの生命線であるスライダーで明らかに空振りが取れなくなっている。スライダーのWhiff%は2022年以降、年々右肩下がりであり、x系の指標は昨年と比べて大きく悪化している。となるとやはり運が悪いのではなく、指標通りの成績を残していると言わざるを得ない。Run Valueが高いフォーシームの投球割合を増やしてみるのが復活の鍵となるか。

Seranthony Domínguez Stats: Statcast, Visuals & Advanced Metrics | baseballsavant.com (mlb.com)

Seranthony Domínguez - Stats - Pitching | FanGraphs Baseball

Jeff Hoffman

P=-.010 Q=0.04
運に左右されてなく、指標通りの成績を残している。
ここまでERA1.29と流石の成績であり、xwOBAもそれに見合った値である。今シーズンのフィリーズのブルペンの中で最も信頼できるリリーバーである。去年以上にフォーシームで空振りが取れており、Whiff%は21.3%(2023)→33.3%(2024)とデータでも証明されている。昨年の大躍進に貢献したスライダーも健在。スプリッターの精度が去年の後半のようになれば、さらなる成績向上が見込める。

https://baseballsavant.mlb.com/savant-player/jeff-hoffman-656546

Jeff Hoffman - Stats - Pitching | FanGraphs Baseball

●Orion Kerkering

P=ー.157 Q=.022
ここまでわずか5.2回の投球であるため、スモールサンプルであることに留意してほしい。xwOBAが優秀であるため、ここでは運に左右されていない成績を残しているとしたい。フォーシーム系統の投球割合を大幅に増やし、昨年のスイーパー一辺倒からの脱却を図っている。フォーシーム系統で空振りは取れているが、Kerkeringの最大の武器であるスイーパーでもう少し空振りが取れるとよい。現時点での投球内容を見ると、Kerkeringが今シーズン以降もフィリーズプルペンの主力を担うことを考えると、ハイレバレッジ場面での登板数を増やしてもいいと考えている。

Orion Kerkering Stats: Statcast, Visuals & Advanced Metrics | baseballsavant.com (mlb.com)

Orion Kerkering - Stats - Pitching | FanGraphs Baseball

●Yurior Marte

P=ー.050 Q=.081
ここまでERA3.38と素晴らしい活躍を見せているが、xwOBA.376とERAの数値に見合わないものとなっており、かなり運に助けられている。打球管理をより向上させれば、x系の指標も向上するだろう。シンカーのx系の指標、HardHit%はそれなりにいいため、シンカーの投球割合を増やすのも面白いだろう。

Yunior Marte Stats: Statcast, Visuals & Advanced Metrics | baseballsavant.com (mlb.com)

Yunior Marte - Stats - Pitching | FanGraphs Baseball

●Gregory Soto

P=.140 Q=.011
BAbip.440と驚異的な数値を叩き出しているため、運に見放されているのだろうか。しかし、HardHit%が56.0%(下位1%)とかなり捉えられている模様。
したがって、今の成績は運によるものではない、すなわち指標通りの成績を残していると判断した。ほぼすべての指標で悪化傾向が見られるので、何かしらの改善は必要である。

Gregory Soto Stats: Statcast, Visuals & Advanced Metrics | baseballsavant.com (mlb.com)

Gregory Soto - Stats - Pitching | FanGraphs Baseball


●Matt Strahm

P=.060 Q=.070
ここまでERA1.64と昨年同様かなり素晴らしい成績を残しているが、xwOBA.315と彼のERAに見合わない数値となっている。Chase%、K%、BB%は優秀である。しかし、Barrel%は16.0%(下位1%)、HardHit%は52.0%(下位3%)と、打球管理の指標が優秀でないことが、このような乖離を生んだ原因と考える。運がいいと判断する基準を満たしていないが、打球管理の側面からここでは運がいいと判断したい。フォーシームのWhiff%が31.3%(2023)→20.0%(2024)と去年よりフォーシームで空振りが取れていないのが気掛かり。

Matt Strahm Stats: Statcast, Visuals & Advanced Metrics | baseballsavant.com (mlb.com)

Matt Strahm - Stats - Pitching | FanGraphs Baseball



上記に挙げた選手の運の良し悪しについてまとめること以下のようになる。

運の良し悪しに関係ない(指標通りの成績)
Jose Alvarado 、Jeff Hoffman、
Orion Kerkering、Seranthony Dominguez、Gregory Soto
(*但しKerkeringはスモールサンプルであることに留意)

運が良い
Yunior Marte、Matt Strahm

運が悪い
該当者なし

Statcast Expected wOBA, xBA, xSLG | baseballsavant.com (mlb.com)


結論

フィリーズのブルペンは運が悪いとは言い難く、大半の選手が実力を発揮していると結論づける。


xwOBAを用いた理由

ここで私が運の良し悪し判断基準としてxwOBAを用いたかを説明したい。最初にこのnoteを書いた時にはxERAを用いた。しかし、xERAとERAの比較では、正確に運の良し悪しを測れるかに疑問を持った。実際にxERAとERAの比較の際、この二者の乖離が大きくて、十分に測れているのかと懐疑的になった。(これが一度このnoteをお蔵入りにしようとした理由。)それなら、xwOBAとwOBAの比較に持ち込んだほうが、より正確に運の良し悪しを測れると判断したからである。


最後に

このnoteを通じて指標に対する理解が甘さと分析の難しさを実感した。例を挙げるなら、xwOBAとwOBAの差において0.050という値を出したのも、この数値が運の良し悪しを測るのに塩梅がいいという完全に主観込みのものである。判断基準が非常に主観的なものになってしまったことで異論、反論出てくることは承知である。私自身の勉強のため、是非読者の皆様の意見を伺いたい。
最後に、このような拙いnoteを読んでくださり、本当にありがとうございます。

*このnoteで扱った数値は5月2日0時時点のものである。

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