僕とサンタと幸せと

10年以上も前に書いた、クリスマスを振り返るエピソード。
何となく発見したので再掲しました。


「サンタさんは本当にいるの?」と訪ねている子供を見かけた。
そう、今日はクリスマスイヴ。
僕にとって32回目のクリスマスイヴ。
子供の頃の僕はサンタを信じていただろうか?
そんな事を考えているうちに、ある年のクリスマスを思い出した・・・

土管からヒゲのおじさんが顔を出し、日本中の子供たちが キノコやカメを踏みつけていたその年、小学校低学年だった 僕は必死に願っていた。
クリスマスプレゼントとお年玉と、誕生日プレゼントを 全部あわせて良いからファミコンを下さい!
数日に及ぶ必死な交渉に親もようやくファミコンを 買う事を了承した。
当時我が家が裕福だったのか、或いは貧しかったのかは わからない。でも、この年のクリスマスプレゼントは高価な 買い物だったに違いない。
雪が少し降る町を父の車に乗り、知り合いのおもちゃ屋へ ファミコンを受け取りに行ったのを今でも覚えている。
共働きで帰りも遅かった両親、だからおもちゃ屋へ行くのも 結構遅かったように思う。
すっかり暗くなった町、おもちゃ屋さんの自宅からもれる 光に照らし出され、雪が舞っていた。
当時の僕には少し大きめの銀色の箱を受け取り、 心のそこから喜んだものだ。

そこにはクリスマス的な厳かさもなければ、 サンタを信じる少年の純粋さもなかった。
他人から見たら、無粋な光景に見えたかも知れない。

でも、それから長い年月が流れた今、僕はこう思う。
悲願のファミコンを手に入れた僕の心から喜ぶ姿を見て 両親はきっと幸せだったに違いないと。

僕は心から両親に感謝していたし、 それから何年も使うたびに箱にしまって、
箱がボロボロになるまで大事にしていた僕や姉貴の姿を見て、 きっと幸せだったに違いないと。
今はそう思う。

もしクリスマスが 聖なる夜に大事な人との絆を確かめ合う日なら、 幸せである事に感謝をする日なら、
その年の我が家にはサンタがやってきて、 「家族みんなが幸せを感じられる」というプレゼントを 置いて行ってくれたのだ。

そして今夜、
あれから何十年も経った今の僕が、 この家に生まれたこと、 この家族と共に生きてきた32年を振り返り 「悪くなかったな」と思えた事も
土管からひょっこり顔を出した赤色のヒゲ親父が 運んでくれたクリスマスプレゼントなのかも知れない。

これまでは、サンタなんて居ないと思っていた、つぎにどこかの子供に聞かれたら僕は答えられるはずだ
「サンタはいるよ」って。

それは幸せを感じる夜なのだから。
ここにもひとつのメリークリスマス。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?